旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
炉心溶融
(ヒルまも)
一周年記念+遅ればせながらバレンタインデーということで、DLFです。
期間は二月一杯です。アドレス部分までをコピペしてお持ち下さい。
肺腑期間は終了しました。
お持ち帰り下さった方ありがとうございました!
(ヒルまも)
期間は二月一杯です。アドレス部分までをコピペしてお持ち下さい。
肺腑期間は終了しました。
お持ち帰り下さった方ありがとうございました!
+ + + + + + + + + +
早朝の部室に、人影。
ヒル魔は椅子に座り、手にしていた細長い箱を見る。
黒のそれには、細く赤いリボンが巻かれている。
いかにもなそれは、バレンタインデーに世間を飛び交うチョコレート。
そんなものを手にしていると知れたら、周囲は一体どんな悪巧みにそれが使われるのか、と青くなるだろう。
がらりと部室の扉が開く。
「おはよう、ヒル魔くん。相変わらず早いのね」
にこりと笑みを浮かべるのはマネージャーである姉崎まもりだ。
手には大きな紙袋を提げている。
その中身が容易に推測できて、ヒル魔が半目になった。
「糞甘臭ェ」
「バレンタインデーだもん、しょうがないでしょ」
つん、と取り合わず、まもりはいそいそとチョコレートを取り出す。
「セナでしょ、モン太くん、小結くん、十文字くん、黒木くん、戸叶くんに瀧くん・・・」
鈴音ちゃんに友チョコも、と並べるのを見ているだけで頭が痛くなってくる。
こいつはどれだけ糖分をばらまけば気が済むのだろうか、と嘆息したくなるのも無理はないと思う。
恋人同士という間柄であっても、言うだけ無駄だと知っているからそれを止めることはしない。
「ンなもん広げるな」
「今日は大手を振って甘い物食べられるだもん」
「テメェが大手を振らないで甘い物喰わない日があるか」
ケッ、と短く吐き捨てるが、甘いチョコレートの匂いにまもりの機嫌は上向きのままだ。
「あ、もしかしてヒル魔くん、嫉妬?」
うふふ、とまもりは笑みを深める。
「みんな義理チョコよ」
「ハイハイソウデスカ」
それに適当な返事をして、ヒル魔はまもりが用意したチョコレートの包みを見る。
どれもこれも丁寧に包まれた、見るからに手作りのモノ。
恋愛に縁のない一部の部員達にとって、まもりはまさしく救いの女神のように見えるのだろう。
いかに丁寧に作られていても、恋情の籠もらない砂糖と油分の固まりなんぞ貰って嬉しいという気持ちが理解できないな、と内心独り言ちる。
「義理、ねぇ」
「あれ、ヒル魔くん・・・もしかして、本当にチョコ、欲しい?」
ぴん、とヒル魔の片眉が上がる。
「ンなもん寄越した瞬間にあそこに投げる」
そこにはゴミ箱。そうよね、とまもりは肩をすくめる。
それだけの間柄になるまで、短くとも密度の濃い時を過ごしてきているから。
こんなことだけで、気分を悪くすることもない。
ヒル魔は椅子を揺らしながら呼ぶ。
「糞マネ」
「なに?」
「たまには俺も流行に乗ってみようと思ってな」
「え?」
とん、とその手に押しつけられたのは、ヒル魔が最初から手にしていた細長い箱だった。
そのリボンに印字された店名に、まもりは目を見開く。
「これ! 有名なパティシエがバレンタインデー限定で売り出して即完売したっていう、あの超高級チョコ?!」
「的確な説明アリガトウゴザイマス」
これ一箱で一万円とかいう、全くもって金銭感覚の狂うシロモノだ。
「うわー・・・! え、これ貰っちゃっていいの!?」
まもりが喜色と同じくらいのとまどいを浮かべてヒル魔を見つめるが、彼はフンと鼻を鳴らした。
「俺が喰うと思うのか」
「思わない! けど、え、・・・ほんと、に?」
「今年は『逆チョコ』らしいからナァ」
にやりと笑うと、ヒル魔はがたんと立ち上がる。
「どこに行くの?」
「帰る」
「え?! な、なんで?!」
「テメェなあ、部室でさえ今この糞甘臭ェ状況なんだぞ。教室なんぞにいられるか」
嫌そうなヒル魔の声に、まもりは去年のことを思い出す。
教室中に飛び交う友チョコ義理チョコそこに紛れた本命チョコと、女達の嬌声と男達の視線の投げ合い。
不可思議な空気があそこにはある。確かに甘い物が嫌いなヒル魔には居心地が悪いだろう。
けれど。
「・・・ヒル魔くんなら、バレンタインデーの騒ぎも脅迫手帳のネタになる、とか言いそうなのに」
「糞奴隷どもからの報告と監視カメラで事足りる」
「監視カメラ?!」
そんなものまでセッティングしているのか、と呆れるまもりにヒル魔はにやりと笑って立ち上がる。
ヒル魔は鞄さえ持ってきていなかった。本当に今日はすぐ帰るつもりなのだろう。
それでも、まもりに今日この日にチョコレートを渡すためだけに来てくれたのだ。
「・・・ありがとう」
ふわりと笑ったまもりに、ヒル魔はひらりと片手を振りながら部室の扉を開く。
それは、暗号。
「えー・・・と。『ホワイトデーは、世間的に三倍返しが妥当だからな』・・・って」
まもりは手にしていた高級チョコを見下ろし、青ざめる。
「ひ、ヒル魔くん!? 私こんな高い物とか珍しい物の三倍なんてあげられないわよ!?」
叫んでも、ヒル魔は背を向けたまま高笑いをして歩み去ってしまう。
「どうしよう」
うっかり喜んでしまったが、ヒル魔がそれで済ませるわけがないと気づかなければならなかった。
さてどうしようか。
悩むまもりの耳が電子音を拾う。
携帯のメールだ。
開けばそこにある差出人の名は、ヒル魔で。
タイトルには『お困りデスネ』とある。
そうして、本文には。
『糞マネが難題に苦慮していらっしゃるようナノデ、ご相談に乗りマショウ。つきましては本日授業終了後速やかに、俺の家に来やがれ』
ただし甘味は持込禁止、とある。滅茶苦茶な文体がやはり彼らしい。
「・・・んもう、普通に遊びに来い、でいいのに・・・」
まもりは柔らかく苦笑を浮かべ、ヒル魔がくれた箱のリボンを解く。
他の部員が来る前に食べてしまおう。
今日は甘い物を持って帰ることは出来ないから。
一粒摘んで口に入れると、今まで食べたどんなチョコレートよりも甘く深い味がした。
「おいしい」
まもりは幸せそうに、とろりと笑み崩れた。
<了>
ヒル魔は椅子に座り、手にしていた細長い箱を見る。
黒のそれには、細く赤いリボンが巻かれている。
いかにもなそれは、バレンタインデーに世間を飛び交うチョコレート。
そんなものを手にしていると知れたら、周囲は一体どんな悪巧みにそれが使われるのか、と青くなるだろう。
がらりと部室の扉が開く。
「おはよう、ヒル魔くん。相変わらず早いのね」
にこりと笑みを浮かべるのはマネージャーである姉崎まもりだ。
手には大きな紙袋を提げている。
その中身が容易に推測できて、ヒル魔が半目になった。
「糞甘臭ェ」
「バレンタインデーだもん、しょうがないでしょ」
つん、と取り合わず、まもりはいそいそとチョコレートを取り出す。
「セナでしょ、モン太くん、小結くん、十文字くん、黒木くん、戸叶くんに瀧くん・・・」
鈴音ちゃんに友チョコも、と並べるのを見ているだけで頭が痛くなってくる。
こいつはどれだけ糖分をばらまけば気が済むのだろうか、と嘆息したくなるのも無理はないと思う。
恋人同士という間柄であっても、言うだけ無駄だと知っているからそれを止めることはしない。
「ンなもん広げるな」
「今日は大手を振って甘い物食べられるだもん」
「テメェが大手を振らないで甘い物喰わない日があるか」
ケッ、と短く吐き捨てるが、甘いチョコレートの匂いにまもりの機嫌は上向きのままだ。
「あ、もしかしてヒル魔くん、嫉妬?」
うふふ、とまもりは笑みを深める。
「みんな義理チョコよ」
「ハイハイソウデスカ」
それに適当な返事をして、ヒル魔はまもりが用意したチョコレートの包みを見る。
どれもこれも丁寧に包まれた、見るからに手作りのモノ。
恋愛に縁のない一部の部員達にとって、まもりはまさしく救いの女神のように見えるのだろう。
いかに丁寧に作られていても、恋情の籠もらない砂糖と油分の固まりなんぞ貰って嬉しいという気持ちが理解できないな、と内心独り言ちる。
「義理、ねぇ」
「あれ、ヒル魔くん・・・もしかして、本当にチョコ、欲しい?」
ぴん、とヒル魔の片眉が上がる。
「ンなもん寄越した瞬間にあそこに投げる」
そこにはゴミ箱。そうよね、とまもりは肩をすくめる。
それだけの間柄になるまで、短くとも密度の濃い時を過ごしてきているから。
こんなことだけで、気分を悪くすることもない。
ヒル魔は椅子を揺らしながら呼ぶ。
「糞マネ」
「なに?」
「たまには俺も流行に乗ってみようと思ってな」
「え?」
とん、とその手に押しつけられたのは、ヒル魔が最初から手にしていた細長い箱だった。
そのリボンに印字された店名に、まもりは目を見開く。
「これ! 有名なパティシエがバレンタインデー限定で売り出して即完売したっていう、あの超高級チョコ?!」
「的確な説明アリガトウゴザイマス」
これ一箱で一万円とかいう、全くもって金銭感覚の狂うシロモノだ。
「うわー・・・! え、これ貰っちゃっていいの!?」
まもりが喜色と同じくらいのとまどいを浮かべてヒル魔を見つめるが、彼はフンと鼻を鳴らした。
「俺が喰うと思うのか」
「思わない! けど、え、・・・ほんと、に?」
「今年は『逆チョコ』らしいからナァ」
にやりと笑うと、ヒル魔はがたんと立ち上がる。
「どこに行くの?」
「帰る」
「え?! な、なんで?!」
「テメェなあ、部室でさえ今この糞甘臭ェ状況なんだぞ。教室なんぞにいられるか」
嫌そうなヒル魔の声に、まもりは去年のことを思い出す。
教室中に飛び交う友チョコ義理チョコそこに紛れた本命チョコと、女達の嬌声と男達の視線の投げ合い。
不可思議な空気があそこにはある。確かに甘い物が嫌いなヒル魔には居心地が悪いだろう。
けれど。
「・・・ヒル魔くんなら、バレンタインデーの騒ぎも脅迫手帳のネタになる、とか言いそうなのに」
「糞奴隷どもからの報告と監視カメラで事足りる」
「監視カメラ?!」
そんなものまでセッティングしているのか、と呆れるまもりにヒル魔はにやりと笑って立ち上がる。
ヒル魔は鞄さえ持ってきていなかった。本当に今日はすぐ帰るつもりなのだろう。
それでも、まもりに今日この日にチョコレートを渡すためだけに来てくれたのだ。
「・・・ありがとう」
ふわりと笑ったまもりに、ヒル魔はひらりと片手を振りながら部室の扉を開く。
それは、暗号。
「えー・・・と。『ホワイトデーは、世間的に三倍返しが妥当だからな』・・・って」
まもりは手にしていた高級チョコを見下ろし、青ざめる。
「ひ、ヒル魔くん!? 私こんな高い物とか珍しい物の三倍なんてあげられないわよ!?」
叫んでも、ヒル魔は背を向けたまま高笑いをして歩み去ってしまう。
「どうしよう」
うっかり喜んでしまったが、ヒル魔がそれで済ませるわけがないと気づかなければならなかった。
さてどうしようか。
悩むまもりの耳が電子音を拾う。
携帯のメールだ。
開けばそこにある差出人の名は、ヒル魔で。
タイトルには『お困りデスネ』とある。
そうして、本文には。
『糞マネが難題に苦慮していらっしゃるようナノデ、ご相談に乗りマショウ。つきましては本日授業終了後速やかに、俺の家に来やがれ』
ただし甘味は持込禁止、とある。滅茶苦茶な文体がやはり彼らしい。
「・・・んもう、普通に遊びに来い、でいいのに・・・」
まもりは柔らかく苦笑を浮かべ、ヒル魔がくれた箱のリボンを解く。
他の部員が来る前に食べてしまおう。
今日は甘い物を持って帰ることは出来ないから。
一粒摘んで口に入れると、今まで食べたどんなチョコレートよりも甘く深い味がした。
「おいしい」
まもりは幸せそうに、とろりと笑み崩れた。
<了>
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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