旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
あっちー、と叫んだのは覚えている。
久しぶりに練習が休みで、なんだか川を見たくて、せっかくだからと練習がてら走ってここまで来てみたのだ。
そうしたら泥門高校が近くにあって、こりゃいいや、セナたちの顔見に行こう、と思って。
走っていたのだ。
かなり長い距離、水も飲まないで。
だから、汗だくになってアメフト部の部室を探していて。
見慣れた茶色い頭のマネージャーさんを見つけたので、声を掛けようとして。
「おー・・・」
ふらりと視界が揺れて。
「きゃあああ!!」
気が付いたら、地面に倒れていた。驚いたマネージャーさんの顔に、しまったなぁ、と思ったけれど声が出なかった。
「・・・大丈夫?」
「・・・サンキューっす」
あの後、騒ぎを聞きつけたアメフト部の部員たちが部室まで運んでくれた。
生憎と俺は背がでかすぎて、横になれるのは床だけだったけど、綺麗に掃除されていたので気にならない。
足下にタオルを入れて高く上げられ、頭と後頭部に濡れタオル。打ち付けた腕には湿布もして貰った。
「もう、こんなに暑いのに巨深高校からここまで走ってくるなんて・・・危ないでしょう」
飲める? とスポーツドリンクが入ったボトルを渡される。ストローで吸い上げると、冷たい水分が喉を通って、生き返ったような気分になった。
濡れタオルを少し持ち上げると、不安そうな綺麗な青い瞳。
「驚かしちゃって、すんません」
「それは大丈夫よ。こっちこそ叫んじゃってごめんなさいね」
ひんやりと冷たいコンクリートの床が身体の熱気を吸い取ってくれて気持ちいい。
「ちょっと・・・川が見たくなって」
「川?」
「うん。俺、水泳の選手やってたんだ」
「ああ、聞いたことがあるわ。すごく早かったんですってね」
「ンハッ」
綺麗な顔に見合った綺麗な声。こんなに綺麗な人がアメフト部のマネージャーだなんて、羨ましい。
いや、ウチのマネージャーもきれいっつーかかわいいけど、な。
「ね、名前なんて言うの?」
「名前? 私は姉崎まもりよ、水町健悟くん?」
くすくすと笑いながら彼女は俺の濡れタオルを替えてくれた。ちょっと温かったタオルがひんやりとしてまた気持ちがいい。
「もう少ししたら起きてもいいけど、まだ寝ててね」
取り替えたタオルを持って立ち上がる彼女の前で、部室の扉が開く。足を踏み出そうとして、俺を見てたたらを踏んだ。
「アァ?! なんだこの糞ウド!!」
「ちょっとヒル魔くん、巨深高校の水町くんよ、日射病で倒れたの!」
あ、ヒル魔か。見上げるとすごーく不機嫌そうな顔でこちらを見下ろしてる。
ンハッ、筧みたいだ。
「こんなヤツより仕事だ。ストップウォッチ持って来い」
「ちょっと待ってよ、もう少しここにいるわ」
「・・・アァ?」
「病人で、まして他校生よ? 不安でしょうが」
「そんなことしてるヒマがあるか!」
怒鳴られても彼女は一歩も引かない。へぇ、綺麗だけど芯も強いんだな・・・。
しばし睨み合った二人だが、ヒル魔が舌打ちと共に踵を返して扉を閉めたのでそこで終わった。
「・・・ごめんね?」
「いや、俺の方こそ・・・」
そろそろ起きあがれるかな、と思って見上げると、こちらを覗き込む目が潤んでいる。ずい、とそれを隠すようにまたボトルを押しつけられた。
「もう少し水分取った方がいいわ」
「サンキューっす」
ボトルのドリンクを飲みながら、俺はさっきの瞳の色を思い出していた。
あの色、どっかで見たことある。
・・・ああ、夕方の、プールの底から見上げた水面の色だ・・・。
きらきらと光って綺麗だけれど、薄暗くなりつつある空の色が混ざって、深い青になる。
「ねえ、まもりサン」
「・・・え?」
「ヒル魔のこと、好き?」
「なっ・・・!」
途端に真っ赤になるまもりサンに、俺はにへら、と笑った。
「あーやっぱり。判りやすっ」
「いや、ちょっ・・・違うわよっ!」
真っ赤になって照れて言いつのっても、それは意地を張ってるようにしか見えない。
俺、そういう女の子間近で見てるからよく知ってるんだよね。
「誰にも言ったりしないよ。ンハッ、こう見えて俺、口堅いんだよね~」
「・・・そうなの?」
不審そうな顔をされちゃったけど、これは本当。だって誰だって秘密は持ってるし、俺だってある。
でもそれを言いふらすのって友達に対して失礼だろ?
「さーて、大丈夫かな?」
俺は立ち上がる。一瞬立ちくらみがあったような気もするけど、それはすぐ収まった。
飲ませて貰ったボトルを手にして、まもりサンを振り返る。
「ねえ、これどこ置けばいい?」
「え? あ、その辺でいいわよ」
「ンハッ、じゃあここに置いとく!」
そして俺じゃ頭を打つ扉を慎重にくぐって、グラウンドへ向かう。
「あー! 水町、平気かー!?」
「無理しないで帰るときは電車使えよー!」
俺を見るなり泥門の連中はそんなことを言ってくる。
気がいいなあ、お前ら。大好きだ!
「おい糞ウド! テメェこっちに来て練習手伝え!!」
「オーケ~イ!」
ヒル魔が俺を呼ぶ。迷惑かけちゃったし、俺も練習に混ぜて貰って役に立つならいいや。
「ちょ、ちょっと、水町くん・・・!」
勇んでまもりサンの手を引いてグラウンドに向かっていくと、ヒル魔が一瞬俺をすごい目で睨んだ。
あ。
なーんだ。
ちゃんと両想いじゃないか。
でも知らないのは当人たちばかりっぽいかな。判りやすいし。
ふと遠くで『やー!』と聞いたことのある声が聞こえてきた。
鈴音っちだ。
彼女なら俺の疑問に答えてくれるんじゃなかろうか。目の前の悪魔を装った男は教えてくれそうにないし。
「・・・覚悟しろよ?」
よそ見をしていたらジャキンと音を立てて構えられたマシンガンが目の前に。
慌てて俺は掴んだままだったまもりサンの手を放し、首をすくめた。
***
5/17 23:54 まもりが~様リクエスト『まもりが蛭魔に片思いしているようで、実はほんのり両思い』+コメ様リクエスト『誰か(例えばセナ)に対して自覚ないor気付くのが遅いが、嫉妬しているヒル魔(ヒルまも恋人未満)』を強引にくっつけさせて頂きました。
今回のリクエスト企画に関して、なるべく書いたことのないキャラも書ければ絡めていこう、という自分設定がありまして、水町くんにご登場頂きました。きっと鈴音とも仲良しに違いないと思ってます。本当はヒル魔さんは水町くんのことを作中『水町』としか呼んでいないようなのですが、違和感があったので勝手に糞ウド呼ばわりさせてます。鳥にとっては意外に書きづらいです、水町くん。なんででしょう。
リクエストありがとうございましたー!!
久しぶりに練習が休みで、なんだか川を見たくて、せっかくだからと練習がてら走ってここまで来てみたのだ。
そうしたら泥門高校が近くにあって、こりゃいいや、セナたちの顔見に行こう、と思って。
走っていたのだ。
かなり長い距離、水も飲まないで。
だから、汗だくになってアメフト部の部室を探していて。
見慣れた茶色い頭のマネージャーさんを見つけたので、声を掛けようとして。
「おー・・・」
ふらりと視界が揺れて。
「きゃあああ!!」
気が付いたら、地面に倒れていた。驚いたマネージャーさんの顔に、しまったなぁ、と思ったけれど声が出なかった。
「・・・大丈夫?」
「・・・サンキューっす」
あの後、騒ぎを聞きつけたアメフト部の部員たちが部室まで運んでくれた。
生憎と俺は背がでかすぎて、横になれるのは床だけだったけど、綺麗に掃除されていたので気にならない。
足下にタオルを入れて高く上げられ、頭と後頭部に濡れタオル。打ち付けた腕には湿布もして貰った。
「もう、こんなに暑いのに巨深高校からここまで走ってくるなんて・・・危ないでしょう」
飲める? とスポーツドリンクが入ったボトルを渡される。ストローで吸い上げると、冷たい水分が喉を通って、生き返ったような気分になった。
濡れタオルを少し持ち上げると、不安そうな綺麗な青い瞳。
「驚かしちゃって、すんません」
「それは大丈夫よ。こっちこそ叫んじゃってごめんなさいね」
ひんやりと冷たいコンクリートの床が身体の熱気を吸い取ってくれて気持ちいい。
「ちょっと・・・川が見たくなって」
「川?」
「うん。俺、水泳の選手やってたんだ」
「ああ、聞いたことがあるわ。すごく早かったんですってね」
「ンハッ」
綺麗な顔に見合った綺麗な声。こんなに綺麗な人がアメフト部のマネージャーだなんて、羨ましい。
いや、ウチのマネージャーもきれいっつーかかわいいけど、な。
「ね、名前なんて言うの?」
「名前? 私は姉崎まもりよ、水町健悟くん?」
くすくすと笑いながら彼女は俺の濡れタオルを替えてくれた。ちょっと温かったタオルがひんやりとしてまた気持ちがいい。
「もう少ししたら起きてもいいけど、まだ寝ててね」
取り替えたタオルを持って立ち上がる彼女の前で、部室の扉が開く。足を踏み出そうとして、俺を見てたたらを踏んだ。
「アァ?! なんだこの糞ウド!!」
「ちょっとヒル魔くん、巨深高校の水町くんよ、日射病で倒れたの!」
あ、ヒル魔か。見上げるとすごーく不機嫌そうな顔でこちらを見下ろしてる。
ンハッ、筧みたいだ。
「こんなヤツより仕事だ。ストップウォッチ持って来い」
「ちょっと待ってよ、もう少しここにいるわ」
「・・・アァ?」
「病人で、まして他校生よ? 不安でしょうが」
「そんなことしてるヒマがあるか!」
怒鳴られても彼女は一歩も引かない。へぇ、綺麗だけど芯も強いんだな・・・。
しばし睨み合った二人だが、ヒル魔が舌打ちと共に踵を返して扉を閉めたのでそこで終わった。
「・・・ごめんね?」
「いや、俺の方こそ・・・」
そろそろ起きあがれるかな、と思って見上げると、こちらを覗き込む目が潤んでいる。ずい、とそれを隠すようにまたボトルを押しつけられた。
「もう少し水分取った方がいいわ」
「サンキューっす」
ボトルのドリンクを飲みながら、俺はさっきの瞳の色を思い出していた。
あの色、どっかで見たことある。
・・・ああ、夕方の、プールの底から見上げた水面の色だ・・・。
きらきらと光って綺麗だけれど、薄暗くなりつつある空の色が混ざって、深い青になる。
「ねえ、まもりサン」
「・・・え?」
「ヒル魔のこと、好き?」
「なっ・・・!」
途端に真っ赤になるまもりサンに、俺はにへら、と笑った。
「あーやっぱり。判りやすっ」
「いや、ちょっ・・・違うわよっ!」
真っ赤になって照れて言いつのっても、それは意地を張ってるようにしか見えない。
俺、そういう女の子間近で見てるからよく知ってるんだよね。
「誰にも言ったりしないよ。ンハッ、こう見えて俺、口堅いんだよね~」
「・・・そうなの?」
不審そうな顔をされちゃったけど、これは本当。だって誰だって秘密は持ってるし、俺だってある。
でもそれを言いふらすのって友達に対して失礼だろ?
「さーて、大丈夫かな?」
俺は立ち上がる。一瞬立ちくらみがあったような気もするけど、それはすぐ収まった。
飲ませて貰ったボトルを手にして、まもりサンを振り返る。
「ねえ、これどこ置けばいい?」
「え? あ、その辺でいいわよ」
「ンハッ、じゃあここに置いとく!」
そして俺じゃ頭を打つ扉を慎重にくぐって、グラウンドへ向かう。
「あー! 水町、平気かー!?」
「無理しないで帰るときは電車使えよー!」
俺を見るなり泥門の連中はそんなことを言ってくる。
気がいいなあ、お前ら。大好きだ!
「おい糞ウド! テメェこっちに来て練習手伝え!!」
「オーケ~イ!」
ヒル魔が俺を呼ぶ。迷惑かけちゃったし、俺も練習に混ぜて貰って役に立つならいいや。
「ちょ、ちょっと、水町くん・・・!」
勇んでまもりサンの手を引いてグラウンドに向かっていくと、ヒル魔が一瞬俺をすごい目で睨んだ。
あ。
なーんだ。
ちゃんと両想いじゃないか。
でも知らないのは当人たちばかりっぽいかな。判りやすいし。
ふと遠くで『やー!』と聞いたことのある声が聞こえてきた。
鈴音っちだ。
彼女なら俺の疑問に答えてくれるんじゃなかろうか。目の前の悪魔を装った男は教えてくれそうにないし。
「・・・覚悟しろよ?」
よそ見をしていたらジャキンと音を立てて構えられたマシンガンが目の前に。
慌てて俺は掴んだままだったまもりサンの手を放し、首をすくめた。
***
5/17 23:54 まもりが~様リクエスト『まもりが蛭魔に片思いしているようで、実はほんのり両思い』+コメ様リクエスト『誰か(例えばセナ)に対して自覚ないor気付くのが遅いが、嫉妬しているヒル魔(ヒルまも恋人未満)』を強引にくっつけさせて頂きました。
今回のリクエスト企画に関して、なるべく書いたことのないキャラも書ければ絡めていこう、という自分設定がありまして、水町くんにご登場頂きました。きっと鈴音とも仲良しに違いないと思ってます。本当はヒル魔さんは水町くんのことを作中『水町』としか呼んでいないようなのですが、違和感があったので勝手に糞ウド呼ばわりさせてます。鳥にとっては意外に書きづらいです、水町くん。なんででしょう。
リクエストありがとうございましたー!!
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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【裏について】
閉鎖しました。
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