旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「そうと決まれば、準備しなきゃ」
まもりはくるりと踵を返し、屋敷へと戻ろうとする。
「お待ちください」
「なあに?」
引き止める声にまもりは振り返りもせず返事をする。
「そうやって、お一人で何もかも決めてしまうのですか」
「そうよ。私は姉崎家の主だもの」
「私を何だと思ってらっしゃるのですか」
その声は低く、今までにない『怒り』を感じた。
「何って」
まもりは唇を震わせた。
執事としての分を決して忘れず助け続けてくれて。
主と執事という枠組みでは決して語れないほど近くにいて。
家族のように思っていた。
大切に、大事に思っていた。
何よりも誰よりも好きで。
愛して、いて。
けれど。
それは、まもりだけの想いであって、ここを去る彼には必要のないもの。
「・・・執事よ。それ以上でもそれ以下でもない。そうでしょう」
震えを押し殺して、まもりは笑みを浮かべて振り返る。
「違うかしら?」
その瞬間。
ヒル魔の眸がひどく昏く瞬いた。
その後は一言も発せず、ヒル魔は自室へと引きこもったきり姿を現さない。
まもりはどの業務にも手をつけず、ぼんやりと窓の外を見つめていた。
不思議なほど、後悔はなかった。
胸が痛いけれど、安堵のほうが大きかった。
彼を解放できた。これで、ヒル魔は自由だ。きっと幸せになってくれる。
ノックの音に、まもりは顔を上げた。
「どうぞ」
入ってきたヒル魔の姿を見て、まもりはふわりと笑った。
「準備は出来たの?」
「・・・」
ヒル魔は黒い服を纏い、トランクを一つ持っているきりだった。
他に私物はなかっただろうか。もし大きくて持ち運べないのなら、後で送ってあげよう。
そんなことを考えていたら、彼が顔を上げた。
「退職金のことですが」
その声は静かだった。
「金銭ではなく、一つ欲しいものがあります」
「そう? この屋敷にあってあなたが欲しいものがあれば、好きに持っていっていいわよ」
彼が去った後、まもりはこの屋敷も、土地も資産も全て売り払ってしまうつもりだった。
おそらくは膨大な金額になろうが、彼女一人で旅をするには多すぎる金は邪魔になるだけだ。
長年この屋敷にいたのなら、愛着があるものもあるだろう。
彼の好きにすればいい、と見つめる先。
ヒル魔が腕を伸ばし、捕らえたのは。
「・・・え」
「俺が欲しいのは、テメェだ」
抱きしめられて、まもりの息が止まりそうになる。
そんな。
では、彼は。
彼も、まもりの、ことを。
ほんの僅かな希望を掴んだ気がして、まもりは彼を見上げる。
だが、その眸にあったのは、暖かな色ではなかった。
冷たく蔑む色。
頬を包むその手ばかりが熱くて、まもりの肌がぞわりと粟立つ。
「いいように使われて・・・」
低い囁きに、まもりはその意味を知る。
やはり、彼は不満だったのだ。
この狭い屋敷に縛り付けられることが。まもりに囚われ続けたことが。
年端も行かない子供にいいように命じられ続けて、彼の青春を奪い取ってしまったことが。
「挙句にもう必要ねぇってなァ?」
まもりはゆるりと口角を上げた。
「そうよ。もう、あなたは必要ないの」
出来るだけ冷酷に見えるように、嫣然と笑ってみせる。
泣いて許しを請うつもりはない。
彼が満足するように、せいぜい憎たらしい主を演じ切ろう、そう判断する。
彼の眸が怒りに揺らぐ。
その手が乱暴にまもりの襟ぐりを割り開いても、まもりは笑みを消さなかった。
<続>
まもりはくるりと踵を返し、屋敷へと戻ろうとする。
「お待ちください」
「なあに?」
引き止める声にまもりは振り返りもせず返事をする。
「そうやって、お一人で何もかも決めてしまうのですか」
「そうよ。私は姉崎家の主だもの」
「私を何だと思ってらっしゃるのですか」
その声は低く、今までにない『怒り』を感じた。
「何って」
まもりは唇を震わせた。
執事としての分を決して忘れず助け続けてくれて。
主と執事という枠組みでは決して語れないほど近くにいて。
家族のように思っていた。
大切に、大事に思っていた。
何よりも誰よりも好きで。
愛して、いて。
けれど。
それは、まもりだけの想いであって、ここを去る彼には必要のないもの。
「・・・執事よ。それ以上でもそれ以下でもない。そうでしょう」
震えを押し殺して、まもりは笑みを浮かべて振り返る。
「違うかしら?」
その瞬間。
ヒル魔の眸がひどく昏く瞬いた。
その後は一言も発せず、ヒル魔は自室へと引きこもったきり姿を現さない。
まもりはどの業務にも手をつけず、ぼんやりと窓の外を見つめていた。
不思議なほど、後悔はなかった。
胸が痛いけれど、安堵のほうが大きかった。
彼を解放できた。これで、ヒル魔は自由だ。きっと幸せになってくれる。
ノックの音に、まもりは顔を上げた。
「どうぞ」
入ってきたヒル魔の姿を見て、まもりはふわりと笑った。
「準備は出来たの?」
「・・・」
ヒル魔は黒い服を纏い、トランクを一つ持っているきりだった。
他に私物はなかっただろうか。もし大きくて持ち運べないのなら、後で送ってあげよう。
そんなことを考えていたら、彼が顔を上げた。
「退職金のことですが」
その声は静かだった。
「金銭ではなく、一つ欲しいものがあります」
「そう? この屋敷にあってあなたが欲しいものがあれば、好きに持っていっていいわよ」
彼が去った後、まもりはこの屋敷も、土地も資産も全て売り払ってしまうつもりだった。
おそらくは膨大な金額になろうが、彼女一人で旅をするには多すぎる金は邪魔になるだけだ。
長年この屋敷にいたのなら、愛着があるものもあるだろう。
彼の好きにすればいい、と見つめる先。
ヒル魔が腕を伸ばし、捕らえたのは。
「・・・え」
「俺が欲しいのは、テメェだ」
抱きしめられて、まもりの息が止まりそうになる。
そんな。
では、彼は。
彼も、まもりの、ことを。
ほんの僅かな希望を掴んだ気がして、まもりは彼を見上げる。
だが、その眸にあったのは、暖かな色ではなかった。
冷たく蔑む色。
頬を包むその手ばかりが熱くて、まもりの肌がぞわりと粟立つ。
「いいように使われて・・・」
低い囁きに、まもりはその意味を知る。
やはり、彼は不満だったのだ。
この狭い屋敷に縛り付けられることが。まもりに囚われ続けたことが。
年端も行かない子供にいいように命じられ続けて、彼の青春を奪い取ってしまったことが。
「挙句にもう必要ねぇってなァ?」
まもりはゆるりと口角を上げた。
「そうよ。もう、あなたは必要ないの」
出来るだけ冷酷に見えるように、嫣然と笑ってみせる。
泣いて許しを請うつもりはない。
彼が満足するように、せいぜい憎たらしい主を演じ切ろう、そう判断する。
彼の眸が怒りに揺らぐ。
その手が乱暴にまもりの襟ぐりを割り開いても、まもりは笑みを消さなかった。
<続>
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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