旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
夕方近くなってきて、混み合う商店街。
私が買い出しに行こうとしたらたまたまこちらに用事がある、というコータローが着いてきた。
デートみたいだ、とはしゃいでいたコータローを見て、なぜか更に着いてきた赤羽と私の三人で人混みを歩く。
「なんでお前まで着いてくるんだよ! せっかくのデートだったのによ!」
「フー・・・こちらにいいギターを置く店があると聞いたのでね」
「一人で行けよ! スマートじゃねぇな!!」
「いいじゃないか。方向が一緒なんだから」
さすがにギターは持っていないけれど、持っていたらきっとあの返事代わりのよく判らない音を奏でたことだろう。
「もう・・・喧嘩すると置いていくわよ?」
なんだかんだで仲が良くなったような二人に、私は肩をすくめてさっさと歩く。
慌てて着いてくる二人に、こっそりと口角をあげる。
チームメイトが仲良しならいい。ましてや水と油みたいに反発していたこの二人なら尚更。
「なあジュリ、その店ってどこなんだよ」
「フー・・・あれじゃないのかい?」
「だからなんでお前が答えるんだよ!!」
怒るコータローは置いておいて、私は赤羽の示した方の店を見る。
ああ、あの店だ、間違いない。
「しっかし、近所でも通販でもいいじゃねぇか。なんでここまで買い出し?」
「入荷が間に合わなかったの。量があるし通販で買うから、今日はそれが届くまでのつなぎ分よ」
「へー」
ずらずらと書かれた消耗品リスト。でも量は大したことがないから、一人でも平気。
でも今日は荷物持ちが二人もいるんだから、楽だわ。
「・・・あれ?」
コータローがふと視線を向ける。私もつられてそちらを見れば、そこには特徴的に逆立った金髪。
「ヒル魔だな」
赤羽が言う。その側には茶色い髪の女の子。主務兼マネージャーと選手紹介もされた姉崎まもりちゃんだ。
「何だ? あいつら、デートか?」
「デート・・・にしては雰囲気が違うわよ」
二人は制服でリストを片手に探しながら駕籠に次々と消耗品を投げ込んでいく。
「俺たちと同じで、買い出しだろう」
そうとしか見えない。それにしても、泥門からもこの店は遠いはずだ。
なんでこんなところに、と思いながら見ていたら、ぱちりと目があった。
うわ、青い目。
初めて間近で見るその綺麗な色に私は引き込まれてしまった。
「・・・あの、盤戸のマネージャーさんですよね?」
にっこりと笑われて、私も笑顔になる。
「そうです。泥門の、姉崎さん・・・よね?」
「わ! 覚えていて下さってるんですか?」
嬉しい、とにこにこ笑う彼女は、文句なく可愛くて。私は同じ女の子ながら見惚れてしまう。
簡単に自己紹介して、同い年だし名前で呼んで、敬語はなしね、という話をしていたらその声を聞きつけたらしくひょこりと金髪が顔を出した。
「なにやってんだ、糞マネ」
後ろからヒル魔がやってくる。私と、その後ろの男二人を見てにやりと笑った。
「久しぶりだな、ヒル魔」
「おー。テメェらも買い出しか」
「なんでキャプテン自ら買い出しに来てるんだよ」
男連中たちは三人で固まって世間話に興じ始めた。
「自分で見たいものがあるからって着いてきたの。一人でもいいって言ってるのに」
もう、と肩をすくめるまもりちゃんに私は笑ってしまった。
ヒル魔の意図はよくわかった。彼が着いてきたのは、いわゆる虫除けなのだろう。
こんなに可愛い子が慣れない人混みを一人で歩いていたら、そりゃあナンパが酷くて帰ってこられなくなること請け合いだ。
「ジュリちゃんのところは赤羽くんとコータローくんの二人なのね」
「ええ。私も最初は一人で行くつもりだったんだけど・・・」
なんでか着いてきた、という下りでまもりちゃんも笑った。お互い荷物持ちには困らないしいいよね、という話になる。
会計をすませ、荷物をまとめているとヒル魔がふらりとやって来た。後ろからコータローと赤羽も着いてくる。
荷物は全て男性陣の腕に収まった。
「・・・オイ糞マネ、そろそろ行くぞ」
「あ、うん。じゃあ、また!」
「ええ」
店の前で手を振って別れようとした私の背後から、腕が伸びた。
その腕は既に前を向いているまもりちゃんの肩に向かっていて。
指先が触れる直前、別の腕に阻まれる。ヒル魔の鋭い視線が背後に向けられた。
受け止められた赤羽はしれっと腕を引く。
「・・・ヒル魔くん?」
「何でもねぇ。ホレ、さっさと歩け」
「ちょ、ちょっと! 腕引っ張らないで、ちょっと!」
何事もなかったように足早に歩き去る二人を呆然と見送って、腕を伸ばした男を振り返る。
「・・・なに、やってるの、赤羽」
こんなちょっかいだすところ、初めて見た。
「やっぱりあの二人、付き合ってるんじゃねぇの」
「フー・・・しかし今のところ、音楽性が合ってないようだ」
「音楽性関係ねぇよ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人に、やっと理解した。
単なる悪戯だ。しかしあの、マシンガン片手に歩く男になんて大胆なことを。
「さっき散々あの子のことじろじろ見たり褒めたりしたんだけど、ヒル魔のヤツただニヤニヤしてるだけで全然動揺しねぇんだよ」
「何を期待してたの」
「整いすぎた旋律が乱されるところは見てみたいじゃないか」
「二人して動揺するヒル魔が見たかった、ってこと? バッカみたい」
コータローだけならまだしも、なんで赤羽まで。
結局男の子っていつまでも子供だって事かしら。
ため息をつきながら帰ろうと踵を返した途端、背後でなにか怪しい気配。
「・・・何?」
振り返ると赤羽の腕をコータローが掴んでいる。
「フー・・・」
「フー、じゃねぇよ! 油断も隙もねぇ!!」
「もう、いい加減にしなさいよ。帰るわよ?」
私はこれ以上付き合っていられない、と足早に人混みを歩き出した。
視線の先にヒル魔とまもりちゃんの姿がある。
なんだかんだで仲がよさそうで、羨ましいわ。
背後から聞こえてくる二人の騒ぎ声に、私は頭を押さえてもう一度ため息をついた。
***
5/17 18:14 こんにちは!~様からいただきましたリクエスト『他校のメンバー(マネ含む)から見たヒルまも』でした。一度も書いていない面々を書こうとこの三人に。最初はコタジュリだけだったのに、赤羽混ぜたらおかしいことに(笑)赤羽はジュリに惚れてるんじゃなく、単にコータローをからかいたいだけです。ヒル魔さんは他人がまもりちゃんに直接手を出そうとしたら怒りますが、見る分には怒らない。むしろ見せびらかす男、というのが書きたかったんですが・・・あれ・・・? リクエストありがとうございましたー!
私が買い出しに行こうとしたらたまたまこちらに用事がある、というコータローが着いてきた。
デートみたいだ、とはしゃいでいたコータローを見て、なぜか更に着いてきた赤羽と私の三人で人混みを歩く。
「なんでお前まで着いてくるんだよ! せっかくのデートだったのによ!」
「フー・・・こちらにいいギターを置く店があると聞いたのでね」
「一人で行けよ! スマートじゃねぇな!!」
「いいじゃないか。方向が一緒なんだから」
さすがにギターは持っていないけれど、持っていたらきっとあの返事代わりのよく判らない音を奏でたことだろう。
「もう・・・喧嘩すると置いていくわよ?」
なんだかんだで仲が良くなったような二人に、私は肩をすくめてさっさと歩く。
慌てて着いてくる二人に、こっそりと口角をあげる。
チームメイトが仲良しならいい。ましてや水と油みたいに反発していたこの二人なら尚更。
「なあジュリ、その店ってどこなんだよ」
「フー・・・あれじゃないのかい?」
「だからなんでお前が答えるんだよ!!」
怒るコータローは置いておいて、私は赤羽の示した方の店を見る。
ああ、あの店だ、間違いない。
「しっかし、近所でも通販でもいいじゃねぇか。なんでここまで買い出し?」
「入荷が間に合わなかったの。量があるし通販で買うから、今日はそれが届くまでのつなぎ分よ」
「へー」
ずらずらと書かれた消耗品リスト。でも量は大したことがないから、一人でも平気。
でも今日は荷物持ちが二人もいるんだから、楽だわ。
「・・・あれ?」
コータローがふと視線を向ける。私もつられてそちらを見れば、そこには特徴的に逆立った金髪。
「ヒル魔だな」
赤羽が言う。その側には茶色い髪の女の子。主務兼マネージャーと選手紹介もされた姉崎まもりちゃんだ。
「何だ? あいつら、デートか?」
「デート・・・にしては雰囲気が違うわよ」
二人は制服でリストを片手に探しながら駕籠に次々と消耗品を投げ込んでいく。
「俺たちと同じで、買い出しだろう」
そうとしか見えない。それにしても、泥門からもこの店は遠いはずだ。
なんでこんなところに、と思いながら見ていたら、ぱちりと目があった。
うわ、青い目。
初めて間近で見るその綺麗な色に私は引き込まれてしまった。
「・・・あの、盤戸のマネージャーさんですよね?」
にっこりと笑われて、私も笑顔になる。
「そうです。泥門の、姉崎さん・・・よね?」
「わ! 覚えていて下さってるんですか?」
嬉しい、とにこにこ笑う彼女は、文句なく可愛くて。私は同じ女の子ながら見惚れてしまう。
簡単に自己紹介して、同い年だし名前で呼んで、敬語はなしね、という話をしていたらその声を聞きつけたらしくひょこりと金髪が顔を出した。
「なにやってんだ、糞マネ」
後ろからヒル魔がやってくる。私と、その後ろの男二人を見てにやりと笑った。
「久しぶりだな、ヒル魔」
「おー。テメェらも買い出しか」
「なんでキャプテン自ら買い出しに来てるんだよ」
男連中たちは三人で固まって世間話に興じ始めた。
「自分で見たいものがあるからって着いてきたの。一人でもいいって言ってるのに」
もう、と肩をすくめるまもりちゃんに私は笑ってしまった。
ヒル魔の意図はよくわかった。彼が着いてきたのは、いわゆる虫除けなのだろう。
こんなに可愛い子が慣れない人混みを一人で歩いていたら、そりゃあナンパが酷くて帰ってこられなくなること請け合いだ。
「ジュリちゃんのところは赤羽くんとコータローくんの二人なのね」
「ええ。私も最初は一人で行くつもりだったんだけど・・・」
なんでか着いてきた、という下りでまもりちゃんも笑った。お互い荷物持ちには困らないしいいよね、という話になる。
会計をすませ、荷物をまとめているとヒル魔がふらりとやって来た。後ろからコータローと赤羽も着いてくる。
荷物は全て男性陣の腕に収まった。
「・・・オイ糞マネ、そろそろ行くぞ」
「あ、うん。じゃあ、また!」
「ええ」
店の前で手を振って別れようとした私の背後から、腕が伸びた。
その腕は既に前を向いているまもりちゃんの肩に向かっていて。
指先が触れる直前、別の腕に阻まれる。ヒル魔の鋭い視線が背後に向けられた。
受け止められた赤羽はしれっと腕を引く。
「・・・ヒル魔くん?」
「何でもねぇ。ホレ、さっさと歩け」
「ちょ、ちょっと! 腕引っ張らないで、ちょっと!」
何事もなかったように足早に歩き去る二人を呆然と見送って、腕を伸ばした男を振り返る。
「・・・なに、やってるの、赤羽」
こんなちょっかいだすところ、初めて見た。
「やっぱりあの二人、付き合ってるんじゃねぇの」
「フー・・・しかし今のところ、音楽性が合ってないようだ」
「音楽性関係ねぇよ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人に、やっと理解した。
単なる悪戯だ。しかしあの、マシンガン片手に歩く男になんて大胆なことを。
「さっき散々あの子のことじろじろ見たり褒めたりしたんだけど、ヒル魔のヤツただニヤニヤしてるだけで全然動揺しねぇんだよ」
「何を期待してたの」
「整いすぎた旋律が乱されるところは見てみたいじゃないか」
「二人して動揺するヒル魔が見たかった、ってこと? バッカみたい」
コータローだけならまだしも、なんで赤羽まで。
結局男の子っていつまでも子供だって事かしら。
ため息をつきながら帰ろうと踵を返した途端、背後でなにか怪しい気配。
「・・・何?」
振り返ると赤羽の腕をコータローが掴んでいる。
「フー・・・」
「フー、じゃねぇよ! 油断も隙もねぇ!!」
「もう、いい加減にしなさいよ。帰るわよ?」
私はこれ以上付き合っていられない、と足早に人混みを歩き出した。
視線の先にヒル魔とまもりちゃんの姿がある。
なんだかんだで仲がよさそうで、羨ましいわ。
背後から聞こえてくる二人の騒ぎ声に、私は頭を押さえてもう一度ため息をついた。
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5/17 18:14 こんにちは!~様からいただきましたリクエスト『他校のメンバー(マネ含む)から見たヒルまも』でした。一度も書いていない面々を書こうとこの三人に。最初はコタジュリだけだったのに、赤羽混ぜたらおかしいことに(笑)赤羽はジュリに惚れてるんじゃなく、単にコータローをからかいたいだけです。ヒル魔さんは他人がまもりちゃんに直接手を出そうとしたら怒りますが、見る分には怒らない。むしろ見せびらかす男、というのが書きたかったんですが・・・あれ・・・? リクエストありがとうございましたー!
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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