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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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大変容

(泥門デビルバッツ2年生組)

+ + + + + + + + + +
クリスマスボウルが終わり、冬休み中は練習もなくて、年が明けて。
新学期早々、事件は起こった。

その日、金髪悪魔の姿は学校になかった。
やはりクリスマスボウル制覇という長年の夢が叶ったからか、もう新天地に飛んだのでは、という噂は真実味を帯びてひそひそと囁かれている。
特に何も聞かされていない部員達は、その噂を笑い飛ばす事も出来ず、まんじりとしながら悪魔の登場を待っていたのだが、一向に姿を現す気配がない。
「・・・やっぱり、アメリカとかに行っちゃったのかしら・・・」
ため息をつくまもりに、栗田とムサシは顔を見合わせる。
「いや、特に聞いちゃいないから、それはないと思うんだが」
「うん。行くにしても黙って行く事はないと思うよ」
そして二人は口を揃える。
「「だってヒル魔だし」」
口から産まれたような男だ、無言で旅立つなんてあり得ない。
「・・・うん、そうなんだけど・・・」
「あ、皆さんお揃いですね」
それに雪光も様子を伺いに来て話に混ざった。
「ヒル魔さんは来てないんですか?」
「うん。ヒル魔、途中でさぼる事はあっても遅刻はしないから、来てないんじゃないかなあ」
「え? でも、ヒル魔さんの席ってあの窓際の一番後ろですよね?」
雪光が見つめる先にはヒル魔の席があるはずで。
そうよ、と言いながら振り返ったまもりの視界に入ったのは。
「・・・誰? あれ」
ゆるく流された長めの黒髪、きちんと着た制服。誰か転校生か、と思った四人の顔が一気に強ばった。
見えたのは尖った耳。そこにはピアスもないが、間違いなくあの彼のもの。
双子の兄や弟がいるとは聞いた事がないし、・・・まさか。
栗田が恐る恐る近寄っていった。
「あの・・・」
すい、と上げられた顔を見た栗田は奇妙な声を立てて後ずさった。
「ひぃっ!?」
「く、栗田くん?!」
「どうしたんだ?!」
慌てて近寄ったまもりとムサシもその顔を見て絶句した。
「ああ、おはよう、みんな」
そこにいたのは。
髪を黒くし、ピアスも外し、きちんとネクタイを締めて制服を着こなした、蛭魔妖一。
「~~~~~~~~~!!??」
言葉もなく驚きのあまり固まる三人の元に遅れて雪光が顔を出す。
「ひ、ヒル魔さん?」
「おはよう雪光くん」
ごく普通に挨拶されて、雪光は意識が宇宙まで飛びそうになるのをなんとか抑え、口を開く。
「どう、したの? その格好・・・」
「え? ああ、これ?」
ネクタイを触りながらヒル魔はにっこりと笑った。
悪魔じみたにやりという笑いではなく、ごく一般的な笑顔である。
あの『蛭魔妖一』なのに!
「クリスマスボウル制覇っていう夢も叶ったし、もうあの格好をする必要もないかと思ってね」
にこにこ、という表現がぴったりの顔にようやく石化が解けたまもりがヒル魔を見る。
「じゃ、じゃあ銃器とか持ってきてないの!?」
「やだなあ、姉崎さん。普通学校には銃器は持ってこないでしょ」
お前が言うか、と皆が思ったが驚きすぎて咄嗟に言葉が出てこない。
「それが本来の姿とか抜かすか?」
ムサシの言葉にもそうだよ、とあっさり応じる姿は到底ヒル魔には思えなくて。
「脅迫手帳は・・・」
「あれは危険だから迂闊に処分も出来ないし、とりあえず保管してあるよ」
でも近いうちに処分しようかな、という言葉に息を潜めて成り行きを伺っていたクラスメイト達が無言で喜びを示している。
「え、じゃあヒル魔ってあの格好無理してやってたの?」
栗田の素朴な疑問にヒル魔は首を振った。
「無理じゃないけど、必要に応じてやってただけだから」
あれはあれで楽しかったしね、と邪気なく笑われてもう何も言えない。
「ぶ、部活はどうするの? 一年生が入るまでは続けないの?」
「ああ・・・どうしようかな」
それはヒル魔にしては随分と曖昧な言葉で。
三人は顔を見合わせるしかない。

その後悪魔が一般人になった、という話は一気に全校に広まり。
喜んで良いのか悪いのか、これを機にヒル魔を闇討ちするべきじゃないか、いやこれも罠ではないか、という憶測が飛び交ったり、意外に普通にしてたら格好いいんじゃない!? という女子生徒の色めきだった噂も流れたり。

泥門高校は完全なる混沌が満ちる事になった。






しかし、そんなに日をおかずヒル魔はあっさりと金髪を逆立てた以前のスタイルに戻した。
あの混乱の日々は何だったのか、と誰もがため息をつかずにはいられない。
「なんだったの、あれ」
「脅迫手帳の整理」
ヒル魔曰く、脅迫手帳の内容を精査するのに、今回あえて隙を見せたヒル魔に喧嘩を売るような奴らの情報を中心に編纂し直したのだという。
ある意味効率が最も良かった、と言えるかもしれない。
「それにしても、あの格好は違和感が強かったわね」
今日も変わらず部室に顔を出したヒル魔にコーヒーを淹れつつ、まもりは苦笑する。
それにヒル魔は口を付けながらさらりと言った。
「姉崎さんはこの格好の俺の方が好きみたいデスカラネェ」
「はいっ?!」
驚き赤面するまもりに、にやりといつものように悪魔じみた顔でヒル魔は笑ってみせたのだった。

***
こういう未来もありかもよ、と話していたネタ。
金髪悪魔じゃないヒル魔さんなんて想像できない!(笑)
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