旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
今日も今日とて糞マネは怒っている。
「って言うのよ! 酷いでしょ!!」
何かと思えば糞チビがからかわれたらしい。
地味とかチビとか貧弱とか。
そりゃその通りだし、それで怒るというのはよく判らない。
興味なく軍手を嵌めた手元のマシンガンに視線を戻して道具を手にすれば、恨みがましい声を上げる。
刺々しい。
「もー!」
むーっと頬を膨らませて隣で声を上げる糞マネを一瞥する。
「テメェが糞牛だか糞ブタだか知らねぇが、コーヒー淹れろ」
「何よ! それが人に物を頼む態度?」
むくれながらカウンターの裏に向かう。その後、大きな深呼吸が聞こえてきた。
ああアホらしい。
自分以外の他人の、ましてや言われて当たり前のことにそんなに苛立つお前。
「糞不細工な顔で淹れるなよ。不味くなる」
「顔は味に関係ないでしょ! ・・・熱ッ」
小さな悲鳴に内心舌打ちした。すぐに流水で手を冷やす音が聞こえてくる。
「ほれみろ」
「何が」
「全部裏目になってんだろ」
怒って短絡的になる相手にはブラフでもハッタリでもやり放題。
見え見えの罠にもあっさり掛かる。
「ヒル魔くんのせいでしょ!」
「ホー。人のせいにするか。それでいいんだな?」
む、と口を紡ぐ気配。
あからさまに不機嫌そうな糞マネの姿は未だ見えないままだ。
少々沈黙していたが、糞マネは再び口を開いた。
「物は言い様でしょ。そんな言い方されたらカチンと来るわよ」
「言い方一つであっさり煽られるのはいかがデスカネ」
わざと片言風に言ってやるとまたしても苛立つ気配。
こちらが見えないのをいいことに、音も立てず喉を震わせる。
がちゃり、と音を立ててカップとソーサーが用意された気配がする。
「全く! 本当にヒル魔くんってば人を苛立たせるのが上手よね!!」
精一杯の嫌味のつもりで声が尖っているが、まだまだその棘は柔らかい。
他人にはかすかな傷さえつけられないくらいに。
近頃凝っているドリップのコーヒーを準備する気配に、おもむろに口を開く。
「姉崎」
「!」
がたっと派手な音がした。
転んではいないが、足下をすくわれたような様子だろう。
見なくても判る。
それくらい、お前のことなら。
「テメェがンな風に怒ってんのを見て誰が喜ぶと思ってんだ?」
「・・・ヒル魔くんはそうでしょ」
先ほどとは格段に落ち着いた声と、注がれる湯の音。
次第に溢れる、嗅ぎ慣れたコーヒーの匂い。
ああ、柔らかい。
「俺が喜ぶとでも?」
「違うの?」
姉崎が僅かに頬を染めてカップをカジノテーブルまで持って来た。
手入れ途中のマシンガンを置き、軍手を取る。
「・・・違うの?」
ちらりと上目遣いに見上げてくる姉崎の頬はまたじわりと赤くなる。
この顔。
「その顔は悪くねぇな」
「・・・!!」
更に赤くなる姉崎にわざとらしく口角を上げて見せて、椅子に座りコーヒーカップを手に取る。
幾分落ち着いたらしく、まあまあの味になっていた。
この時間。
この空間。
どれからも姉崎の棘が満ちていて、それが。
(悪くねぇ)
内心でもう一度繰り返し、視点が入れ替わった状態で見上げてやる。
にやにやと笑っているのを見て、やや姉崎は臍を曲げたようだ。
それでも頬はなお赤く、視線は鋭さを増す。
「やっぱり怒らせたいんじゃないの?」
けれど棘は柔らかいのだ。
「姉崎」
「きゃあ?!」
ただそう呼んで腕を引き、膝の上に横抱きにして座らせてみる。
途端に姉崎は真っ赤になって硬直する。
ケケケ、と耳元で笑えば一層戸惑う様子が面白くて仕方ない。
「テメェ頭はイイはずなのにな」
「なによ、その表現!」
何か含みがあるわね、と途端にむくれるその様子を楽しむ。
くるくると表情を変え、一瞬たりとも同じ顔をしない、この、女。
視線の先に、投げ出された手入れ途中のマシンガン。
あの無機物の冷たい堅さなどではなく、今この手には柔らかな棘の化身がいる。
頼りない。無防備すぎる。非力すぎて他人ならば一笑に付すだろう。
けれど。
人のために怒るのが面白くなかったり。
呼び方一つで照れられたり。
ただ膝に載せてみただけで硬直されたり。
それなのにからかった途端にむくれられたり。
その一つ一つが、たまらないなんて。
持ち主が意図せず振るう柔らかな棘。
それは。
ただただ、悪魔だけに有効である。
***
秋埜様リクエスト『付き合いたてで意識しまくるまもりと、そんなまもりに胸キュンなヒル魔』でした。きっと真っ赤になってうかうか会話も出来ないまもりちゃんとそんな彼女に何かしら優しくするような話が希望だろうなあと思ったのであえて外れた道を行きます! 外道鳥!(大笑)楽しく書かせていただきました! ありがとうございます!
「って言うのよ! 酷いでしょ!!」
何かと思えば糞チビがからかわれたらしい。
地味とかチビとか貧弱とか。
そりゃその通りだし、それで怒るというのはよく判らない。
興味なく軍手を嵌めた手元のマシンガンに視線を戻して道具を手にすれば、恨みがましい声を上げる。
刺々しい。
「もー!」
むーっと頬を膨らませて隣で声を上げる糞マネを一瞥する。
「テメェが糞牛だか糞ブタだか知らねぇが、コーヒー淹れろ」
「何よ! それが人に物を頼む態度?」
むくれながらカウンターの裏に向かう。その後、大きな深呼吸が聞こえてきた。
ああアホらしい。
自分以外の他人の、ましてや言われて当たり前のことにそんなに苛立つお前。
「糞不細工な顔で淹れるなよ。不味くなる」
「顔は味に関係ないでしょ! ・・・熱ッ」
小さな悲鳴に内心舌打ちした。すぐに流水で手を冷やす音が聞こえてくる。
「ほれみろ」
「何が」
「全部裏目になってんだろ」
怒って短絡的になる相手にはブラフでもハッタリでもやり放題。
見え見えの罠にもあっさり掛かる。
「ヒル魔くんのせいでしょ!」
「ホー。人のせいにするか。それでいいんだな?」
む、と口を紡ぐ気配。
あからさまに不機嫌そうな糞マネの姿は未だ見えないままだ。
少々沈黙していたが、糞マネは再び口を開いた。
「物は言い様でしょ。そんな言い方されたらカチンと来るわよ」
「言い方一つであっさり煽られるのはいかがデスカネ」
わざと片言風に言ってやるとまたしても苛立つ気配。
こちらが見えないのをいいことに、音も立てず喉を震わせる。
がちゃり、と音を立ててカップとソーサーが用意された気配がする。
「全く! 本当にヒル魔くんってば人を苛立たせるのが上手よね!!」
精一杯の嫌味のつもりで声が尖っているが、まだまだその棘は柔らかい。
他人にはかすかな傷さえつけられないくらいに。
近頃凝っているドリップのコーヒーを準備する気配に、おもむろに口を開く。
「姉崎」
「!」
がたっと派手な音がした。
転んではいないが、足下をすくわれたような様子だろう。
見なくても判る。
それくらい、お前のことなら。
「テメェがンな風に怒ってんのを見て誰が喜ぶと思ってんだ?」
「・・・ヒル魔くんはそうでしょ」
先ほどとは格段に落ち着いた声と、注がれる湯の音。
次第に溢れる、嗅ぎ慣れたコーヒーの匂い。
ああ、柔らかい。
「俺が喜ぶとでも?」
「違うの?」
姉崎が僅かに頬を染めてカップをカジノテーブルまで持って来た。
手入れ途中のマシンガンを置き、軍手を取る。
「・・・違うの?」
ちらりと上目遣いに見上げてくる姉崎の頬はまたじわりと赤くなる。
この顔。
「その顔は悪くねぇな」
「・・・!!」
更に赤くなる姉崎にわざとらしく口角を上げて見せて、椅子に座りコーヒーカップを手に取る。
幾分落ち着いたらしく、まあまあの味になっていた。
この時間。
この空間。
どれからも姉崎の棘が満ちていて、それが。
(悪くねぇ)
内心でもう一度繰り返し、視点が入れ替わった状態で見上げてやる。
にやにやと笑っているのを見て、やや姉崎は臍を曲げたようだ。
それでも頬はなお赤く、視線は鋭さを増す。
「やっぱり怒らせたいんじゃないの?」
けれど棘は柔らかいのだ。
「姉崎」
「きゃあ?!」
ただそう呼んで腕を引き、膝の上に横抱きにして座らせてみる。
途端に姉崎は真っ赤になって硬直する。
ケケケ、と耳元で笑えば一層戸惑う様子が面白くて仕方ない。
「テメェ頭はイイはずなのにな」
「なによ、その表現!」
何か含みがあるわね、と途端にむくれるその様子を楽しむ。
くるくると表情を変え、一瞬たりとも同じ顔をしない、この、女。
視線の先に、投げ出された手入れ途中のマシンガン。
あの無機物の冷たい堅さなどではなく、今この手には柔らかな棘の化身がいる。
頼りない。無防備すぎる。非力すぎて他人ならば一笑に付すだろう。
けれど。
人のために怒るのが面白くなかったり。
呼び方一つで照れられたり。
ただ膝に載せてみただけで硬直されたり。
それなのにからかった途端にむくれられたり。
その一つ一つが、たまらないなんて。
持ち主が意図せず振るう柔らかな棘。
それは。
ただただ、悪魔だけに有効である。
***
秋埜様リクエスト『付き合いたてで意識しまくるまもりと、そんなまもりに胸キュンなヒル魔』でした。きっと真っ赤になってうかうか会話も出来ないまもりちゃんとそんな彼女に何かしら優しくするような話が希望だろうなあと思ったのであえて外れた道を行きます! 外道鳥!(大笑)楽しく書かせていただきました! ありがとうございます!
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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