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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ディア・ステップファザー

(ヒルまも一家)
※まもパパ視点
※アヤ・妖介が高校一年生です

+ + + + + + + + + +
私は遠くから聞こえる包丁の音にぼんやりと目を覚ました。
ああ、妻か、と思って次の瞬間固まる。
いや、彼女は二日前に娘のまもりと共に旅行に出掛けてしまった。
娘と二人旅なんてなかなか行けないし、一度行ってみたいと言っていたので誕生日のプレゼントとして贈ったのだ。そこにヒル魔が一枚噛んでいるようなのが気にくわないが、妻に対しては紳士に振る舞うようなのでまあよしとする。
それはともかく、私は本当に久しぶりに一人で家にいたわけだ。
ところが一人になった途端、体調が悪くなった。
自分でも気づかないうちに疲れていたらしい。
昨日はまだなんとか起きていられたが、今朝はもう駄目だ。
目が覚めても起きあがれず、ベッドの中で呻くばかり。
こういうときに妻も娘もいない現状は辛い。
どうにかふらふらと水を飲んだり用足しするくらいは出来たが、その後はまたベッドの住人だ。
助けを求めようにも後に残るのはヒル魔か男孫という・・・。
いや、アヤは女孫だった。それでも孫たちも学校やら部活やらで忙しいし、あまり迷惑は掛けたくない。
悪魔・・・もといヒル魔には頼みたくないし。
よほど救急車を呼ぼうかと思っていたのだが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
さて、台所にいるのは一体誰だ?
私は起きあがろうとした。が、その時同時に部屋の扉が開いた。
そこには金髪の悪魔。・・・の息子が黒のエプロンをして立っていた。
「じいちゃん、大丈夫?」
「・・・よ、妖介か・・・」
それに私は脱力する。姿形はとても似ているが、性質は娘寄りの孫、妖介だった。
「昨日の電話の時、声がおかしかったから見てこいって父さんが」
「・・・そうか」
実は昨日、ヒル魔から夕食を一緒にどうか、と誘いを受けたのだが生憎と店屋物を取った直後だったので断ったのだ。散々からかわれて怒鳴ったので、あれで悪化したという説もある。
「起きられる? 雑炊作ったんだけど、食べた方がいいよ」
薬も飲まないとね、という妖介に私は目を丸くする。
「雑炊? 妖介、料理ができるのか?」
「? うん、普通に」
「男子厨房に入らず、じゃないのか? ヒル魔は料理なんてしないだろう」
それに妖介はぱちぱちと瞬いた。
「ううん、俺より父さんの方が料理上手いくらいだよ。昨日は父さんが夕食作ってたし」
「何!?」
いかにも悪魔な外見のあの男が作る料理・・・一体どんな人外なものが出てくるのだろうか。
「ほら、父さんって変に記憶力がいいから、料理の本とか読んでも丸暗記しちゃうんだよね。だから料理の本があれば完全に再現できるの」
「そ、そうなのか・・・」
会話しながら妖介は私を起きあがらせ、クッションを積み上げ背もたれにし、背に上着を掛けてから雑炊を運んで、と手際よく用意していく。
「・・・本当に妖介はまもりに似たね」
「顔は父さん似だからじいちゃんには悪いけどね」
それに私は苦笑する。
実際同じ顔で同じ声ながら性質が180度違うこの親子に戸惑う事もしばしばなのは事実だから。
土鍋にはできたての雑炊が入っている。それを茶碗によそい、レンゲと共に渡される。
「食べさせてあげた方がいい?」
「いや、いいよ」
ありがたく雑炊を頂きながら、私は思いついて口を開く。
「そういえばアヤはどうしたんだい?」
てっきり病人の介護なら女孫のアヤが来そうなものなのに。
「今日はテスト期間で部活もなかったし、アヤも出掛けてるんだ。護も習い事で出ちゃってるし、家にいたのは俺と父さんだけ」
「そうか・・・」
「父さんよりは俺の方がいいかなって思って来たんだよ」
「そうだね。ヒル魔が来ると休まらないよ、きっと」
「まず間違いなく雑炊は『ハイ、アーン』とかやるよ」
「・・・想像させないでくれ!」
うっかり親鳥よろしく介護しようとするヒル魔の姿を想像して悪寒が酷くなる。
そんな私に妖介も苦笑した。
「父さんはじいちゃんのことが好きなだけなんだけどね」
「・・・む」
それにむっつりと眉を寄せる私に、妖介は雑炊のおかわりの有無を尋ね、必要ないと告げると薬と白湯を渡してくれた。
「俺、これ片づけてくるね。薬飲んだら横になってて」
「ああ。ありがとう」
立ち上がった妖介の背を見送り、私は再び横になる。
先ほどの彼の言葉に私は否定の言葉を紡げなかった。
なんだかんだでもう20年近く彼との付き合いはあるわけで。
しかもアメリカと日本という長距離を隔てていて。
その間、折に触れて接点を持とうとしたあの男は意外な程に細やかに私たち夫婦を気に掛けていた。
概ね憎まれ口がセットなので素直に受け取れない事の方が多かったけれど。
今回の事にしたって、電話口での応酬だけで体調不良を悟るほどに知られているのだ。

熱い湯を張った洗面器とタオルを持ってきた妖介は身体も拭いてくれるという。
ありがたく申し出を受けることにする。正直、汗でベタベタして気持ちが悪かった。
少々熱いと思えるくらいの温度のタオルで身体を拭かれ、新しいパジャマに身を包む。
濡れたシーツも新しい物に取り替え、再び横になると随分楽になった。
「ありがとう。妖介は随分手際が良いね」
「うん。俺将来は医者か先生か介護士か保育士になりたいんだよね」
「そりゃすごい」
「まだどれかは決めてないんだけど、どれかにはなるんだ。だから今回は介護士の練習になったし、かえってありがたいよ」
汚れ物を纏めて抱える妖介はいきいきとして、かつてのまもりを思い出させる。
私は唇に笑みを浮かべながらそっと瞳を閉じた。
「将来妖介が何になるか、楽しみにしてるよ」
「うん。おやすみ、じいちゃん」
程なく、心地よい眠りが私を闇へと誘った。


ぱちりと目を覚ますと、身体は大分楽になっていた。
見れば妖介はもう帰ったようで、枕元に水と薬、それとメモが残されていた。
妻が不在の間の家事を全てこなしていってくれたらしい。
私は起きあがって電話を手に取った。短縮で入っている番号を呼び出す。
すぐに電話は繋がった。相手はヒル魔だ。
『おー、もう体調はよろしいんデスカお義父サン?』
からかう風情の言葉にもぐっと堪えて言葉を継げる。
「お陰様でね。妖介を寄越してくれてありがとう」
『それは重畳。お義母サンが帰ってくるまで妖介はそこに通うソウデスヨ』
「それは・・・ありがたいが、テストは大丈夫か?」
それにヒル魔は楽しげに笑う。
『俺とアイツの息子だぜ。変な成績にゃなんねぇよ』
「・・・そうかもしれんが、テスト期間中に風邪が移ったらどうするんだ?」
心配する私にヒル魔は口早に告げた。
『妖介は丈夫だからいいんだよ。人の事とやかく言う前に起きてねぇでさっさと寝やがれ』
不在の間に体調崩したとあっちゃ二人とも心配するだろうが、と続けられて私は頷く。
帰ってきて私が寝込んでいては楽しかった旅行も台無しだろう。
「それもそうか。ゆっくり静養させて貰うよ」
『なんなら俺が妖介の代わりに行ってもいいんデスガネ』
それに私はにやりと笑う。
「ほう? 君が私の介護をしてくれるというのかね?」
まさかヒル魔がそんなことをしないだろう、と思ったのだが。
『勿論、身体を拭くところからオシメの交換までバッチリして差し上げマスヨ』
ケケケ、と笑われて私は絶句した。
「・・・そこまで耄碌してない!!」
『それだけ怒鳴れりゃ大丈夫だな。ゆっくりお休みクダサイ』
言うなり電話はふつりと切れた。
私は忌々しげに電話機を眺めていたが、元の位置に戻して再びベッドへと潜り込む。
早く治そう。
そうして、ヒル魔達がいる家に顔を出して、悪魔の世話など無用だと宣言してやろう。
耄碌する暇さえ与えないつもりの彼の気遣いに、私は知らず笑みを浮かべて眠ったのだった。


***
まもママ視点を続けて書いたので、久しぶりにまもパパに登場していただきました。
ヒル魔さんに介護されると聞かされたらそりゃ意地でもぼけられないですよね(笑)
時系列としては『ハニーレモン』の時。一方その頃妖介は、という感じです。
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