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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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花が美しい理由・4

(軍隊上司ヒル魔とその副官まもり)

+ + + + + + + + + +
王はヒル魔に炎の花を返した。
彼が手に入れたものであるし、姫との結婚を求めるのでなければ王が預かる道理はないと言うのだ。
御前を辞してまもりの自室に戻ってきて、ヒル魔は無造作にまもりに炎の花を渡す。
「え・・・」
「順番が逆になっちまったけどな」
己の手にある花に、まもりは戸惑う。
よくよく考えてみてもヒル魔が願ったのが自分だという事実が今でも受け入れられない。
大体そういう言葉を交わした事も、態度に示した事もない。
「・・・なんで、私なの?」
「ア?」
「貴方がこの花を手に入れてまで望む相手ではないと思うけど」
「さっき御前でも言ったろう。俺が望むのはテメェだけだ」
さらりと赤面ものの台詞を言われても、どうにも腑に落ちない。
「私相手なら家柄なんて気にしなくてもよかったのに」
花を手に小首を傾げたまもりに、ヒル魔は深々とため息をついた。
そのまま額に手を当てる様が珍しくて、まもりはじっと彼の様子を観察してしまう。
「テメェ、本気で言ってるか」
「? ええ」
「・・・・・・それ」
「え?」
まもりの執務机の隣にある不要文書入れ。そこには書類に混じって、厚手の紙がちらほらとある。
「姉崎家から送られてきた見合い写真だろ」
「そうね」
「このところ急に量が増えたと思わねぇか」
「ああ・・・そういえば」
「本当にテメェは作戦練る以外の事は興味ネェのな」
呆れたように肩をすくめられる。まもりは彼が何を言いたいのかまだ把握できない。
「俺が姫と結婚するっつー噂があったことは知ってるな」
「ええ」
「もし俺が姫と結婚したら、軍からは退いてこの場所に来る事もなくなる、そう考えるヤツは沢山いる」
「ええ」
私もそう思っていたわ、とまもりは内心呟く。
「そうなれば邪魔をする大将がいないから鋼鉄元帥を手に入れられる、と思う奴らは軍の内外にごまんといたわけだ」
「は?」
「テメェはもう少し自分のことを知れ」
どこからともなくヒル魔が出てきたのは手鏡。
そこに写るのは想像していたようなけばけばしい顔ではなく、ごく普通のまもりの顔だった。
あれほど任務に忠実なはずの側近たちがこの顔を見た途端に武器を取り落とした理由がよくわからない。
「俺がどれだけ害虫駆除で苦労したと思ってる」
苦々しいヒル魔の声に、まもりは首を捻るばかりだ。
「・・・とんだ物好きがいるものね」
としか言えない。まもりには自分が相手にどう見られているかという考えがまず欠落しているのだ。
「まあ、姉崎家が家柄の割には相手の家柄に拘らないっつーのは本当だな。じゃなきゃその辺の見合い写真の連中はテメェと同等かそれ以上の家柄ばかりだし、それを逃す手はないと考えそうなものを」
「娘を軍属にするような家にそんな概念はないわよ」
そう言ってまもりはヒル魔を見つめる。
「・・・だから、私が欲しければそう口にすればよかったのに。こんな危険を冒さなくても・・・」
「じゃあ俺が何の前触れもなく急にテメェに言い寄ったら、テメェはどうした」
「どうしたって」
「間違いなく俺が本気じゃないって決めつけて俺から逃げ回るだろうが」
ぴんと片眉を上げて睨まれて、まもりは思わず詰まる。
そう、かもしれない。そもそもヒル魔から好意を寄せるような仕草もなかったし、あったとしてもまもりは気が付かなかっただろうし。それでなくても女の噂が絶えなかったヒル魔の事、きっと気まぐれか賭でもしたか嫌がらせだろうと思いこんで一人傷つきそうな気がした。
「だからわざわざその花取ってきたんだよ」
判りやすいだろうし、更に御前で言われたらさしものまもりも逃げようがないだろうと思った、と言われて二の句が継げない。よくもまあ、そこまで考えたものだ。
彼自身が作戦を考える事は今まで皆無だったが、もしかしたら彼の方が実践的な作戦を思いつく事があるのかもしれないな、と思う。
「私が貴方の事を嫌っていて断る、っていう可能性は?」
「嫌いだったらテメェが持ってる権限でとっくの昔に俺はお払い箱だ」
「・・・・・・」
「言う程テメェは鉄面皮でもねぇよ。判りやすいしな」
そんな事は初めて言われた。
内外問わず、表立ってでも裏側でも、表情が乏しいので散々な評判だったはず。
まもりは思わず自分の頬に触れる。それが事実かどうかはやはりまもりには判断をつけかねた。
「ところで」
「何?」
「テメェはいつになったら俺を名前で呼ぶんでショウカネ」
「大将でいいでしょ」
「家でまで役職で呼ぶ気か」
まもりはぱちぱちと瞬きした。そうか、結婚するという事はヒル魔と同じ家に暮らしたりするわけか。
軍を引退するという考えが全くないまもりとしては、この部屋を出て二人で暮らすというのが全く想像できていなかった。
「家、この部屋以外に必要?」
二人とも同じ軍の軍人なのだし、緊急事態があったときに対応するのはやはりこの部屋の方がいい。
「テメェな! 二人で生活するとして! 四六時中部下が出入りするような場所でのんきに寝られるか!!」
怒鳴るヒル魔のイライラする理由がよく判らない。
「寝てるじゃない」
実際ヒル魔はよくこの部屋のソファで昼寝していた。
まもりが作戦作りに没頭していてようが、入れ替わり立ち替わり入ってくる部下がどれほど騒ごうが気にしない男なのに。なんで今更、という気持ちが強くてまもりは困惑する。
彼は深々と嘆息した。心持ち肩を落として。
「テメェにはハッキリ言わないと判らねぇんだな」
「何が?」
まもりは本気でヒル魔の言わんとする事を理解できず、しきりに首を捻る。
「いや、言っても判らなそうだから、実地の方がいいか」
その身体をヒル魔はため息混じりにひょいと肩に担ぎ上げた。いわゆる、俵担ぎ。
「なっ!?」
「おー軽い」
「何するの!」
じたばたと暴れてみても、ヒル魔は全く取り合わない。
そもそも武人と文官、ましてや男と女で力の差は歴然だ。
「二人で生活するにはこの部屋が不都合だという事実をよくよく知って頂きまショウカ」
「はっ?! や、どこ行くの!? そっち寝室! 人のプライベートを見るなんてー!!」
「怒るポイントはそこか? ・・・その作戦練る以外に使わねぇ頭、じっくり使わせてやろう」
混乱するまもりは術を使う事すら思い浮かばず、ヒル魔によって寝室に運び込まれた。
 
その後彼女はヒル魔の言わんとする事をようやく理解して、這々の体でヒル魔から逃げ出したけれど。
この時あっさりとまもりを逃がしたことさえも彼の作戦だったのだと、まもりはこの直後に理解することになる。 


時は少し遡る。
デビルバット軍の面々は、遠目に見慣れない儀礼用の白軍服を着た二人がまもりの執務室に戻ったのを見て、ぱっと顔をほころばせる。ヒル魔が無事だったのは鈴音に聞いていたものの、まだ皆は挨拶していない。
そこに行こうとした面々の先を走るセナとモン太の二人の襟首を、がっしと掴む者たちがいた。
「ぐえっ!」
「ぎゃっ!」
「あ、ごめんね」
「すまんな」
二人が涙目になって見上げると、それは中将の栗田とムサシだった。
ヒル魔とは旧知の仲で、二人ともどちらかといえば部下のやんちゃをあたたかく眺めている側の人間だ。
こうやって手を出すのは珍しい。
「今、ヒル魔の邪魔をさせると後々煩そうなんでな」
ムサシが肩をすくめ、栗田も隣で頷いている。
その顔がどこか嬉しそうで、足止めを喰らったセナたちを始め、他の部下たちも首を傾げる。
「なんスか?」
「まあちょっと待ってろ。そのうち元帥が出てくるから」
「は? 大将じゃなくて?」
「はぁあああ? 一体何なんだ?」
皆が首を傾げながら部屋の前で待つ事にする。
「ヒル魔さん、姫様に求婚なさったのかな?」
ふと、セナが首を傾げて疑問を口にすると、隣で十文字が呆れたように言う。
「はぁ? まさか、そんなわけねぇだろ」
「え?」
「あの悪魔大将、最初から元帥狙いだったろうが」
「ええ?! そ、そうだったの!?」
「え、セナくん気づいてなかったの?」
「ムッキャアアアアア!? た、た、大将がげ、げ、元帥ををっっ?!」
「落ち着けサル!」
執務室に響くとヒル魔の機嫌を損ねるので、皆衝撃を受けながらもボソボソと音量を落として喋る。
「確かに、元帥は綺麗だ・・・」
「それに可愛いし」
「けっこうスタイルもいいんだよな」
うんうんと皆が頷く。普段ほとんど化粧っ気も洒落っ気もないまもりだが、その美しさは誰もが知るところだ。
見た目や口調は素っ気ないが、彼女が本来は優しい性質で、表面には出にくいだけというのは何度も共に戦った面々には周知の事実。
部下が傷つくのを誰よりも嫌い、いざとなれば自分さえ囮にする向こう見ずなところもある。
見た目とのギャップがかなりあって、自分で自分の魅力に気づいていないところも彼女らしい。
それを危なっかしいと思うのは皆同じで、気が付けば誰もが元帥を慕うようになっていた。
無邪気に慕われると戸惑ったような表情をするのがまた可愛らしい、と思われているとは多分本人は気づいていないだろう。
「そういやまだ元帥が大佐だった頃、よく他の部隊の連中が用もなくうろついてたよな」
「元帥はその頃から狙われてたんだろ」
「彼らを最近見なくなったのは、ヒル魔さんが追い払ってるからだよ」
「あー、やっぱり」
「そんなヒル魔が姫君へ求婚なんてあり得ないんだけどねえ」
栗田が苦笑する。
「でも元帥はそう思いこんだだろうしね。今そのことを話してるんだろうね」
「え・・・」
皆思わず扉に注目する。執務室は防音設備がしっかりしているので、音は漏れてこない。
「それにしても、本気で炎の花を取ってくるなんて思わなかった」
ムサシがしみじみと呟く。
「熱烈なことだね」
さらりと栗田が応じた。
と。
「――――――――――駄目です!!」
扉が開かれた。
外開きのそれが壁に当たって跳ね返るくらいの勢いに、周囲に集まっていた隊員たちは目を丸くする。
何しろ出てきたのは先ほどのムサシの言葉通り、姉崎まもり元帥その人だったから。
そして彼女は美しく化粧を施し、白軍服を纏っていた。
普段とはまるっきり違う装いだけでも驚きなのに、更に彼女は息を乱し、開かれた襟元を手で押さえるという不自然な格好で。よく見ればその襟元には特徴的な歯形と扇情的な朱印が刻まれていて。
「え・・・!?」
「げ、元帥!?」
まもりは周囲を部下に囲まれていたという事実に、目を丸くしてかあっと頬を染めた。
何か言葉を発しようとするのだが、何も口に出来ず、まもりは自分を抱きしめるような格好で俯き、立ちつくす。
それは普段の毅然とした『鋼鉄元帥』というあだ名を微塵も感じさせない程可憐で、そして扇情的だった。
思わず誰かの喉が鳴り、誰かが手を差し伸べようとしたが。
「やっと判ったか、姉崎」
そこに姿を現したのは、我らがヒル魔大将で。ちなみに彼も白軍服だが一糸乱れぬ飄々とした風情だ。
「~~~!!」
まもりは恨みがましい顔をしてそんなヒル魔を睨んでいるつもりらしいが、真っ赤になっていて、しかもそんな潤んだ瞳では逆効果だ。
にやにやと笑うヒル魔に皆の視線が集中する。それを受けて彼は口を開いた。
「王の許可もコイツの同意も取った」 
その意味を理解して周囲は喧噪に包まれる。喜び祝福の声を上げる者と、想い破れて悲鳴を上げる者と。
大多数は歓喜に沸き立つ中、まもりはこっそりと乱れた襟元を正す。
赤くなった顔はまだ熱を持っていて、簡単には冷めそうにない。
「だから言っただろう」
隣に立つヒル魔の手が、いつの間にかさりげなく腰に回っていて、まもりはヒル魔を睨むが。 
「この部屋じゃ不都合だろ?」
「・・・知りません!!」
にやりと歪んだ口から零れた言葉に、ぷい、とまもりは精一杯の不機嫌を表してそっぽを向く。
それでも彼の腕から逃れる事もせず、隣にいる事を受け入れているその姿に、やっぱり判りやすいな、とヒル魔は柔らかく苦笑した。 



その後も二人は今までと変わらず元帥と大将という立場を勤めた。
変化したのは元帥の名字、二人の住処が隊舎外になったこと、そしてまもりがよく笑うようになったこと。
彼らの活躍によって長く平和な時を築いたこの時代は後に黄金時代と呼ばれ、長く語り継がれることとなる。 


***
元帥と大将でありながら副官と上司という組み合わせ、某漫画から発想を得ました(またか)。
他にも敵と戦う時の話とか色々考えてるので、もしかしたらまた続編なりを書くかもしれません。
今までの中で最も天然色が強いまもりちゃんが書いていて楽しくて仕方なかったです(笑)
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三万打おめでとうございます!!
鳥様お久しぶりです!!またリクエストをさせていただける日を待ってました!←

携帯からはまとまった文章が送れないのでコメントでリク…!!←邪道
あわわわわごめんなさい!!
迷惑でしたらどうぞ消されても…!!出直して来ます!!

では迷惑を顧みず…今回1人二個まで受け付けていただけるんですよね?欲張らせていただきます←
ちょっと前の「子猫に告ぐ」が大好きです。続編か或いはブラックまもちゃん再来を…!!手のひらで遊ばれてるヒル魔さんも大好きです(真顔)
あともう一つ、たぶん原作沿いは無理なのでパロになると思いますが、「まもちゃんに一目惚れするヒル魔さん」。まもちゃんが他校とかで、セナの応援に来たまもちゃんにヒル魔さんが堕ちて欲しい。鈍いまもちゃんに苦労すればいいよヒル魔さん…!!
気持ちの悪い文章になりました。あまり長くなると、ちゃんと全部届くか不安なのでこの辺りで失礼させて頂きます。リク消化頑張って下さい!!ありがとうございました!!
すみれ 2008/07/06(Sun)00:36 編集
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