旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「・・・へぇ」
阿含の声に不穏が混じる。けれどまもりは揺らがない。
「ヒル魔なんかのどこがいいんだ?」
「どこって」
「ただの凡人なのに?」
ヒル魔は見た目や頭の回転が人外のように見られがちだが、結局はただの人だ。
身体能力は凡人の域を出ず、それほど血の滲むような努力を絶えずし続けている。
けれど阿含は違う。彼は天才だ。誰もが彼を天才と褒めそやし、憎たらしく思っても無視なんて出来ない。
どちらに認められ、その傍らにいるのが幸せかなんて、一目瞭然だろう。
そう阿含は思うのに。
「ただの凡人、だからよ」
まもりは嫣然と笑ってみせる。
「確かに何でも出来る貴方は凄いわ。誰でも出来るわけではないし、誰にも真似できない才能だもの」
でも、と笑顔の質を変えてまもりは続ける。
「ヒル魔くんは自分に言い訳して、諦めたりしないから。欲しいモノに対しては一生懸命努力して、自分に出来ることは何でもやって、どんな手段を使っても構わない、っていう信念があって、汚れることも傷つくことも恐れない」
だから好きなの、そう笑うまもりの表情は心底幸せそうで。
―――その内容は、阿含の理解を越えていて。
それはひどく、阿含の癪に障った。
「あ゛~~?」
険しい顔で、低く唸る彼が腕を伸ばそうとした、その時。
「そこまでだ」
背後から声がする。そうして、後頭部に触れるのは銃口。
「ヒル魔くん!」
ぱ、と顔を明るくしたまもりにヒル魔が笑みを含んだ声で応じる。
「随分と熱烈な告白アリガトウゴザイマス糞マネ」
「!! 聞いてたの?!」
再び赤面するまもりを目の当たりにして、阿含は憎々しげに舌打ちする。
いかな彼でも、見えない背後から、しかも0m距離からの銃弾であれば避けるのは無理だ。
これほど近寄られるまで気が付かなかったとは、まったくもって不覚だった。
「っていうか銃! 人に向けるなんてとんでもない!」
「ケケケ糞ドレッド止めるならこれくらいしねぇとなァ」
行くぞ、と言われてまもりは頷き、それでも律儀に阿含に頭を下げてその傍らを通り抜ける。
思わず伸ばそうとした手を、すかさずヒル魔の手が振り払った。
「触るな、糞ドレッド」
阿含は、その意味がわからないほど愚鈍ではない。
QBという立場故か、やりすぎだと思わせるくらいにヒル魔は手を使わないようにしていた。
間違ってもその手を痛めないように、と。
その手に振り払われるというのは、本気だということだ。
「・・・あ゛ぁ?」
わずかにぶれた銃を察知し振り払って背後に向き直る。
けれど、その時既にヒル魔はまもり共々その姿を消していた。
おそらくは近場の部屋に逃げ込んだのだろうが、悪魔が闇にとけ込んだかのような錯覚を与える消え方だった。あまりに鮮やか過ぎる手腕に、深追いする気にもならない。
『欲しいモノに対しては一生懸命努力して、自分に出来ることは何でもやって、どんな手段を使っても構わない、っていう信念があって、汚れることも傷つくことも恐れない』
あの深い青い瞳は、悪魔に魅入られた女のもの。
阿含には判らない。
ヒル魔の言うことも、まもりの言うことも、彼にとっては判らない。
何でも出来るのが当たり前だから。
何で自分と同じように出来ないのかが判らないから。
努力だとか、信念とか、諦めとか。
そんな泥臭いような、生温かいような言葉の羅列に気色悪さしか感じない。
わからないということが、わからない。
阿含は再び舌打ちし、振り払われた手を握り込んだ。
それが妙な温度をたたえているようで、ひどく落ち着かない気分の、まま。
***
何でも出来る人は努力しないと出来ない人の気持ちはわからないですよね。
それはとてもうらやましいようでいて、とてもさびしいことなんだろうなあ、と思うわけです。
しかし阿含は難しい。
阿含の声に不穏が混じる。けれどまもりは揺らがない。
「ヒル魔なんかのどこがいいんだ?」
「どこって」
「ただの凡人なのに?」
ヒル魔は見た目や頭の回転が人外のように見られがちだが、結局はただの人だ。
身体能力は凡人の域を出ず、それほど血の滲むような努力を絶えずし続けている。
けれど阿含は違う。彼は天才だ。誰もが彼を天才と褒めそやし、憎たらしく思っても無視なんて出来ない。
どちらに認められ、その傍らにいるのが幸せかなんて、一目瞭然だろう。
そう阿含は思うのに。
「ただの凡人、だからよ」
まもりは嫣然と笑ってみせる。
「確かに何でも出来る貴方は凄いわ。誰でも出来るわけではないし、誰にも真似できない才能だもの」
でも、と笑顔の質を変えてまもりは続ける。
「ヒル魔くんは自分に言い訳して、諦めたりしないから。欲しいモノに対しては一生懸命努力して、自分に出来ることは何でもやって、どんな手段を使っても構わない、っていう信念があって、汚れることも傷つくことも恐れない」
だから好きなの、そう笑うまもりの表情は心底幸せそうで。
―――その内容は、阿含の理解を越えていて。
それはひどく、阿含の癪に障った。
「あ゛~~?」
険しい顔で、低く唸る彼が腕を伸ばそうとした、その時。
「そこまでだ」
背後から声がする。そうして、後頭部に触れるのは銃口。
「ヒル魔くん!」
ぱ、と顔を明るくしたまもりにヒル魔が笑みを含んだ声で応じる。
「随分と熱烈な告白アリガトウゴザイマス糞マネ」
「!! 聞いてたの?!」
再び赤面するまもりを目の当たりにして、阿含は憎々しげに舌打ちする。
いかな彼でも、見えない背後から、しかも0m距離からの銃弾であれば避けるのは無理だ。
これほど近寄られるまで気が付かなかったとは、まったくもって不覚だった。
「っていうか銃! 人に向けるなんてとんでもない!」
「ケケケ糞ドレッド止めるならこれくらいしねぇとなァ」
行くぞ、と言われてまもりは頷き、それでも律儀に阿含に頭を下げてその傍らを通り抜ける。
思わず伸ばそうとした手を、すかさずヒル魔の手が振り払った。
「触るな、糞ドレッド」
阿含は、その意味がわからないほど愚鈍ではない。
QBという立場故か、やりすぎだと思わせるくらいにヒル魔は手を使わないようにしていた。
間違ってもその手を痛めないように、と。
その手に振り払われるというのは、本気だということだ。
「・・・あ゛ぁ?」
わずかにぶれた銃を察知し振り払って背後に向き直る。
けれど、その時既にヒル魔はまもり共々その姿を消していた。
おそらくは近場の部屋に逃げ込んだのだろうが、悪魔が闇にとけ込んだかのような錯覚を与える消え方だった。あまりに鮮やか過ぎる手腕に、深追いする気にもならない。
『欲しいモノに対しては一生懸命努力して、自分に出来ることは何でもやって、どんな手段を使っても構わない、っていう信念があって、汚れることも傷つくことも恐れない』
あの深い青い瞳は、悪魔に魅入られた女のもの。
阿含には判らない。
ヒル魔の言うことも、まもりの言うことも、彼にとっては判らない。
何でも出来るのが当たり前だから。
何で自分と同じように出来ないのかが判らないから。
努力だとか、信念とか、諦めとか。
そんな泥臭いような、生温かいような言葉の羅列に気色悪さしか感じない。
わからないということが、わからない。
阿含は再び舌打ちし、振り払われた手を握り込んだ。
それが妙な温度をたたえているようで、ひどく落ち着かない気分の、まま。
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何でも出来る人は努力しないと出来ない人の気持ちはわからないですよね。
それはとてもうらやましいようでいて、とてもさびしいことなんだろうなあ、と思うわけです。
しかし阿含は難しい。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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