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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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子猫幻視

(ヒルまもパロ)
※メジロさんから頂いたイラストから発想を得て。


+ + + + + + + + + +
次の試合の算段を脳内で組み立てながら帰路に就いていた彼の耳に響いたのは、小さな鳴き声。
猫。それも子猫の鳴き声。
生憎とそれを聞いて『かわいい!』なんていうファンシーな趣向は彼にはない。
ただ、親を呼ぶように絶え間なく鳴く声が耳障りだから耳が勝手に拾った、それだけ。
そしてついそちらへと視線を向けてしまった。
「・・・」
ぶつかったのは、青。
見上げてくるくりくりとした丸い瞳が、ヒル魔を見上げていた。
「にゃー」
『ひろってください』と下手な字が書かれた段ボール箱に入ったソレ。
長い尻尾をぴたりと自らに巻き付け、両の手を揃えて箱のへりに載せていた。
ぴくぴくと耳が動いている。
ヒル魔は現実的な性質だし、非科学的なことは信じない。
視力も視野も問題はなく、空間認識能力も情報処理能力も高い。
突発的な事件事故が起きても即座に対処できる自信はある。
だが、これは、一体何の悪い冗談だ、と思わず内心で零してしまった。
なにしろ、箱に入っていたソレは、猫などではなく。
「・・・何やってんだ、糞ガキ」
小学校低学年とおぼしき少女がじっとこちらを見上げていたのだから。
無表情にこちらを見ていた少女は、声を掛けられた途端尻尾をぴんと立てて箱から出てきた。
「にゃー」
満面の笑みを浮かべて、ヒル魔の足下に駆け寄ってくる。
制服のズボンに手をかけて見上げてくる期待に満ちた目に、ヒル魔は思わず周囲を見渡した。
これは何か新手の嫌がらせで、ヒル魔がこの少女に何か行動を起こした場合に、様子を見ている第三者がネタにするのではないか、と考えたのだ。
けれど、周囲にそれらしき仕掛けも不審な植え込みも人影もない。
となると、この変梃な状況は少女のイタズラということだろう。
「糞ッ」
ヒル魔は舌打ちした。子供のイタズラに足を止めるなんて時間の無駄だ。
耳も尻尾も作り物にしては良くできているように感じたが、関わり合うのも面倒でさっさと帰ろうと踵を返す。
「にゃー!」
途端に響く声。視界の端で茶色い頭がぴょこんと跳ねた。
ヒル魔は極力そちらを見ないように歩くのだが、背後からついてきている気配がする。
撒いてしまおうと早足で普段は歩かないような道を歩くうちに、のどかな農道に出てしまった。
一瞬全く見知らぬ土地に出たかと思ったが、根城にしているホテルが視界の先に見えてすぐに認識を改める。
「にゃー」
その声にヒル魔は眉を顰めた。
かなりの早足で歩いたはずなのに、少女はしっかりとついてきていた。
ヒル魔が思わず視線を向けると呼ばれたのだと勘違いしたのか先ほどのように駆け寄ってくる。
「近寄るな」
「にゃー」
けれど少女は頓着しない。このままこんな少女を連れ歩くと誘拐犯のレッテルを貼られそうだ。
ヒル魔は再び舌打ちする。
「判んねぇのか、コラ!」
イライラとしかりつけるように声を上げると、びくっと震えて少女は一歩下がる。
だがヒル魔が立ち去ろうとすると再び近寄ってくるのだ。
「にゃー」
「何なんだ、ったく!!」
盛大に舌打ちしてヒル魔はその少女に手を伸ばした。
襟首を掴んで持ち上げると、予想外に軽い。
ヒル魔の片眉がぴんと上がる。
と、そこに農作業を終えたらしい老婆が通りかかった。
ヒル魔の手にいる少女を見て、彼女は目を丸くし声を上げる。
「あんれぇ」
ヒル魔は面倒なことになりやがった、と苦虫を噛み潰したような顔をした。
子供をいじめるんじゃないよ、そんな言葉が来るのだと予想したが。
「随分ときれいな子猫だねぇ」
「・・・ア?」
「あんた、飼うのかい?」
その言葉にヒル魔は二、三度瞬いた。
「コイツを?」
「あぁ。よくよくあんたに懐いたような様子じゃないかね」
じろりと頭二つ程低い位置にある老婆の顔を見下ろしても、彼女はにこにこと笑っているだけだ。
ヒル魔は少女を検分し、そのままぱっと手を放した。
普通の子供ならしりもちをつくだろう。
けれど、少女は身軽に回転して地面にきちんと降り立った。
それはまさしく、猫のようで。
・・・というか、もしかして、子供に見えるのはヒル魔だけなのだろうか。
ヒル魔はふん、と鼻を鳴らした。出来るだけ平静を装って。
「・・・生憎と俺にはこんなのを飼う趣味はねぇ。飼いたいなら持って行け」
「いやぁ、ウチにはもう二匹おるんでねぇ」
その子らで精一杯よ、そう笑う老婆の瞳に嘘はない。
とすれば、もしかしなくても、この目の前の少女は猫なのだろうか。
先ほどの異様な軽さもそれなら納得できる。
良くできたような耳も、尻尾も、仕草も、そういえば猫の鳴き声しか上げないことも。
・・・いや、全く納得できる状況ではないままなのだが。
「ほれ」
ぽす、とヒル魔の腹に押しつけられたのは、少女。
押しつけたのは老婆だ。少女はここぞとばかりがっちりとヒル魔の腰にしがみついた。
「んなっ?!」
「かわいかろ? 面倒見たってバチは当たらんよ」
ああそうそう、ちょっと待ってなさい―――全くのマイペースでそんな事を言って家に戻った老婆は、程なくして袋を下げて戻ってきた。
「ウチの子らのエサさね。少し持ってきんしゃい」
「いらねぇ」
ヒル魔の厳しい表情にも老婆は頓着しない。
「遠慮せんと! ほれ!」
「だっ、違・・・」
「にゃー」
ヒル魔は老婆と少女に著しくペースを乱されて。
結局は離れない彼女を貼り付かせたまま憮然としてホテルへと戻った。
ホテルの従業員はそんなヒル魔の姿に目を丸くしたが、誰も少女について口にはしなかった。
支配人が渋い顔で『もしかして、その猫を飼うのですか?』と尋ねてきたくらいだ。
ということは、やはり当初の危惧通り彼女が人に見えるのはヒル魔だけということだろう。
欲しけりゃテメェにくれてやる、という言葉に遠慮します、と飛び上がって支配人は逃げた。
そんな彼に鼻を鳴らし、ヒル魔は興味津々な視線を受けつつ自室へと向かった。

室内に入った少女は、物珍しそうに辺りを見回している。
手当たり次第家具に近寄り、ふんかふんかと匂いを嗅ぐ仕草は確かに猫のようだ。
ヒル魔は今まで猫なんて飼ったことがないのでよく知らないが。
横目でその様子を見ながら着替え、ベッドに腰掛ける。
「・・・どうしろってんだ」
「にゃー」
一通り室内を検分し終わった少女がぴんと尻尾を立てた状態でヒル魔の元にやってくる。
やっぱり何度見ても少女にしか見えない。
ヒル魔は少女の脇に手を入れ、抱き上げる。
「にゃー」
手を伸ばして甘えるような声を上げる少女を膝に座らせ、観察してみる。
茶色い髪、青い瞳。
紙と同じ色の耳がぴんと立っていて、触れると嫌がるようにぴょこんと動く。
顔の横に触れると、人でならあるべきものが、ない。
耳が。ということは、これが本当に耳なのか、と再度頭の上で動く猫耳を突く。
ぺしん、と尻尾が諫めるようにヒル魔の手を叩いた。
少女は白のチャイナ風の洋服を着ていた。
首元が詰まったそれは見る限りボタンもなにもない。猫であるなら着替えは必要ないから、ということだろうか。
下肢はショートパンツで覆われ、作り物めいた様子で尻尾が尻から生えている。
そして両手足は髪と同じ色で、肉球のついた手袋靴下を嵌めているような様子だった。
一応外れないかと手袋を引っ張ってみたが、やはりというか案の定というか外れることはない。
触れてくる指に心地よさそうに瞳を細める少女は、ふと何かを見つけたように手を伸ばした。
その先に、ヒル魔のピアス。
「ッテ!」
「にゃー」
思わず声を上げたが、少女は頓着せず興味津々でピアスに視線を向けている。
「やめろ」
「にゃー」
嫌がる少女を引きはがそうとして、ヒル魔は気づいた。
少女の身体が大きくなって、いる?
押しつけられる身体が柔らかく丸みを帯びている。
先ほどまで軽かったはずの身体が、じわりとリアルな重さを告げてきていた。
視線を向けると、先ほどまであどけなかった少女の顔が、随分と大人びた顔になっている。
その顔がゆるりと綻び、唇がつり上がる。



その唇が言葉を紡いだ。

『ヒル魔さん』








「・・・ル魔さん、ヒル魔さん、もう朝よ」
「・・・ア?」
ヒル魔は視界に入った天井を見上げ、間抜けな声を上げた。
ホテルの天井ではない。
ここは、どこだ?
若干混乱したヒル魔の視界に、ひょこりと動く茶色の影。
先ほどの声の主、まもりだった。
「珍しいわね、この時間まで起きてこないなんて」
先ほどの最後に見たのと同じ顔が、不思議そうにヒル魔を見下ろしている。
一度瞬いて、ヒル魔はようやく気づいた。
「・・・夢か」
起きあがると、そこは見慣れた寝室だ。
「夢、見たの?」
「おー」
応じながらヒル魔はベッドから降りる。
「聞いてもいい? どんな夢だったの?」
まもりはその後ろから軽い足音を立ててついていく。
あの時のヒル魔は高校生の時の姿だった。
もしヒル魔があの時点でまもりと出会っていたら、丁度あれくらいの外見の差があっただろう。
「テメェは俺より十歳若ェんだったな」
「そうだけど。どうしたの? 突然」
夢とは何ら関係なさそうな発言に、まもりの眉が寄った。
からかわれたと思ったらしい。
ヒル魔は腕を伸ばし、宥めるようにその頭を撫でる。

途端に心地よさそうな顔になるのがあの少女と被り、ヒル魔は唇をつり上げた。


***
実は前々から書こうとしていた話だったのですが、上手にまとまらなかったので今回メジロさんのイラストの力をお借りして形にしてみました! ・・・なんだかイラストの雰囲気をぶちこわしてしまってすみません・・・。
しかも猫の恩返しシリーズと繋がってたりするのです。

少々フライングですが『トヨシマ』様一万ヒットお祝いということでメジロさんに強引に捧げますw
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