旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ヒル魔の前で彼は右手ですいと先を示した。
「どうぞこちらへ。皆様既にお待ちです」
「皆様?」
人を食ったような笑みを浮かべる、傍目にはどう見ても雪光にしか見えない男の案内で、くねくねと曲がった廊下を進んでいく。
そして一つの障子の前でぴたりと雪光は足を止めた。
「ここです。・・・ヒル魔さん、最後のお一人様をお連れしました」
「おー」
掛ける声と、応じる声。
そのどちらにも眉を寄せた彼の前で、襖が開く。
「!?」
そこは、なんと己と同じ顔ばかりが何人も存在する奇妙な空間だった。
不機嫌そうだったり無表情だったりするが、全員『蛭魔妖一』であることは彼には一目瞭然だった。
なぜなら、『色』が。
多少の変化はあれど、皆同一の輝きを持っているから。
「遅かったな」
ただ唯一、上座に座るヒル魔だけはあからさまに人外という外見で。
まるで人外のようだと言われ続けたヒル魔であっても思わず躊躇してしまう姿だった。
金色の尻尾をゆったりと揺らし、肘置きに肘をついてこちらを伺うその顔には隈取り。
頭には大きな獣の耳。
ようようヒル魔は言葉を絞り出す。
「・・・一体なんだ、この糞悪趣味な空間は」
「なに、大したことじゃねぇ」
にやにやと笑い応じる人外なヒル魔。
ということは、彼こそがこの場を設けた張本人なのだろう。
「ちょっとしたオアソビだ。テメェらの不利益にはなんねぇよ」
座れ、と指された場所は数えて上から三番目の位置に相当した。
何人もの己の視線を受けつつそこまでたどり着き、腰を下ろす。
どうあがいてここから逃げても、元の場所に戻れる保証がない。
それならばこの人外な己の言うことをとりあえずは聞いた方がいいという判断だ。
「妥当だな」
心を読んだように人外な己が口角を上げた。
そしてぐるりと全員の顔を眺め、口を開く。
「雪光」
「はい」
す、と何もない空間からわき出た彼に、全員の気配が僅かにたじろぐ。
表面上に出るような面子は・・・少しはいたけれど。
「皆様、おそらくはそちらの世界の僕とはお会い頂いていると思いますが―――」
「『そちらの世界?』」
眉を寄せる彼らに雪光はにっこりと笑う。
「改めて自己紹介させて頂きます。僕はお倉坊主の雪光と申します」
聞き慣れない『お倉坊主』という単語を人外のヒル魔が補足した。
「お倉坊主っつーのは座敷童みてぇなもんだ。ついでにこの屋敷の管理人も兼ねてる」
「はい。本日は皆様との会談の司会進行をさせて頂くことになりました。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた彼に全員がぎっちりと眉を寄せた。
「まずはこの会談の趣旨を説明させて頂きます」
にっこりと人を食ったような笑みを見た彼らは、それぞれの知る彼との違いに違和感を禁じ得ないようだった。
平行して存在する、異なった世界の異なった空間。
それぞれに存在する自らと同じ存在。それも傍らに置く女も同じという徹底振り。
もし、そんな己を一同に集めてみたらどうなるだろうか、という妖怪のヒル魔の遊び心から始まった。
同じ己ばかりを集め、同じ質問を浴びせかけたらどんな差が出るのか、と。
「つまりは単純に好奇心だ」
「ンなモンに付き合わせるんじゃねぇ。俺は帰る」
仕事中だ、と憮然と言うのは軍人の格好をしたヒル魔だ。
「どうやって? 俺以外はンな芸当できねぇぞ」
自らの領域に招き入れた者の余裕で、にやにやと人外なヒル魔が笑う。
「じゃあ言うことを聞かせるまでだ。・・・さっさと俺を帰せ」
現れた短銃にも人外なヒル魔はにやにやと笑うばかり。
「ンなオモチャじゃ俺のことは倒せねぇぞ」
「喰らってから言え」
言うなり引き金に手を掛けた軍人のヒル魔の頭の上に、唐突に現れたのは大きな影。
「?!」
ゴワワワ~~~ン・・・
「・・・ッ」
間抜けな音を立てて落ちてきたそれに当たり、さしもの軍人もよろけた。
「タライ?」
「なんでタライ?」
何人かがぼそりと呟き、人外なヒル魔を見る。
けれど彼は何もした形跡がない。
「ダメですよ、屋敷に傷つけられたら修繕が大変ですから」
にっこりと雪光が笑っていなした。
彼が指さすと、タライはふっと姿を消す。
「僕はこの屋敷の管理人ですから、こういった芸当も出来ます」
管理人ってそういうものじゃねぇだろうが、と不審がる彼らに人外なヒル魔がにやにやと笑った。
<続>
「どうぞこちらへ。皆様既にお待ちです」
「皆様?」
人を食ったような笑みを浮かべる、傍目にはどう見ても雪光にしか見えない男の案内で、くねくねと曲がった廊下を進んでいく。
そして一つの障子の前でぴたりと雪光は足を止めた。
「ここです。・・・ヒル魔さん、最後のお一人様をお連れしました」
「おー」
掛ける声と、応じる声。
そのどちらにも眉を寄せた彼の前で、襖が開く。
「!?」
そこは、なんと己と同じ顔ばかりが何人も存在する奇妙な空間だった。
不機嫌そうだったり無表情だったりするが、全員『蛭魔妖一』であることは彼には一目瞭然だった。
なぜなら、『色』が。
多少の変化はあれど、皆同一の輝きを持っているから。
「遅かったな」
ただ唯一、上座に座るヒル魔だけはあからさまに人外という外見で。
まるで人外のようだと言われ続けたヒル魔であっても思わず躊躇してしまう姿だった。
金色の尻尾をゆったりと揺らし、肘置きに肘をついてこちらを伺うその顔には隈取り。
頭には大きな獣の耳。
ようようヒル魔は言葉を絞り出す。
「・・・一体なんだ、この糞悪趣味な空間は」
「なに、大したことじゃねぇ」
にやにやと笑い応じる人外なヒル魔。
ということは、彼こそがこの場を設けた張本人なのだろう。
「ちょっとしたオアソビだ。テメェらの不利益にはなんねぇよ」
座れ、と指された場所は数えて上から三番目の位置に相当した。
何人もの己の視線を受けつつそこまでたどり着き、腰を下ろす。
どうあがいてここから逃げても、元の場所に戻れる保証がない。
それならばこの人外な己の言うことをとりあえずは聞いた方がいいという判断だ。
「妥当だな」
心を読んだように人外な己が口角を上げた。
そしてぐるりと全員の顔を眺め、口を開く。
「雪光」
「はい」
す、と何もない空間からわき出た彼に、全員の気配が僅かにたじろぐ。
表面上に出るような面子は・・・少しはいたけれど。
「皆様、おそらくはそちらの世界の僕とはお会い頂いていると思いますが―――」
「『そちらの世界?』」
眉を寄せる彼らに雪光はにっこりと笑う。
「改めて自己紹介させて頂きます。僕はお倉坊主の雪光と申します」
聞き慣れない『お倉坊主』という単語を人外のヒル魔が補足した。
「お倉坊主っつーのは座敷童みてぇなもんだ。ついでにこの屋敷の管理人も兼ねてる」
「はい。本日は皆様との会談の司会進行をさせて頂くことになりました。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた彼に全員がぎっちりと眉を寄せた。
「まずはこの会談の趣旨を説明させて頂きます」
にっこりと人を食ったような笑みを見た彼らは、それぞれの知る彼との違いに違和感を禁じ得ないようだった。
平行して存在する、異なった世界の異なった空間。
それぞれに存在する自らと同じ存在。それも傍らに置く女も同じという徹底振り。
もし、そんな己を一同に集めてみたらどうなるだろうか、という妖怪のヒル魔の遊び心から始まった。
同じ己ばかりを集め、同じ質問を浴びせかけたらどんな差が出るのか、と。
「つまりは単純に好奇心だ」
「ンなモンに付き合わせるんじゃねぇ。俺は帰る」
仕事中だ、と憮然と言うのは軍人の格好をしたヒル魔だ。
「どうやって? 俺以外はンな芸当できねぇぞ」
自らの領域に招き入れた者の余裕で、にやにやと人外なヒル魔が笑う。
「じゃあ言うことを聞かせるまでだ。・・・さっさと俺を帰せ」
現れた短銃にも人外なヒル魔はにやにやと笑うばかり。
「ンなオモチャじゃ俺のことは倒せねぇぞ」
「喰らってから言え」
言うなり引き金に手を掛けた軍人のヒル魔の頭の上に、唐突に現れたのは大きな影。
「?!」
ゴワワワ~~~ン・・・
「・・・ッ」
間抜けな音を立てて落ちてきたそれに当たり、さしもの軍人もよろけた。
「タライ?」
「なんでタライ?」
何人かがぼそりと呟き、人外なヒル魔を見る。
けれど彼は何もした形跡がない。
「ダメですよ、屋敷に傷つけられたら修繕が大変ですから」
にっこりと雪光が笑っていなした。
彼が指さすと、タライはふっと姿を消す。
「僕はこの屋敷の管理人ですから、こういった芸当も出来ます」
管理人ってそういうものじゃねぇだろうが、と不審がる彼らに人外なヒル魔がにやにやと笑った。
<続>
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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