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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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エディブル・フラワー(5)



+ + + + + + + + + +
優しさの欠片もない手がまもりの衣服を引き剥いでいく。
それでもまもりは冷淡にヒル魔のなしようを見ているだけだ。
「抵抗しねぇのか」
「どうぞ、お好きに」
好きにしていいと言ったのは嘘ではないのだと、まもりは静かに瞳を伏せる。
「そうか」
呟き、ヒル魔は不意にまもりの唇を奪った。
優しく触れるそれに、髪を梳く指に、息が詰まる。
「・・・ふっ・・・」
押し殺した声に、ヒル魔は低く笑ってむき出しになった肌にゆるゆると指を這わせる。
打って変わって優しくなった手つきに、まもりは戸惑いヒル魔を見る。
「好きにしていいんだろ」
労わるような指に、かえって心が掻き毟られる。
乱暴にしてくれたら、ただ彼の欲望のままに引き裂いてくれたならいいのに。
こんなに優しく触れられてしまったら、期待してしまう。
望みをつないでしまいたくなる。
「なあ、まもり」
「・・・っ」
名を呼ばれ、額にキスを落とされ、手を握られる。
優しい。優しすぎる。
それが辛い。悲しい。
まもりのことなんて好きでもないくせに。
ただ汚して貶めたいだけのくせに。
まもりの心を傷つけるのならこれ以上ない残酷な手管だった。
「う・・・」
うめき声が漏れた。瞳が揺らぐ。こらえきれず、涙が溢れた。
「うう・・・っ」
腕で顔を覆い、唇を噛んで、体を丸める。
「嫌なら嫌って言えばやめてやるぞ」
淡々とした声に、それでも彼女は首を振った。
好きにしろと言ったのはまもりだ。
彼の好きにすればいい、という気持ちに変わりはない。
ただこれは、まもりが勝手に泣いてしまっただけだ。ただ、一人で苦しいだけだ。
ヒル魔を止める理由にはなりはしない。
何も。
「チッ」
ヒル魔が強引にまもりの顔を上げさせ、その唇を塞ぐ。
辛そうに泣くくせに抵抗もないまもりに、ヒル魔は眉を寄せる。
泣き濡れた顔なんて、幼い頃以来だった。
その頬を指で拭うと僅かに瞳が開く。
濡れた深い青が茫洋としてヒル魔を見ている。
ふと唇を離すと、小さく嘆息する。
けれど逃げることはない。
矛盾だらけの彼女。
「何考えてる」
「何も」
それに、ヒル魔はギリ、と歯噛みした。
「・・・いつもテメェはそれだ。考えてることは何一つ言わねぇ」
低い声に、まもりは薄く笑みを浮かべた。
「言って、どうなるの」
諦めが滲んだ声は、か細くヒル魔の耳朶を打った。
「私の考えてる事なんて、あなたには関係ない」
「そうだったな。だが」
「つっ」
ヒル魔はまもりの後ろ髪に手を回し、掴んだ。
痛みにまもりの顎が上がる。
睨みつける視線の強さに、まもりは息を呑む。
「もう俺は執事じゃねぇ」
『主』の考えてることは『執事』には関係のないことだった。
主の言うことに諾々と従うのが執事の役目だから。
だから、それ以上追求できないままだった。
けれどそこから解放されたのなら。
もう、彼女の言葉に従わなくていいのなら。
「俺はテメェを退職金代わりに所望した。テメェに黙秘権なんざねぇんだよ」
「そんな」
ただ自分を汚すために犯すのなら、まもりの言葉なんて関係ないはずだ。
「第一、今更黙ってようが喋ろうが同じだろうが」
今更、という言葉にまもりはふっと力を抜いた。
そうだ。
どうせ、彼は出て行く。まもりもまた、この屋敷を後にする。
二度と顔をあわせることなんてない。この先、ずっと、きっと。
「・・・そうね。今更、ね」
まもりは深く憂いを帯びた笑みを浮かべた。
「私は、ただ、ずっと」
唇が震える。
「あなたを、好きだっただけよ」
ただそれだけだった。

<続>
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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