旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
夕食が終わって子供達はおのおのお風呂に入りに行った。
護はまだ一人で入らせるには幼いので、ヒル魔が帰ってきたら入れて貰う約束だ。
夕食の片づけを終えてリビングで家計簿を付けていると、アヤがタオルを被った状態で戻ってきた。
「お母さん、聞いてもいい?」
「あら、何かしら?」
アヤに判らない事があるからと尋ねられる事はあまりない。
判らなければなるべく自分で調べること、というヒル魔の言葉を守っているからだ。
まもりなどは小さいうちはまだいいだろうに、と思うのだけれど。
「あのね、お母さんはお父さんのどこが好きになったの?」
「え?」
それにまもりは顔をほころばせた。自分も幼い頃母に聞いた覚えのある質問だからだ。
「そうねえ」
当たり障りなく答えようとして、まもりはぴたりと動きを止めた。
「見た目・・・は、怖いし・・・優しい・・・くない・・・し・・・」
「お母さん?」
「やる事は・・・非道だし・・・私にだって酷い事・・・」
心配そうに見上げる娘を余所に、まもりは家計簿を放り出して頭を抱えた。
まず出会いは最悪だった。高校の入試らしからぬ装飾を一面に施し、教師を脅し、風紀は乱すし人は脅すしで散々な印象だった一年目。二年目に部活は一緒になってもやはり極悪非道だし、なし崩しに入ったまもりもこき使うしセナはいじめるし・・・後々そうじゃないと判ったけれどそれもひた隠しにされたし、三年目は部活を引退したせいで風紀委員会絡みでしか声を掛けなかったからやっぱり悪い印象だし・・・。
「・・・なんでかしら・・・」
思い返しても好きになる要素が少なすぎる気がする。確かにアメフト部を率いて努力する姿は格好良かったと言えるかもしれないが、それ以外の面が酷くいただけない部分ばかりで、よくよく考えればまもりに対してだって酷いことを言われたりされたりしたことの方が遥かに多い。
「うーん・・・」
「お母さん・・・」
ついには唸りだしたまもりに、アヤは途方に暮れてただ見上げるしかない。
後から出てきた妖介は護と不思議そうにそんな二人を見ていたが、鍵が開く音に気づいて手を繋いで出迎えに向かった。
「タダイマ」
「おかえりなさーい」
「なさーい」
父親の帰宅に、妖介と護はにっこりと笑う。
護が手を伸ばして抱っこをせがむのに応じて、ヒル魔は護を抱き上げるが。
「オイ、母さんは?」
「リビングにいるよ」
いつもなら子供達に加えまもりも揃って玄関まで顔を出すのだ。
夕食の支度時は無理だが、それ以外であれば出てくるのに、今日に限っていない。
「おかーさんうんうんいってるよ」
護がそう告げる。眉を顰めるヒル魔の耳に、確かに低いうなり声。
「何やってんだ? 腹でもこわしたか?」
「んーん、アヤちゃんがいっしょにいるよ」
息子二人の言葉では要領を得ず、ヒル魔は護を抱えたまま、妖介を伴ってリビングへ脚を進めた。
そこには確かに唸るまもりの姿。こちらに背を向けて座っている。
その傍らのアヤは途方に暮れたように棒立ちだ。
しかしヒル魔の帰宅に気づいてぱっと顔を明るくする。
「お父さん、おかえりなさい!」
「タダイマ。・・・何やってんだコイツは」
唸るまもりはまだヒル魔の帰宅に気づいていない。
アヤは母譲りの青い目を困ったように瞬かせて口を開いた。
「お母さんにね、お父さんのどこが好きになったの? って聞いたの」
「ホー」
ピン、とヒル魔の片眉が上がる。
「そうしたら固まっちゃった」
そこでアヤは思いついたようにヒル魔を改めて見上げる。
「お父さんは?」
「ア?」
「お父さんはお母さんのどこが好きになったの?」
それにヒル魔は間髪入れず答えた。
「全部」
「えー、全部ぅ?」
それに隣にいた妖介が声を上げた。アヤも不審そうだ。
それをちろりと見て、ヒル魔は抱えていた護を妖介に渡す。
慌てて支えるのを尻目にしゃがみ込み、アヤの目を見る。
「アヤは糞ジジィが好きだっつってたな?」
「うん」
今更この父親に隠し立てもできないので、アヤは素直に頷いた。
「じゃあ糞ジジィのどこが好きだ?」
「どこ? ・・・ええと、お顔も好きだしお話も好きだし身体もおっきくて好きだし・・・」
「それじゃあ全部だよナァ?」
「・・・うん」
「そういうもんだ」
そう言われ、アヤはやっと納得したように笑った。
そして未だ唸るまもりを振り返ってからまたヒル魔を見上げる。
「じゃあ、お母さんは違うのかな」
「サアネ」
そこでヒル魔はにやりと笑う。
あまり質の良くない笑みに、アヤは危険を察知して隣の弟たちの元へそっと歩み寄って子供達だけでまとまった。
立ち上がったヒル魔は、相変わらず足音も立てず静かにまもりの背後に立つ。
すう、とヒル魔が息を吸った。
「オイ、姉崎!!」
「キャー!!」
いきなり怒鳴り声で呼ばれ、まもりはそのままの姿勢で飛び上がった。
慌てて振り返れば、そこには仁王立ちしたヒル魔の姿。
「あ、お、お帰りなさい」
「タダイマ」
ヒル魔の手がまもりの肩に載せられる。
「え、と。夕飯食べるよね。その前に護とお風呂に入る? あ、ええととりあえずコーヒーとか・・・」
ガタガタと音を立てて椅子から立ち上がろうとするのを強引に押さえつけ、ヒル魔はまもりの顎を捕らえると妙な体勢で唇を奪った。
「んー! んんーっ!!」
ばたばたと藻掻くのを子供達は不安そうに眺めるしかない。
もしお父さんがお母さんをいじめるようだったら、と妖介が仲裁に入ろうとするが、それをアヤが止める。
どうして、という顔をする妖介の前で、アヤは指さした。
その先を辿れば、楽しそうな父親の顔と、真っ赤になってこちらを見ている母親の顔。
「こっ、子供達の前で!!」
「サアテ姉崎サンに質問デス。夫である俺のどこを好きになったんでショウカ?」
「え!? え、えええ!?」
「俺は即答だったぞ。なあ、アヤ」
そう言われ、まもりが視線を向けた先でアヤはこくりと頷いた。
「お父さんはお母さんの全部が好きだって」
「きゃー! きゃー!! 何子供に恥ずかしい事言ってるのー!?」
「事実だろ。それよりテメェが子供に即答できないっつー方がいただけねぇナァ」
ぐい、とまもりを強引に抱き上げたヒル魔に子供たちは歓声を上げ、まもりは悲鳴を上げる。
「「「すごーい!」」」
「きゃー!?」
「オシオキが必要だよナァ?」
それにまもりはさーっと青ざめる。
それを聞いて子供達は目を見開き、ヒル魔の足下を取り囲んだ。
「お父さん、お母さん怒るの!?」
「おかーさんはわるくないよ!」
「おとうさんおこっちゃヤダー!」
わーわーと騒ぐ子供達にヒル魔は取り合わない。
「テメェらはもう寝ろ」
「え、でも護はおふろに入ってない・・・」
妖介が言いつのろうとしたが。
「一日入らなくても死なねぇよ。母さんが父さんのどこを好きかもう一回確認する方が大事だしナァ」
「そうなの?」
アヤがまもりを見つめる。
子供達に心配かけまいとまもりは内心の動揺はさておいて、にっこりと笑って見せた。
「そ、そうよ。お母さんはお父さんと大事なお話しするから、三人は先に寝ててね」
「おとーさん、おかーさんいじめない?」
「いじめねぇよ」
おら行け、と言われて子供達は渋々部屋へと向かう。
子供達は後ろ髪を引かれるように振り返りながらリビングを後にした。
それを見届けてからヒル魔は寝室へと冷や汗を掻いているまもりを運んでいき、意気揚々と扉の鍵を閉めたのだった。
***
子供が一度は親に尋ねる事ですよね(笑)
友人Kくんにネタだしして貰って作ってみました。子供の情報提供これからもお願いします!
護はまだ一人で入らせるには幼いので、ヒル魔が帰ってきたら入れて貰う約束だ。
夕食の片づけを終えてリビングで家計簿を付けていると、アヤがタオルを被った状態で戻ってきた。
「お母さん、聞いてもいい?」
「あら、何かしら?」
アヤに判らない事があるからと尋ねられる事はあまりない。
判らなければなるべく自分で調べること、というヒル魔の言葉を守っているからだ。
まもりなどは小さいうちはまだいいだろうに、と思うのだけれど。
「あのね、お母さんはお父さんのどこが好きになったの?」
「え?」
それにまもりは顔をほころばせた。自分も幼い頃母に聞いた覚えのある質問だからだ。
「そうねえ」
当たり障りなく答えようとして、まもりはぴたりと動きを止めた。
「見た目・・・は、怖いし・・・優しい・・・くない・・・し・・・」
「お母さん?」
「やる事は・・・非道だし・・・私にだって酷い事・・・」
心配そうに見上げる娘を余所に、まもりは家計簿を放り出して頭を抱えた。
まず出会いは最悪だった。高校の入試らしからぬ装飾を一面に施し、教師を脅し、風紀は乱すし人は脅すしで散々な印象だった一年目。二年目に部活は一緒になってもやはり極悪非道だし、なし崩しに入ったまもりもこき使うしセナはいじめるし・・・後々そうじゃないと判ったけれどそれもひた隠しにされたし、三年目は部活を引退したせいで風紀委員会絡みでしか声を掛けなかったからやっぱり悪い印象だし・・・。
「・・・なんでかしら・・・」
思い返しても好きになる要素が少なすぎる気がする。確かにアメフト部を率いて努力する姿は格好良かったと言えるかもしれないが、それ以外の面が酷くいただけない部分ばかりで、よくよく考えればまもりに対してだって酷いことを言われたりされたりしたことの方が遥かに多い。
「うーん・・・」
「お母さん・・・」
ついには唸りだしたまもりに、アヤは途方に暮れてただ見上げるしかない。
後から出てきた妖介は護と不思議そうにそんな二人を見ていたが、鍵が開く音に気づいて手を繋いで出迎えに向かった。
「タダイマ」
「おかえりなさーい」
「なさーい」
父親の帰宅に、妖介と護はにっこりと笑う。
護が手を伸ばして抱っこをせがむのに応じて、ヒル魔は護を抱き上げるが。
「オイ、母さんは?」
「リビングにいるよ」
いつもなら子供達に加えまもりも揃って玄関まで顔を出すのだ。
夕食の支度時は無理だが、それ以外であれば出てくるのに、今日に限っていない。
「おかーさんうんうんいってるよ」
護がそう告げる。眉を顰めるヒル魔の耳に、確かに低いうなり声。
「何やってんだ? 腹でもこわしたか?」
「んーん、アヤちゃんがいっしょにいるよ」
息子二人の言葉では要領を得ず、ヒル魔は護を抱えたまま、妖介を伴ってリビングへ脚を進めた。
そこには確かに唸るまもりの姿。こちらに背を向けて座っている。
その傍らのアヤは途方に暮れたように棒立ちだ。
しかしヒル魔の帰宅に気づいてぱっと顔を明るくする。
「お父さん、おかえりなさい!」
「タダイマ。・・・何やってんだコイツは」
唸るまもりはまだヒル魔の帰宅に気づいていない。
アヤは母譲りの青い目を困ったように瞬かせて口を開いた。
「お母さんにね、お父さんのどこが好きになったの? って聞いたの」
「ホー」
ピン、とヒル魔の片眉が上がる。
「そうしたら固まっちゃった」
そこでアヤは思いついたようにヒル魔を改めて見上げる。
「お父さんは?」
「ア?」
「お父さんはお母さんのどこが好きになったの?」
それにヒル魔は間髪入れず答えた。
「全部」
「えー、全部ぅ?」
それに隣にいた妖介が声を上げた。アヤも不審そうだ。
それをちろりと見て、ヒル魔は抱えていた護を妖介に渡す。
慌てて支えるのを尻目にしゃがみ込み、アヤの目を見る。
「アヤは糞ジジィが好きだっつってたな?」
「うん」
今更この父親に隠し立てもできないので、アヤは素直に頷いた。
「じゃあ糞ジジィのどこが好きだ?」
「どこ? ・・・ええと、お顔も好きだしお話も好きだし身体もおっきくて好きだし・・・」
「それじゃあ全部だよナァ?」
「・・・うん」
「そういうもんだ」
そう言われ、アヤはやっと納得したように笑った。
そして未だ唸るまもりを振り返ってからまたヒル魔を見上げる。
「じゃあ、お母さんは違うのかな」
「サアネ」
そこでヒル魔はにやりと笑う。
あまり質の良くない笑みに、アヤは危険を察知して隣の弟たちの元へそっと歩み寄って子供達だけでまとまった。
立ち上がったヒル魔は、相変わらず足音も立てず静かにまもりの背後に立つ。
すう、とヒル魔が息を吸った。
「オイ、姉崎!!」
「キャー!!」
いきなり怒鳴り声で呼ばれ、まもりはそのままの姿勢で飛び上がった。
慌てて振り返れば、そこには仁王立ちしたヒル魔の姿。
「あ、お、お帰りなさい」
「タダイマ」
ヒル魔の手がまもりの肩に載せられる。
「え、と。夕飯食べるよね。その前に護とお風呂に入る? あ、ええととりあえずコーヒーとか・・・」
ガタガタと音を立てて椅子から立ち上がろうとするのを強引に押さえつけ、ヒル魔はまもりの顎を捕らえると妙な体勢で唇を奪った。
「んー! んんーっ!!」
ばたばたと藻掻くのを子供達は不安そうに眺めるしかない。
もしお父さんがお母さんをいじめるようだったら、と妖介が仲裁に入ろうとするが、それをアヤが止める。
どうして、という顔をする妖介の前で、アヤは指さした。
その先を辿れば、楽しそうな父親の顔と、真っ赤になってこちらを見ている母親の顔。
「こっ、子供達の前で!!」
「サアテ姉崎サンに質問デス。夫である俺のどこを好きになったんでショウカ?」
「え!? え、えええ!?」
「俺は即答だったぞ。なあ、アヤ」
そう言われ、まもりが視線を向けた先でアヤはこくりと頷いた。
「お父さんはお母さんの全部が好きだって」
「きゃー! きゃー!! 何子供に恥ずかしい事言ってるのー!?」
「事実だろ。それよりテメェが子供に即答できないっつー方がいただけねぇナァ」
ぐい、とまもりを強引に抱き上げたヒル魔に子供たちは歓声を上げ、まもりは悲鳴を上げる。
「「「すごーい!」」」
「きゃー!?」
「オシオキが必要だよナァ?」
それにまもりはさーっと青ざめる。
それを聞いて子供達は目を見開き、ヒル魔の足下を取り囲んだ。
「お父さん、お母さん怒るの!?」
「おかーさんはわるくないよ!」
「おとうさんおこっちゃヤダー!」
わーわーと騒ぐ子供達にヒル魔は取り合わない。
「テメェらはもう寝ろ」
「え、でも護はおふろに入ってない・・・」
妖介が言いつのろうとしたが。
「一日入らなくても死なねぇよ。母さんが父さんのどこを好きかもう一回確認する方が大事だしナァ」
「そうなの?」
アヤがまもりを見つめる。
子供達に心配かけまいとまもりは内心の動揺はさておいて、にっこりと笑って見せた。
「そ、そうよ。お母さんはお父さんと大事なお話しするから、三人は先に寝ててね」
「おとーさん、おかーさんいじめない?」
「いじめねぇよ」
おら行け、と言われて子供達は渋々部屋へと向かう。
子供達は後ろ髪を引かれるように振り返りながらリビングを後にした。
それを見届けてからヒル魔は寝室へと冷や汗を掻いているまもりを運んでいき、意気揚々と扉の鍵を閉めたのだった。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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