旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
夏休みが終わる。
明日から新学期、そして秋大会の開催だ。
部員達が必死になって特訓した成果は徐々に現れ、コーチであるヒル魔も満足そうだ。
「そういや、ウチってチアいませんよね」
妖介は部長の沢村に尋ねる。
「そうだね、昔はいたみたいだけど・・・」
ちらりと眺めるのは、過去にクリスマスボウルを制覇したときの集合写真だ。
そこには若かりし頃の蛭魔妖一を筆頭にした部員達の他に、艶やかなチアが混じった写真も置いてあった。
「コーチの時代はいたんですよね?」
「泥門校生じゃなかったがな」
銃の手入れをしながらヒル魔が応える。
「アメリカから調達したメンバーと、透糸高校の子だったんですよね。今もその名残で透糸高校のチアが来てくれてたんですが・・・」
主務の猪野がメガネを押し上げる。
「秋は他の部活の大会もそうないからそれで充分だろーね」
会話に混じってきた二年生に猪野は残念そうに首を振る。
「いえ、今年はあちらの部員が少なくて廃部になっちゃったんです」
「えー?!」
「だから春はチアなしだったんだ」
クリスマスボウルを目指す秋とは違い、春は前哨戦の意味合いが強いため、チアが来ていないのだと思っていたが違うらしい。
「・・・何か、企んでますか、コーチ」
妖介は密かに嫌な予感がするのをあえて無視していたのだが、派手好きなヒル魔が何もしないとは思えず尋ねたのだ。部活の上ではコーチと部員なので、親子といえど砕けた口調で話さない。
妖介の質問に、ヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「何をだ?」
「・・・ってことは何か仕組んだんですね」
伊達に生まれてからずっとヒル魔の息子をやっている訳ではない。
すぐに妖介はヒル魔が誰かを呼び寄せた事に気づいた。
「アレですか」
今まで部室の一角で主務の纏めていた資料を見ていたアヤも顔を上げ、眉間に皺を寄せてヒル魔を見る。
「サアネ」
ヒル魔の回答にアヤと妖介は顔を見合わせた。
嫌な予感は当たりそうだ。
「ちょっと腹痛が」
「ちょっと頭痛が」
二人は立ち上がると一目散に部室の入り口に向かう。
響く銃声、足下に打ち込まれる銃弾。
「仮病じゃ帰すわけにはナァ」
「これからなります!」
「間違いなくなります!」
他の部員が悲鳴を上げて縮こまるのを余所に、銃弾を避けながら二人は扉を開けて走り出そうとして。
『ヨースケー!!』
「げっ!!」
『アヤー!! 久しぶりー!!』
「チッ!」
妖介は逃げ切れずアヤを背後に庇うも、待ちかまえていた人物に腰に抱きつかれてしまった。
彼らしくもない失態である。
「だーっ! クリス、抱きつくな!」
珍しく声を荒げる妖介に驚いた部員達が顔を出すと、そこには妖介の腰に抱きついた赤毛の美女がいた。
「うっわ!」
「すっげ、美人!!」
「なんだよ妖介、テメェ一人でいい目見やがって!!」
「よくないです! ちょっと、剥がしてください!!」
妖介が引き離そうとしても彼女はしっかりとしがみついて離れない。
「は・な・せ!!」
『私日本語判りませ~ん』
アヤは妖介の背後から出て行かず、距離を置いて二人を見るばかり。
『相変わらずだナァ、糞チア』
『こんにちはー、妖一おじさん』
ひらひらと手を振って笑みを浮かべるその顔は、間違いなく美女と呼んでいい部類だった。
瞳はヘーゼル、ウェーブの掛かった赤毛のショートヘアに、服を着ていてもよく判るナイスバディ。
男所帯のアメフト部員たちが思わず涎を垂らしそうな、まさに掃き溜めに鶴。
「え、え?!」
「チア、って、もしかして?!」
色めきだつ部員達の前に、いくつもの足音。
ざざっと現れたのは、肌の色も髪の色も瞳の色も様々、一様にナイスバディな女達。
「応援も勝利には必要だしナァ。アメリカで調達してきた」
にやにやと笑うヒル魔に対し部員は歓声を上げるが、妖介とアヤは顰めっ面だ。
「こいつの応援なら要らないよ!!」
「強制送還してやる」
部員達にしてみれば羨ましい限りの熱い抱擁も、妖介には嫌な事でしかないらしい。
アヤが携帯を開いたところでクリスと呼ばれた赤毛美女がひらりと離れて口を尖らせた。
『幼なじみに対してそれはないんじゃない?』
『だ・か・ら・だ! お前じゃなけりゃ問題ねえよ!!』
『帰れ』
『遠路はるばる来たのに、ヒド~イ!』
ぎゃーぎゃーとスラング混じりの英語で喧嘩する三人をさておいて、ヒル魔はチアリーディングチームを集めて練習するよう指示を出し、続いてアメフト部員達も集める。
「アイツらは期間限定の交換留学生だ。テメェらが勝ち進めばそのまま残るが、負けたらアメリカに逆戻り」
一日でも長くアイツら見てたいなら勝ち抜け、という言葉に対し、頑張ります!! と息巻く連中にニヤニヤとヒル魔は笑った。
交換留学生、という扱いなのでチアリーディングの面々はホームステイの形式を取って泥門校生の家に住まうそうだ。クリスことカレル・クリスティーナもヒル魔家とは別の家にやっかいになるらしい。
「本当に厄介だよ!」
「なんで呼んだの」
リビングでくつろぐヒル魔にアヤと妖介の二人がかりで詰め寄るが、ヒル魔の答えはあっさりしたものだ。
「アイツの技が確かだからだ」
クリスの率いるチアリーディングチームは全米でも名を知られる程の実力がある。
それは知ってはいるが、二人は納得しない。
「俺たちがアイツにどれだけ苦労したか知ってるでしょ!」
「ガキの頃とは違うだろーが」
「全然違ってないよ、まんまだよ!」
「困る」
アヤも妖介に同意するが、ヒル魔はにやにや笑うだけで取り合わない。
「自力でどうにかしやがれ」
「できりゃ苦労しないよ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ三人を、まもりは仲がいいわね、と笑顔で見守るに留まっている。
護はそんな父と姉兄の様子を見ながら肩をすくめた。
放課後、日直だった妖介はアヤより遅れて部室に向かっていた。
丁度そこに授業終了が遅れたらしい二年生たちが合流する。
話題は先日突如として現れた赤毛美女のクリスについてだ。
「なあなあ、クリスちゃんって妖介とアヤちゃんの幼なじみなの?」
「・・・そうです」
嫌そうに答える妖介に二年生達は首を傾げる。
「なんでそんなに嫌そうなんだよ。あんな美女、アメリカでだって滅多に見ないだろ?」
「そうだよ、しかもあんなに好かれてさ、フツー喜ぶだろ?」
「あ、アヤちゃんが美人すぎて美人に飽きてるとか?」
「うわー贅沢!」
「違いますよ! そんな理由じゃないです」
眉を寄せる妖介に部員達はずいっと顔を寄せる。
「どうして?」
「それは・・・」
妖介が口を開こうとした瞬間。
女子更衣室からアヤが飛び出してきた。
着替えもそこそこのアヤの格好にも驚くが、ダッシュで逃げ出す彼女の後ろからクリスが追っているのにも驚く。
『やーん、なんで逃げるのー?』
『寄るな!!』
『女の子同士なのに、恥ずかしがる事ないじゃな~い』
その様子に妖介はため息をつくと、鞄を二年生に押しつけた。
「・・・すみません、鞄お願いします」
言うが早いが妖介は走り出し、敵へのタックルよろしくあっという間にクリスを捕まえる。
『きゃっ!』
『アヤにちょっかい出すな!』
『なによ~、ヨースケのシスコンー』
小脇にクリスを抱え、妖介はため息混じりにアヤがいる方向を見る。
かなり遠くまで彼女は逃げていた。そんなに遠くにいてもその不機嫌さは見て取れる。
「アヤー、クリス捕まえたからもう大丈夫だよー」
まるで暴走した犬を捕まえた飼い主のようだ。
「もう帰る!!」
怒り心頭なアヤの叫びに部員達は顔を見合わせる。
ジタバタと暴れるクリスの頭を軽くぺしんと叩いて妖介はなおも呼ぶ。
「今週末は秋大会なんだからさー、早く戻ってきて練習しよー」
それでもアヤはなかなか戻ってこない。
「アヤ、早く来い!!」
背後にいつの間にか現れたヒル魔がアヤを呼ぶ。
それに、眉間に三本皺を刻んでアヤは渋々戻った。
しかしクリスには決して近づかない。
『おい糞チア、あんまりアヤをからかうんじゃねぇ』
『いや~ん、だってカワイイんだもの、無理よう』
『練習の邪魔しやがったらテメェでも容赦しねぇぞ?』
ヒル魔のプレッシャーにもクリスは唇を尖らせて見せるだけだ。
この図太さ、本当に困ると妖介は再度嘆息してぱっと手を放した。
咄嗟のことでも彼女は猫のように身軽に着地する。
『レディにヒドイ扱いじゃない?』
『お前がレディっていう器かよ』
ケ、と妖介は眉を寄せる。
『まあいいわ。私も練習してくるね~』
ひらひらと手を振って彼女は走っていく。
通り過ぎざまに部員達にウィンクするのを忘れずに。
途端に皆が色めき立つ。カワイイものはカワイイのだ。
「やっぱカワイイじゃんクリスちゃん!」
「なんでそんなに嫌がるのさ」
「アヤちゃんが逃げる理由もよくわからないよな」
なあ、と顔を合わせる部員達に、妖介ではなく眉間に皺を寄せたアヤが口を開いた。
「クリスはレズだ」
ぴしり、と全員が固まった。
「小さい頃からアヤを追い回して仕方なかったんですよ。理想のタイプだとか言ってて」
妖介も顰めっ面で補足する。
「アヤのためを思うなら、出来るだけクリスを近づけないようにしてください。お願いします」
ただでさえ怜悧なアヤの美貌が、不機嫌さに歪むと周囲に与えるプレッシャーは増大する。
今は大事な時期なのだ、余計なストレスを当人も周囲も抱えたくはない。
疲れたような二人の様子に、部員達は乾いた笑いを浮かべて頷いたのだった。
***
アヤの女友達を出してあげようと考えていたらなぜか違うキャラが・・・。
結局なんでも一番苦労するのは妖介なんですけどね。
明日から新学期、そして秋大会の開催だ。
部員達が必死になって特訓した成果は徐々に現れ、コーチであるヒル魔も満足そうだ。
「そういや、ウチってチアいませんよね」
妖介は部長の沢村に尋ねる。
「そうだね、昔はいたみたいだけど・・・」
ちらりと眺めるのは、過去にクリスマスボウルを制覇したときの集合写真だ。
そこには若かりし頃の蛭魔妖一を筆頭にした部員達の他に、艶やかなチアが混じった写真も置いてあった。
「コーチの時代はいたんですよね?」
「泥門校生じゃなかったがな」
銃の手入れをしながらヒル魔が応える。
「アメリカから調達したメンバーと、透糸高校の子だったんですよね。今もその名残で透糸高校のチアが来てくれてたんですが・・・」
主務の猪野がメガネを押し上げる。
「秋は他の部活の大会もそうないからそれで充分だろーね」
会話に混じってきた二年生に猪野は残念そうに首を振る。
「いえ、今年はあちらの部員が少なくて廃部になっちゃったんです」
「えー?!」
「だから春はチアなしだったんだ」
クリスマスボウルを目指す秋とは違い、春は前哨戦の意味合いが強いため、チアが来ていないのだと思っていたが違うらしい。
「・・・何か、企んでますか、コーチ」
妖介は密かに嫌な予感がするのをあえて無視していたのだが、派手好きなヒル魔が何もしないとは思えず尋ねたのだ。部活の上ではコーチと部員なので、親子といえど砕けた口調で話さない。
妖介の質問に、ヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「何をだ?」
「・・・ってことは何か仕組んだんですね」
伊達に生まれてからずっとヒル魔の息子をやっている訳ではない。
すぐに妖介はヒル魔が誰かを呼び寄せた事に気づいた。
「アレですか」
今まで部室の一角で主務の纏めていた資料を見ていたアヤも顔を上げ、眉間に皺を寄せてヒル魔を見る。
「サアネ」
ヒル魔の回答にアヤと妖介は顔を見合わせた。
嫌な予感は当たりそうだ。
「ちょっと腹痛が」
「ちょっと頭痛が」
二人は立ち上がると一目散に部室の入り口に向かう。
響く銃声、足下に打ち込まれる銃弾。
「仮病じゃ帰すわけにはナァ」
「これからなります!」
「間違いなくなります!」
他の部員が悲鳴を上げて縮こまるのを余所に、銃弾を避けながら二人は扉を開けて走り出そうとして。
『ヨースケー!!』
「げっ!!」
『アヤー!! 久しぶりー!!』
「チッ!」
妖介は逃げ切れずアヤを背後に庇うも、待ちかまえていた人物に腰に抱きつかれてしまった。
彼らしくもない失態である。
「だーっ! クリス、抱きつくな!」
珍しく声を荒げる妖介に驚いた部員達が顔を出すと、そこには妖介の腰に抱きついた赤毛の美女がいた。
「うっわ!」
「すっげ、美人!!」
「なんだよ妖介、テメェ一人でいい目見やがって!!」
「よくないです! ちょっと、剥がしてください!!」
妖介が引き離そうとしても彼女はしっかりとしがみついて離れない。
「は・な・せ!!」
『私日本語判りませ~ん』
アヤは妖介の背後から出て行かず、距離を置いて二人を見るばかり。
『相変わらずだナァ、糞チア』
『こんにちはー、妖一おじさん』
ひらひらと手を振って笑みを浮かべるその顔は、間違いなく美女と呼んでいい部類だった。
瞳はヘーゼル、ウェーブの掛かった赤毛のショートヘアに、服を着ていてもよく判るナイスバディ。
男所帯のアメフト部員たちが思わず涎を垂らしそうな、まさに掃き溜めに鶴。
「え、え?!」
「チア、って、もしかして?!」
色めきだつ部員達の前に、いくつもの足音。
ざざっと現れたのは、肌の色も髪の色も瞳の色も様々、一様にナイスバディな女達。
「応援も勝利には必要だしナァ。アメリカで調達してきた」
にやにやと笑うヒル魔に対し部員は歓声を上げるが、妖介とアヤは顰めっ面だ。
「こいつの応援なら要らないよ!!」
「強制送還してやる」
部員達にしてみれば羨ましい限りの熱い抱擁も、妖介には嫌な事でしかないらしい。
アヤが携帯を開いたところでクリスと呼ばれた赤毛美女がひらりと離れて口を尖らせた。
『幼なじみに対してそれはないんじゃない?』
『だ・か・ら・だ! お前じゃなけりゃ問題ねえよ!!』
『帰れ』
『遠路はるばる来たのに、ヒド~イ!』
ぎゃーぎゃーとスラング混じりの英語で喧嘩する三人をさておいて、ヒル魔はチアリーディングチームを集めて練習するよう指示を出し、続いてアメフト部員達も集める。
「アイツらは期間限定の交換留学生だ。テメェらが勝ち進めばそのまま残るが、負けたらアメリカに逆戻り」
一日でも長くアイツら見てたいなら勝ち抜け、という言葉に対し、頑張ります!! と息巻く連中にニヤニヤとヒル魔は笑った。
交換留学生、という扱いなのでチアリーディングの面々はホームステイの形式を取って泥門校生の家に住まうそうだ。クリスことカレル・クリスティーナもヒル魔家とは別の家にやっかいになるらしい。
「本当に厄介だよ!」
「なんで呼んだの」
リビングでくつろぐヒル魔にアヤと妖介の二人がかりで詰め寄るが、ヒル魔の答えはあっさりしたものだ。
「アイツの技が確かだからだ」
クリスの率いるチアリーディングチームは全米でも名を知られる程の実力がある。
それは知ってはいるが、二人は納得しない。
「俺たちがアイツにどれだけ苦労したか知ってるでしょ!」
「ガキの頃とは違うだろーが」
「全然違ってないよ、まんまだよ!」
「困る」
アヤも妖介に同意するが、ヒル魔はにやにや笑うだけで取り合わない。
「自力でどうにかしやがれ」
「できりゃ苦労しないよ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ三人を、まもりは仲がいいわね、と笑顔で見守るに留まっている。
護はそんな父と姉兄の様子を見ながら肩をすくめた。
放課後、日直だった妖介はアヤより遅れて部室に向かっていた。
丁度そこに授業終了が遅れたらしい二年生たちが合流する。
話題は先日突如として現れた赤毛美女のクリスについてだ。
「なあなあ、クリスちゃんって妖介とアヤちゃんの幼なじみなの?」
「・・・そうです」
嫌そうに答える妖介に二年生達は首を傾げる。
「なんでそんなに嫌そうなんだよ。あんな美女、アメリカでだって滅多に見ないだろ?」
「そうだよ、しかもあんなに好かれてさ、フツー喜ぶだろ?」
「あ、アヤちゃんが美人すぎて美人に飽きてるとか?」
「うわー贅沢!」
「違いますよ! そんな理由じゃないです」
眉を寄せる妖介に部員達はずいっと顔を寄せる。
「どうして?」
「それは・・・」
妖介が口を開こうとした瞬間。
女子更衣室からアヤが飛び出してきた。
着替えもそこそこのアヤの格好にも驚くが、ダッシュで逃げ出す彼女の後ろからクリスが追っているのにも驚く。
『やーん、なんで逃げるのー?』
『寄るな!!』
『女の子同士なのに、恥ずかしがる事ないじゃな~い』
その様子に妖介はため息をつくと、鞄を二年生に押しつけた。
「・・・すみません、鞄お願いします」
言うが早いが妖介は走り出し、敵へのタックルよろしくあっという間にクリスを捕まえる。
『きゃっ!』
『アヤにちょっかい出すな!』
『なによ~、ヨースケのシスコンー』
小脇にクリスを抱え、妖介はため息混じりにアヤがいる方向を見る。
かなり遠くまで彼女は逃げていた。そんなに遠くにいてもその不機嫌さは見て取れる。
「アヤー、クリス捕まえたからもう大丈夫だよー」
まるで暴走した犬を捕まえた飼い主のようだ。
「もう帰る!!」
怒り心頭なアヤの叫びに部員達は顔を見合わせる。
ジタバタと暴れるクリスの頭を軽くぺしんと叩いて妖介はなおも呼ぶ。
「今週末は秋大会なんだからさー、早く戻ってきて練習しよー」
それでもアヤはなかなか戻ってこない。
「アヤ、早く来い!!」
背後にいつの間にか現れたヒル魔がアヤを呼ぶ。
それに、眉間に三本皺を刻んでアヤは渋々戻った。
しかしクリスには決して近づかない。
『おい糞チア、あんまりアヤをからかうんじゃねぇ』
『いや~ん、だってカワイイんだもの、無理よう』
『練習の邪魔しやがったらテメェでも容赦しねぇぞ?』
ヒル魔のプレッシャーにもクリスは唇を尖らせて見せるだけだ。
この図太さ、本当に困ると妖介は再度嘆息してぱっと手を放した。
咄嗟のことでも彼女は猫のように身軽に着地する。
『レディにヒドイ扱いじゃない?』
『お前がレディっていう器かよ』
ケ、と妖介は眉を寄せる。
『まあいいわ。私も練習してくるね~』
ひらひらと手を振って彼女は走っていく。
通り過ぎざまに部員達にウィンクするのを忘れずに。
途端に皆が色めき立つ。カワイイものはカワイイのだ。
「やっぱカワイイじゃんクリスちゃん!」
「なんでそんなに嫌がるのさ」
「アヤちゃんが逃げる理由もよくわからないよな」
なあ、と顔を合わせる部員達に、妖介ではなく眉間に皺を寄せたアヤが口を開いた。
「クリスはレズだ」
ぴしり、と全員が固まった。
「小さい頃からアヤを追い回して仕方なかったんですよ。理想のタイプだとか言ってて」
妖介も顰めっ面で補足する。
「アヤのためを思うなら、出来るだけクリスを近づけないようにしてください。お願いします」
ただでさえ怜悧なアヤの美貌が、不機嫌さに歪むと周囲に与えるプレッシャーは増大する。
今は大事な時期なのだ、余計なストレスを当人も周囲も抱えたくはない。
疲れたような二人の様子に、部員達は乾いた笑いを浮かべて頷いたのだった。
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アヤの女友達を出してあげようと考えていたらなぜか違うキャラが・・・。
結局なんでも一番苦労するのは妖介なんですけどね。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
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