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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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4/14にアップしたヒルまもパロ小説の続きを書いてみました。

・まもりが子供
・ヒル魔が人外
・段々まもりが不憫になってきた
・今回は三部作の予定だったりする

※30000HIT御礼企画

というのが許せる方は『つづきはこちら』からどうぞ。

+ + + + + + + + + +
まもりは自分の袖を見た。ぴったりとまもりの腕に合っている。
こないだ会った鈴音が、大きさが合っていないから、と新しい服をくれたのだ。
新しい服を身に纏ったとき、自分が成長している事にやっと気が付いた。
あの日ヒル魔に拾われてから、どれだけの時が経っただろう。
この地は常春で、背や自分の髪の毛が伸びていること以外に時の流れを計る事が出来ない。
ただそれはそれと自分では気づきにくい変化だ。
時折顔を合わせる人に言われて初めて気づく程度に緩慢なもの。
でもそれはこの時が止まったような屋敷に住む者にとっては過剰な変化なのかもしれない。
いつまで経っても年を経ることのない仙人、その仙獣。
弟子の自分以外は時の流れを忘れているかのよう。
私は成長しているのだろうか。身体のことではなく、仙人として、ちゃんと。
「―――――――セナ」
ふと浮かんだ名は何よりも愛しい弟の名。
彼はどうしただろう。あの父母の元で、元気に暮らしているだろうか。
日々を勉強と屋敷の手入れとで過ごすまもりには彼が元気かを知る術がない。
ここに来たばかりの時、一度だけヒル魔の術で水瓶を通して村の様子を見る事が出来たが、あれ以来水瓶は沈黙を守っている。
術を体得したら出来るのかもしれないが、まもりにはまだまだ知識も技術も足りなかった。
一人前になれたらポヨと話も出来るようになる、そう聞いていたのに未だ一人前には遠いらしい。
未だまもりはポヨと話す事もできていない。
「セナ・・・」
まもりの声はさあっと吹き付けた風に千切られて空へと吸い込まれていった。

地上の、かつてまもりが住んでいた村。
彼女が姿を消してからも季節は巡って、もうすぐ三度目の春が終わる。
セナは小屋で一人両親の帰りを待っていた。
彼らは数日前からセナを置いて街の方へと出掛けていた。今日あたり帰ってくるはずだ。
昨日は街で市が立つ日だった。いつもならセナも手伝いとして行くのだが、昨日は雨が酷かったし体調を崩していたのもあって、両親はセナを一人置いて出掛けたのだ。
雨は勢いを保ったまま降り続いていた。今も絶えず降り続き、外に出る事も叶わない。
両親の言いつけを守って家にいたセナは、することがなく暇なのも手伝って記憶を辿っていく。
「・・・お姉ちゃん」
まもりと時を同じくして、セナもまた彼女の事を思い出していた。
ある日目を覚ましたら、隣にいるはずのまもりがいなかった。
起きて探してもどこにも彼女はいなかった。
両親に尋ねても『まもりは遠いところに行った』の一言だけ。
険しい顔をする両親の回答に不満を持ったセナは方々を歩き回ってまもりを探した。
けれど所詮子供の足、行けるところは限られている。
それでも探し回るうちに、セナの耳に近所の大人達の言葉がぽつぽつと入り込んでくる。
『山に』
『生け贄』
『かわいそうに』
誰もがセナを見ると口をつぐむが、背後から追いかけるように忍び込む言葉に、セナは幼心にぼんやりと理解していた。
おきつねさまだ。
おきつねさまが、まもりを浚ってしまったのだ。
その代わりにあの山のような食料。あれがあったから誰も餓えずにあの冬を乗り切れた。
そして翌年、干ばつが酷かった前の年が嘘のような豊作に恵まれ、セナを始めとした村人達は満ち足りた冬を迎える事が出来た。それからは餓える事はなかった。誰かに守られているかのように。
けれど。
村が豊かであればある程、セナはあの夜の事を思い出す。
最早死んだと思っていたまもりが忽然と姿を現したのだ。
姿を消したときと格好こそ違ったが、あれは間違いなくまもりだった。
酷い薄着だったが、それでも健康そうだった。
あの時、母が酷い言葉で追い払ってしまったけれど、もしかしたら生きたまもりに会う最後のチャンスだったのかもしれないのに。母の手をふりほどいて、まもりを追うべきだった、とセナはあの時の事を後悔している。
あの後母は口先で後悔していると言っていたけれど、それが全部本当の気持ちじゃないだろう、とあの夜の母を見てしまってからそう思うようになった。そして考えてしまう。おきつねさまに生け贄を捧げたのは母じゃないのか、なんて。
この生活がまもり一人の犠牲の上に立っているのなら、それをただ喜ぶ事なんてセナには出来なかった。
わだかまりを抱えたセナの耳に、不思議な音が聞こえた。
聞いた事のない音。低い音が響き、それは身体の芯にも響く。
「・・・?」
窓の外を見たセナは、雨で煙る緑だけが見えると思っていた外に信じられない物を見た。
濁流。
どす黒い禍々しい奔流。
それがものすごい勢いでこの小さな家に突き進んできているのだ。
山肌を抉り抜く恐ろしい怪物のように。
「な――――」
セナは咄嗟に外に出ようと窓に背を向けて出口へと駆け寄る。
だが奔流の方が遙かに早い。
セナがドアに手を伸ばしたとき、濁流が音を立てて小屋を襲った。


「・・・!」
ぼんやりとしていたまもりの肩の上で、ポヨの毛が一気に逆立った。
「ポヨ?」
ポヨはまもりの肩からぴょいと飛び降りると、勢いよく屋敷へと走り出した。
どこから出てきたのか、ケルベロスも共に走ってきて合流する。
「ポヨ? ケルベロス?」
ケルベロスもよく見れば毛が逆立っていて、まもりは言いようのない不安に駆られて慌てて二匹の後を追う。
そして屋敷では、ヒル魔が無表情で椅子に座っていた。
いつでも不機嫌そうだったり上機嫌だったり様々だが、彼が表情を消すところなど見た事がない。
異様な雰囲気に飲まれ、戸口で立ちつくすまもりの目の前で、ヒル魔は立ち上がる。
その時を見計らったような声が外から聞こえてきた。
「ヒル魔!! おい、ヒル魔ァ!!」
「ムサシ様?!」
彼が声を荒げるなんて。まもりの顔から徐々に血の気が引いていく。
何かが、起きている。
一体何が。
「行くぞジジィ」
全てを承知しているらしいヒル魔が立ち上がり、ムサシの元に歩み寄る。
彼は浮雲に乗ったままで、ヒル魔も手近な浮雲を呼ぶ。
「どちらへ?! わ、わたしも――――」
「嬢ちゃんはここで待機していてくれ」
挨拶もなくムサシはまもりに告げる。
それがただごとではないのだと表していて、まもりはヒル魔に追いすがる。
「何があったんですか?!」
「お前はここで次に来る奴らに俺たちはもう現場に向かったと告げろ」
「ヒル魔さま!!」
まもりの声も空しく、二人はあっという間に飛び去った。
追いかけたい気持ちがあったが、足下に来ていたケルベロスがそれを止めるよう前に立ちはだかり、ポヨも服の裾を引いている。まるでまもりを引き留めるかのように。
「一体何が起きたの?」
呆然と呟くまもりの元で、ケルベロスが短く吠えるばかりで、何を告げたいのかは判らない。
まもりは考える。
多分地上で何かが起きたのだ。
もしこの天界で起きた騒動ならヒル魔が神殿に出向く事があってもムサシがこちらに来る事はない。
彼は西の風神、西で何か起きた。
そしてその内容をただの一言もまもりに漏らさなかった事から、おそらくはまもりの村に関する事なのだろう。
まもりはかたかたと震える。
村の誰かに何かが起こった。
何かの事件が起きている。
と。
夥しい数の浮雲がこちらにやってくる。
雲が完全に到着するかどうかくらいの位置で一人が雲の高度を下げて飛び降り、まもりに向かって走ってきた。見覚えがある顔。十文字と呼ばれていた青年だ。
「おい、ヒル魔・・・サマは?!」
「ムサシ様と、げ、現場に行かれました」
言われたとおりに告げると、彼は舌打ちして二人を呼び寄せる。
雲に乗ったままのこちらも見覚えはあるが名は判らない。いずれも風の管理人のようだ。
「先にあっちの山へ行け。多分ムサシ様が一人で風を操っているはずだ!」
「わかった!」
「先に行くぞ!」
二人が勢いよく飛び出していく。その後に続こうとした十文字の服の裾を、まもりは掴んだ。
「ハァ?! テメェ、放せ!!」
「な、何が起こってるんですか」
「・・・」
訝しげな視線を感じてもまもりは手を放せなかった。
「先ほどヒル魔さまの所にムサシ様がいらっしゃいました。何がどこで起きているか、何も仰らなかったけれどヒル魔さまはご承知のようでした」
「・・・テメェはヒル魔・・・サマにもムサシ様にも聞いちゃいないんだろ。だったら俺が言う事じゃねぇし」
「待って!!」
ふいと素っ気なく離れようとするのにまもりは追いすがる。
「地上で何かが起きたんですよね?! それも私の村で! 私に関わる誰かが、何か大変な目に遭ってるんですか?!」
「?!」
驚き足を止めた十文字に、自分の考えが正しいのだと知る。彼の目が雄弁に語っている。
何も聞いていないと言ったではないか、なぜお前はそれを知っているのか、と。
「一体誰が何に―――」
そこまで言いかけてまもりは口をつぐんだ。誰、と言えないのなら、それはまもりの家族ではないか。
それもヒル魔があれほどに黙りこくって表情を消したのなら、それは、・・・まさか・・・。
「来い」
「え」
ケルベロスが鋭く吠えたが、それに構わず十文字はまもりを連れて浮雲に飛び乗った。
服の裾についていたポヨも勢いで飛び乗ってまもりの肩に乗る。
「現場に行くぞ」
ちら、と彼は不満そうにまもりを見たが、それでも続ける。
「テメェがあのあたりの出身で親類縁者だっつーなら来た方がいい」
「わ、わたし・・・」
「だが、かなり酷な話になるぞ」
覚悟がないなら連れて行かない、と何も判らないままにまもりは選択を迫られる。
けれどまもりは躊躇わなかった。
十文字の腰にしがみついて、涙を湛えた瞳でそれでも彼を見上げる。
「お、お願い、します。村に、連れて行って」
「―――――わかった」
十文字は浮雲を飛ばす。警告するように吠え続けるケルベロスの声を聞かないフリで。


雲海を降りて地上を見たまもりの目に、雨。
常春の天界には雨も存在しない。雲よりも上にあるから、雨はないのだ。
地上は夏が近いようだった。常春の世界に身を置いたまもりは、それが何度目の夏かは判らない。
そして目にしたのは、恐ろしい光景だった。
夏、山に限らず見渡す限りの全てが深く濃い緑に覆われて噎せるような青い空気に満ちる季節。
そのはずなのに。
「・・・何、ですか・・・これは・・・」
空の上から見ても、その異常さはすぐ判った。
緑が、山の中腹あたりから茶色に変色している。いや、変色ではない。
地面だ。このあたりでは春先に作付けを行う畑以外には見られない色彩。
それがまるで子供が手のひらで砂山を削って崩したかのように、中腹から山の裾へと扇状に広がっている。
山の裾に位置する村の上に、折れたたくさんの木々と土砂とが広がっていた。
村があったはずの場所に満遍なく。
そしてまもりが住んでいた家は、村のはずれにあった。
それも、山に一番近い場所に。
「そんな・・・」
青ざめ震えるまもりにポヨがすり寄るが、まもりは瞬きも忘れてただその恐ろしい光景を見つめるばかり。
唯一のよすがと十文字の服に縋る指に力が入りすぎて白くなっている。
反面しがみつく力が弱くなったのを見かねた十文字は、その身体を抱き寄せた。
浮雲がいくつも空に散っている。ヒル魔はそのどこにもいなかった。
どこにいるのだろう、と目を彷徨わせるまもりの耳に十文字の声が入る。
「ヒル魔だ」
「!!」
ヒル魔は地上に降りていた。丁度まもりの住んでいた家のあたりに。
「行くか?」
「はい」
まもりは震えながらもしっかり頷いた。そんなまもりを抱えて十文字は地上へと近寄る。
かつてまもりが降りたときには形をとどめなかった浮雲は、今回はちゃんと地上まで形を保っていた。
「まもり?!」
「ヒル魔、さま・・・」
言いつけを破ってここに現れたまもりに、ヒル魔はなんとも言えない顔になる。
「なんで連れてきたんだ、十文字」
「・・・アンタの弟子がこの村の出身なら、コイツに検分させた方がいいだろ」
「これじゃ検分も必要ねぇだろうが」
全滅だ、とヒル魔は淡々と告げた。
まもりは地面に降り立つ。途端にずぶりと沈み込む、恐ろしい泥濘の感触。
まもりは呆然と辺りを見回す。
ここが懐かしい村なのか。
彼女が守りたいと願った村なのか。
悪い夢なのではないか。
「・・・セナ」
まもりの頬に涙が溢れる。
「セナぁ・・・」
誰よりも愛している、小さな弟。
彼はどこに行ったのか。
この恐ろしい泥濘に飲み込まれてしまったのか。
見渡しても無事な建物など一軒もない。
ただ荒れ果てた光景がそこに広がっている。
呆然とただ立ちつくすまもりの目の前に、おぼろげな両親の姿が見えた。
「!」
驚き瞬くまもりの前で、両親はすっと指で地面を指す。
そしてまもりに泣きそうな顔を見せ、頭を下げて二人はすうっと姿を消した。
まもりはよろよろと両親が指した地面に手を付け、手で土を掘り返し始めた。
不思議な確信がまもりの背を押す。
「おい?」
「セナ・・・」
泥濘には土ばかりではなく木っ端や砂利も混ざっていて、たちまちまもりの手は傷だらけになる。
その様子に気づいた十文字がまもりに近づいて慌ててその手を止めさせる。
「やめろ!」
「いや、やめない!! セナを、セナを助けなくちゃ!!」
どこにそんな力があるのか、と思うような力で十文字を振り払い、まもりは再び地面に取りすがる。
「セナが、この下にいるの!!」
「こんな土砂に押しつぶされちゃ助からねぇ!」
「いやっ、いるの! 絶対にいるの!! だって今、お父さんとお母さんがここだって!!」
「今?」
まもりの声を聞きつけたヒル魔がやってくる。
「まもり?」
「私の両親が、この下を指してました! 幻みたいでしたけど、でも、確かに見たんです!!」
「・・・ホー」
下がっていろ、そう告げてヒル魔は手を広げ、何か呪文を唱える。
その背後で十文字が何かを言おうとしたが、ヒル魔に軽く押しやられた。
ボコボコと地面が脈打ち、何かが顔を出す。
木だ。
細くしなやかな木が、恐ろしい程の速度で伸びていく。
その木は土砂を掻き出し、その枝に家の破片を纏わせて成長を続ける。
木は幹を太くし枝を張り、何十年と経た巨木へと育っていく。
そしてその枝に家の破片ではない何かが引っかかった。
ずるりと引き上げられる力無い身体。
少年の身体だった。
「セナ!!」
ぴた、とそこでヒル魔の呪文が止まった。同時に木もその成長を止める。
十文字がその身体を抱えて地面に下ろした。
触れる身体は既に冷たく、死の気配を感じる。
「このままじゃ・・・」
助からない、そう十文字が口にする前に、ヒル魔がムサシを呼んだ。
「ジジイ!!」
「なんだ?!」
「生存者だ、メガネに診せろ!」
ムサシは一瞬躊躇った。けれど青ざめ縋りつくまもりの姿を見てすぐに頷く。
「嬢ちゃん、行くぞ」
その腕にセナを抱え、まもりを連れてムサシは浮雲を飛ばした。一路、神殿へ。
泣きそうになりながらも懸命にムサシに縋りつくまもりは背後を見なかった。



ヒル魔が十文字を始めとした神殿から集められた者たちに取り囲まれ、その身柄を拘束された瞬間を。


<続>
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