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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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スカリフィケーション

(ヒルまも)

+ + + + + + + + + +
ヒル魔の身体にはそこそこ色々な傷が残っている。
とはいえ、出血を伴う大けがをした訳でもないので、傷そのものの色合いは薄い。
そして肌の色が白いため(本人にとっては甚だ不本意だが体質的に日に焼けにくいのだ)、傷があることに気づく者はない。

「あれ。ヒル魔くん、ここ」
いつもの通り部活の終了後、残ってパソコンに触れていたヒル魔は、まもりがコーヒーを持って来たのをちらりと視線で追うだけ。
お礼の一つも、と当初こそ口やかましかったまもりも今ではすっかり慣れたので返事を期待することもない。
だが、今日はちょっとだけ勝手が違った。
衣替えをしたばかりの半袖シャツ。そこから覗く腕に、細く白い傷が三本。
「どうしたの」
「さあ」
記憶にない、と誤魔化そうとしたがまもりはじいっと傷を見つめている。
その視線に些か居心地の悪い気分になりかけた頃、まもりがやっと口を開いた。
「ケルちゃんの爪痕?」
「かもな」
応じながらヒル魔は思い出す。この傷は、何かの拍子でケルベロスが手を出したのを避け損なったときについたもの。
本人(本犬?)はそこそこばつの悪い顔をしていたし、その日はほねっこの催促なしに雑用をいいつかっていたので損得はゼロだった。だが、傷が残っていたとはヒル魔本人もすっかり忘れていた。多分ケルベロスも忘れていることだろう。
「へえ、ケルちゃんって賢いのにそんなミスもするのね」
「ミスもしねぇ奴なんていねぇだろ」
「そうだけど」
肩をすくめ、まもりは自分の定位置であるヒル魔の向かい側に座った。
それからカフェオレを飲みつつ、なぜだかじろじろと(本人としては気づかれていないつもりのようだが)ヒル魔を見ている。
舐めるような視線がケルベロスの爪痕を行きつ戻りつしていることから、どうやら傷の有無を確認しているらしい、と。
そう気づいてヒル魔はコーヒーのカップを持ち上げつつまもりに視線を向けた。
「何?」
「そりゃこっちの台詞だ、糞マネ。何じろじろ見てやがる」
見物料取るぞ、という台詞にまもりは僅かに視線を反らす。
「・・・見てないもの」
「アーアー糞マネの執拗な視線のせいで俺の繊細な肌に傷がつきそうデス」
「つくわけないでしょ!」
んもう、と定番の言葉を口の中で呟くまもりに、ヒル魔はカップを戻しながら口を開く。
「全く傷もねぇ男なんざいねぇだろ。糞チビだろーが糞サルだろーが、どいつもこいつも傷なんてザラにある」
「そう、よね。うん、セナもみんなも怪我なんてしょっちゅうだし。でも」
「でも?」
ピン、と片眉を上げたヒル魔にちらりと視線を向けて。
「ヒル魔くん、目立つところに傷なんてないように見えたから、なんか意外で」
「そんな怪我するようなヘマは早々しねぇってことだ」
そっか、とまもりは頷いて。
「なんとなく、ヒル魔くんがそういう傷を残されるのが凄く嫌、みたいな気がしてた」
続く言葉に、ヒル魔は遠慮無く呆れた、という顔をする。
「アホか。何でそんなこと」
そこまで言って、まもりの頬が赤いことに気づく。
彼女の視線の先には、自身の丸い爪先。
「・・・違うの?」
その言葉の温度が、ほんの僅かに湿り気を帯びて上がったことを彼女は気づいているのだろうか。
「だって、一昨日だって」
「まもり」
唐突に名を呼ばれ、まもりはびくりと硬直する。
その顔はユデダコのように真っ赤で、動きは拙いからくり人形のようだ。
「な、に」
「俺は秋大会に出られないとはいえ、未だ部活にこうやって顔出してて、練習に勤しんでる」
「? うん」
小首を傾げるまもりに、コイツは本当に天然だな、とヒル魔は内心苦笑して。
「着替えんだぞ。あいつらと、ロッカールームで」
一言ずつ区切るように言われて、まもりはようやくヒル魔の言わんとすることを汲み取った。
「~~~!!!」
「日々学校に部活に忙しくて家では寝るだけ、っつー連中に目の毒だとは思わねぇのか?」
「え、と」
「まあ見せつけてぇっつーんなら、俺は別に」
「みみみ見せつけたいなんてそんな!」
「ホー? 俺はてっきり『爪痕一つつけさせないなんて薄情な男』っつー認識なのかと」
「思ってない! 思ってません!!」
真っ赤になったまま立ち上がり、必死になって両手を振るまもりにヒル魔はにやりと口角を上げる。
「なんだかんだ言っても、引退はもう目の前だ」
「そ、うね」
音もなく立ち上がり、まもりの近くへ。
その髪を掻き上げ、触れるだけのキスを、首に。
「ちょっ?!」
「覚悟しとけ」
引退したら、嫌ってほど跡つけてやる。
低い囁きに、まもりはそれでも気丈にヒル魔を睨め付ける。
「・・・そっち、こそ、覚悟してよ!」
その精一杯の意地を間近にして、ヒル魔は楽しげに喉を震わせた。


***
テーマ『傷跡』で書いてみました。実は一線越えてます設定。
正月早々こんなんですが、今年もよろしくお願いします。
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