旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
デス・マーチを終えて日本に帰ってきても、練習は相変わらず厳しいものになるだろう。
そう予測し、新学期初日からまもりは朝早くから練習の準備のため部室へと向かった。
部室の扉を開き、そうして。
「な、なにこれ・・・!?」
声を上げ、まもりは茫然と立ち尽くす。つうっと背中を汗が伝った。
しばらくそのままでいたのだが、不意に背後からの日光が遮られた。
「なに糞青ッ白い顔してやがんだ」
挨拶もなにもなくそう告げられ、まもりはぎぎっと音がしそうな様子で背後を伺う。
「だって、これ」
目の前には紙で出来た壁があった。
「データ」
あっさりと言ってまもりの横を抜け、ぴらりと持ち上げられたのは他校のデータだった。
その量は半端じゃない。
「・・・これ、全部整理するの?」
「ア?」
嘘であって欲しい気持ちでそう尋ねたが、何を今更、というヒル魔の顔には冗談の欠片もない。
「まだ全部じゃねぇぞ」
「ええ?! これで?!」
まもりは声を裏返した。ヒル魔は冷めた目で彼女を見下ろす。
「どのチームも夏にウチみてぇな練習してんだぞ。春までのデータがそのまんま使えるわけねぇだろうが」
「そ、そりゃそうかもしれないけど」
これでは部活が終わってもおいそれとは帰れないだろう。
「なんだ、怖じ気ついたか?」
にやついた笑み声で問われて、まもりは一つ息を吸う。
「いーえ。全力で整理しますとも」
「ホー」
「でも一つだけ言わせてもらうけど」
ヒル魔はニヤニヤしたまままもりの出方をうかがっている。
「打ち出すときは私にも声掛けてよ」
「ア?」
きっと苦情や文句が出るのだろうと予想していたらしいヒル魔は僅かに目を丸くする。
それに内心溜飲を下げながら、まもりは続けた。
「これだけ沢山印刷するのだけでも、大変だったでしょう?」
「糞超アナログマネがやるよか早ェ」
「打ち出しくらいなら大丈夫です!」
「どうだか」
そうは言いつつも、ヒル魔は笑みを絶やさない。
「さっそく今日からやるぞ」
「うん」
それにまもりは頷き、携帯を取り出し家に遅くなると電話を入れた。
練習も夜遅くまで続き、データ整理も平行して行うのはかなり大変な作業だった。
更に大会前なのも災いした。
とりあえず一回戦相手の網乃は勿論、どのチームが勝ち上がるか不明なため、捨てるデータは存在せず、参加校全てのものを片付けなければならないのだ。
「トーナメントだと本当にどこが勝つか判らないものね」
ため息混じりに片付けるまもりの書類はそれでもかなりの勢いで消えている。次々片付けられた他校選手のデータが分厚いバインダーに挟まれ、ガラガラだった棚がそのバインダーで埋まっていくのはかなり迫力ある光景だ。
「今度勝ったら校長に資料室作らせるか」
「あ、助かる」
そう言ってからまもりははっとして口を覆った。
ヒル魔はにやりと笑ったが言葉は発さない。
「・・・コーヒー淹れてくる!」
そう告げて慌ててカウンターの後ろに回り込めば、低く抑えられた笑み声だけが聞こえた。
風紀委員として彼の悪行三昧を苦々しく思い、常軌を逸した脅しに対して注意するのがまもりの役目だ。
けれど今、ごく自然に彼の行為に賛同してしまったのが酷く恥ずかしい。
校長先生を脅すようなマネをするなんて、と。
悶々としながら淹れたコーヒーを手に、まもりは彼の元に戻る。
彼にはブラック、自らにはカフェオレで。
「はい」
「おー」
彼の手元には部員全員のデータが入力され、グラフ化されている。
はっきり言って優秀なものとは言えない。
他校のデータを山のように片付けたまもりにはそれがはっきり判った。
それでも。
淡々としつつもその奥底で熱く勝利を目指す悪魔の手に掛かれば、勝利への足がかりは確実に現れるだろう。
それはもう、殆ど盲信の類だった。
<続>
そう予測し、新学期初日からまもりは朝早くから練習の準備のため部室へと向かった。
部室の扉を開き、そうして。
「な、なにこれ・・・!?」
声を上げ、まもりは茫然と立ち尽くす。つうっと背中を汗が伝った。
しばらくそのままでいたのだが、不意に背後からの日光が遮られた。
「なに糞青ッ白い顔してやがんだ」
挨拶もなにもなくそう告げられ、まもりはぎぎっと音がしそうな様子で背後を伺う。
「だって、これ」
目の前には紙で出来た壁があった。
「データ」
あっさりと言ってまもりの横を抜け、ぴらりと持ち上げられたのは他校のデータだった。
その量は半端じゃない。
「・・・これ、全部整理するの?」
「ア?」
嘘であって欲しい気持ちでそう尋ねたが、何を今更、というヒル魔の顔には冗談の欠片もない。
「まだ全部じゃねぇぞ」
「ええ?! これで?!」
まもりは声を裏返した。ヒル魔は冷めた目で彼女を見下ろす。
「どのチームも夏にウチみてぇな練習してんだぞ。春までのデータがそのまんま使えるわけねぇだろうが」
「そ、そりゃそうかもしれないけど」
これでは部活が終わってもおいそれとは帰れないだろう。
「なんだ、怖じ気ついたか?」
にやついた笑み声で問われて、まもりは一つ息を吸う。
「いーえ。全力で整理しますとも」
「ホー」
「でも一つだけ言わせてもらうけど」
ヒル魔はニヤニヤしたまままもりの出方をうかがっている。
「打ち出すときは私にも声掛けてよ」
「ア?」
きっと苦情や文句が出るのだろうと予想していたらしいヒル魔は僅かに目を丸くする。
それに内心溜飲を下げながら、まもりは続けた。
「これだけ沢山印刷するのだけでも、大変だったでしょう?」
「糞超アナログマネがやるよか早ェ」
「打ち出しくらいなら大丈夫です!」
「どうだか」
そうは言いつつも、ヒル魔は笑みを絶やさない。
「さっそく今日からやるぞ」
「うん」
それにまもりは頷き、携帯を取り出し家に遅くなると電話を入れた。
練習も夜遅くまで続き、データ整理も平行して行うのはかなり大変な作業だった。
更に大会前なのも災いした。
とりあえず一回戦相手の網乃は勿論、どのチームが勝ち上がるか不明なため、捨てるデータは存在せず、参加校全てのものを片付けなければならないのだ。
「トーナメントだと本当にどこが勝つか判らないものね」
ため息混じりに片付けるまもりの書類はそれでもかなりの勢いで消えている。次々片付けられた他校選手のデータが分厚いバインダーに挟まれ、ガラガラだった棚がそのバインダーで埋まっていくのはかなり迫力ある光景だ。
「今度勝ったら校長に資料室作らせるか」
「あ、助かる」
そう言ってからまもりははっとして口を覆った。
ヒル魔はにやりと笑ったが言葉は発さない。
「・・・コーヒー淹れてくる!」
そう告げて慌ててカウンターの後ろに回り込めば、低く抑えられた笑み声だけが聞こえた。
風紀委員として彼の悪行三昧を苦々しく思い、常軌を逸した脅しに対して注意するのがまもりの役目だ。
けれど今、ごく自然に彼の行為に賛同してしまったのが酷く恥ずかしい。
校長先生を脅すようなマネをするなんて、と。
悶々としながら淹れたコーヒーを手に、まもりは彼の元に戻る。
彼にはブラック、自らにはカフェオレで。
「はい」
「おー」
彼の手元には部員全員のデータが入力され、グラフ化されている。
はっきり言って優秀なものとは言えない。
他校のデータを山のように片付けたまもりにはそれがはっきり判った。
それでも。
淡々としつつもその奥底で熱く勝利を目指す悪魔の手に掛かれば、勝利への足がかりは確実に現れるだろう。
それはもう、殆ど盲信の類だった。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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