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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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華氏97.7

(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
ヒル魔に、右腕が治った、と言われたときにまもりは本当にこの人は人間なのかしら、と胡乱な目で彼を見た。
「三週間よ、三週間! たったそれだけで治るなんてどんな身体してるの!?」
「気の持ちようだ」
「それにしたって!」
決勝は明日。それでもやるべきことはまだ、ある。
文句は言いながら、部室で二人残って、向かい合って作業していた。
勿論、口を動かしながらも手は止まらない。
帝黒学園という、とんでもない強敵相手に戦うには色々と対策を練らないといけない。
敵が一チームなので今までの複数、どこが勝ち上がってきてもいいように対処するのとは訳が違う。
関東のオールスターがコーチとなってくれたおかげで地力が底上げされたとはいえ、まだまだ実力差は隔たっている。その最後の最新情報を精査し、ギリギリまで二人は準備を続けていた。
たった一チーム、されどいままでのどこよりも強大な相手を倒すためには綿密な計画が必要になる。
ましてや関東ではお目見えしていないような運動能力の者も多々いるのである。
情報を隠すことなく全てをさらけ出して尚、泰然とした様子は『全ての始まりで、全ての頂点』と呼ばれるにふさわしい。
「・・・まあ、人間じゃないかも、っていうのなら帝黒学園の選手の方が多いかもね」
ぴらりと書類を一枚取り上げ、データを読む。超高校生級、というメンバーばかりがずらりと揃っていた。
「さらりと人を人外扱いしてるんじゃねぇよ」
「あら悪魔でしょ」
「マアヒドイ」
無駄口を叩く暇があるなら手を動かせ、というのは仕事が遅い者に対する苦言の定番だが、彼ら二人に限ってはこの会話は邪魔にならない。
他愛ない会話を続けながら書類を書いていたまもりは、不意に手を止めた。
「・・・っくしゅん!」
ず、と鼻を啜る。
二人しかいない部室は冷えてきていて、いくら暖房を入れていてもコンクリ打ちっ放しの床から響く寒さは拭いきれない。
「ああもう、寒い!」
かといってコーヒーや紅茶をがぶ飲みしていてはすぐにトイレに行きたくなってしまう。
部室にはトイレがないので、トイレに行くために外に出る事を考えると容易く口を付けるのも躊躇われた。
冬の暗い中で校舎なり体育館なりのトイレに行くなんて怖いし寒いしで避けたいところだ。
けれどやっぱり寒い。
ヒル魔は平然としているが、外は雪まで降っているのだ。
東京でこの時期、ここまで雪が降るなんて通常ありえない。
身震いするような寒さだ。
指先がかじかみ始めているようで、まもりは指を握ったり開いたりする。
それをちらりと見てヒル魔はにやりと笑う。
「脂肪は冷えるんデスヨネ」
「適度な脂肪なら防寒になるんですっ!」
「テメェの脂肪が今適度とやらなら、俺より寒くないはずだナァ」
「・・・う~~~」
唸るまもりにヒル魔は意地悪く笑うばかり。
「カイロ使えばいいだろ」
「・・・セナと鈴音ちゃんにあげちゃった」
予想外の寒さにがちがちと歯の根を慣らしているのがあまりに可哀想で、ついカイロを渡してしまったのだ。
生憎とまもりが常備していたホッカイロはそれで終わってしまった。
目の前の男がカイロを常備しているとは到底思えず、まもりは手をさすった。
「それでテメェが風邪引いちゃ世話ねぇな」
「セナが本番で風邪引いて出られなかったら困るのヒル魔くんでしょ」
それを聞いてヒル魔がぴんと片眉を上げる。
「オイ」
「何?」
ちょいちょい、とヒル魔がまもりを指で招く。
小首を傾げながらまもりは立ち上がった。
「手ェ貸せ」
「? はい」
ヒル魔の右手がするりとまもりのそれを躊躇いなく掴んだ。
「本当に冷てぇな」
そのまま両手でまもりの手を包むと、ヒル魔はハー、と息を吹きかけた。
「っ」
硬直するまもりの手を、ごしごしと擦って暖を取る。
「・・・な、なん・・・」
普段の彼ならあり得ない行動に、まもりは言葉を失う。
真っ赤になったまもりの手をぱ、と放してヒル魔はニヤニヤと笑った。
「暖まっただろ」
本来その程度では完全に暖まるはずもないのだが、頭に血が上った状態のまもりはこくこくと無言で頷いて自席に慌てて戻る。
もう寒さなんて感じない。それよりも顔が熱くて仕方なかった。
まもりが覚束ない手つきでガタガタと音を立てて椅子に座るのに、喉の奥で笑いながらヒル魔は作業を再開した。



***
最近高校生の二人を書いてなかったのでリハビリリハビリ。たまーに不意打ちで甘いような事をされて目を白黒するまもりちゃんを見て楽しそうなヒル魔さん、という構図が好きです。
タイトルの華氏97.7≒摂氏36.5です。
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