旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
月の美しいその夜。
不意に目が覚めたまもりは、隣のヒル魔を起こさぬよう気をつけて身なりを軽く整え、廊下に出た。
喉が渇いたのだ。
普段であれば夜に目が覚めることなどないので、非常に珍しいことだった。
廊下から見上げる月は満月。
ちょうど中天にかかり、その明るさに瞳を細める。
「・・・まもりさん?」
「え?」
見れば廊下に雪光が立っていた。
屋敷を管理する雪光は当然のことながら気配に聡い。
まもりは慌てて謝った。
「あ、ごめんなさい。起こした?」
「いえ、僕は眠りませんから。・・・それよりも、どうされました?」
お加減でも悪いんですか、と聞かれてまもりは笑って手を振る。
「違うわ。ちょっと喉が渇いて」
「枕元に湯冷ましを置いておきませんでした?」
「あ」
まもりは目を見開く。その様子に雪光は苦笑した。
「・・・まあ、普段からまもりさんはあまりお飲みになりませんからね」
いつも湯冷ましを口にするのはヒル魔ばかりで、まもりはもし飲むとしてもヒル魔から口移しで流し込まれることばかり。
思い出して僅かにまもりは頬を染める。
「すっかり忘れていたわ」
でも、とまもりは空を見上げて微笑みを浮かべる。
「おかげでこんなに綺麗なお月様を見られたし、よかったわ」
「そうですね」
雪光は笑って、どこからともなく座布団を取り出した。
「よろしければこちらにお水をお持ちしますから、お月見しながらお飲みになりませんか?」
それともお酒にしましょうか、と言われてまもりは笑って首を振る。
「じゃあせっかくだし、お水をいただけるかしら」
「はい、わかりました」
雪光も笑って姿を消した。
程なく戻ってきた雪光は、手に盆を持っていた。
「え? それ・・・」
「せっかくなので、出してみました」
そこには様々な大きさや形の硝子の器。
ぐい呑みから湯呑みほどの大きさのものまで、いくつもある。
見たことはあったが、あまり一般的ではない器のため高級品なのだといつだったか聞いたことがある。
「せっかくの満月ですから」
それらすべてに水を満たして、雪光は笑う。
「?」
まもりには湯呑みに入ったよく冷えた井戸水を差し出し、自らも縁側に座る。
廊下に直に並べられた器に月光が差し込むと。
「うわあ・・・綺麗ね」
「そうでしょう?」
月の光を浴びて、硝子がきらきらと光る。
弾かれた光は廊下に障子に天井にと金銀砂子のように煌めく。
僅かな風にも水面が揺れ、光が踊る。
「日の光とはまた違った趣でしょう?」
「そうね」
水を飲みながらまもりは空を見上げる。
「『西』では月を見てお酒を飲んだりするお月見はないのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。月は人々を狂わせるから見てはいけないんですって」
まもりは薄く笑って、瞳を伏せる。
思い出すのは、何一つ代わり映えのない、一人で暮らしていた『西』のこと。
<続>
不意に目が覚めたまもりは、隣のヒル魔を起こさぬよう気をつけて身なりを軽く整え、廊下に出た。
喉が渇いたのだ。
普段であれば夜に目が覚めることなどないので、非常に珍しいことだった。
廊下から見上げる月は満月。
ちょうど中天にかかり、その明るさに瞳を細める。
「・・・まもりさん?」
「え?」
見れば廊下に雪光が立っていた。
屋敷を管理する雪光は当然のことながら気配に聡い。
まもりは慌てて謝った。
「あ、ごめんなさい。起こした?」
「いえ、僕は眠りませんから。・・・それよりも、どうされました?」
お加減でも悪いんですか、と聞かれてまもりは笑って手を振る。
「違うわ。ちょっと喉が渇いて」
「枕元に湯冷ましを置いておきませんでした?」
「あ」
まもりは目を見開く。その様子に雪光は苦笑した。
「・・・まあ、普段からまもりさんはあまりお飲みになりませんからね」
いつも湯冷ましを口にするのはヒル魔ばかりで、まもりはもし飲むとしてもヒル魔から口移しで流し込まれることばかり。
思い出して僅かにまもりは頬を染める。
「すっかり忘れていたわ」
でも、とまもりは空を見上げて微笑みを浮かべる。
「おかげでこんなに綺麗なお月様を見られたし、よかったわ」
「そうですね」
雪光は笑って、どこからともなく座布団を取り出した。
「よろしければこちらにお水をお持ちしますから、お月見しながらお飲みになりませんか?」
それともお酒にしましょうか、と言われてまもりは笑って首を振る。
「じゃあせっかくだし、お水をいただけるかしら」
「はい、わかりました」
雪光も笑って姿を消した。
程なく戻ってきた雪光は、手に盆を持っていた。
「え? それ・・・」
「せっかくなので、出してみました」
そこには様々な大きさや形の硝子の器。
ぐい呑みから湯呑みほどの大きさのものまで、いくつもある。
見たことはあったが、あまり一般的ではない器のため高級品なのだといつだったか聞いたことがある。
「せっかくの満月ですから」
それらすべてに水を満たして、雪光は笑う。
「?」
まもりには湯呑みに入ったよく冷えた井戸水を差し出し、自らも縁側に座る。
廊下に直に並べられた器に月光が差し込むと。
「うわあ・・・綺麗ね」
「そうでしょう?」
月の光を浴びて、硝子がきらきらと光る。
弾かれた光は廊下に障子に天井にと金銀砂子のように煌めく。
僅かな風にも水面が揺れ、光が踊る。
「日の光とはまた違った趣でしょう?」
「そうね」
水を飲みながらまもりは空を見上げる。
「『西』では月を見てお酒を飲んだりするお月見はないのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。月は人々を狂わせるから見てはいけないんですって」
まもりは薄く笑って、瞳を伏せる。
思い出すのは、何一つ代わり映えのない、一人で暮らしていた『西』のこと。
<続>
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鳥(とり)
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女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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