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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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枕騒動

(ヒルまも高校卒業後)
※同棲一年目の夏の話

+ + + + + + + + + +
夏、男と女が同じ部屋で過ごしていれば、当然のように勃発する問題がある。
当たり前のようにクーラーの出力を最大にし、がんがんに部屋を冷やしてしまうのは男。
それに目くじらを立て、もう少し室温を上げようとするのが女。
そもそも肉体の構造的に相容れない問題である。
「だからね、自分の部屋だけ冷やしてくれたらいいのよ」
「飯食ってるところが暑ィんだろうが。作ってるところだって暑ィだろ」
ヒル魔に睨まれて、まもりも眉を寄せる。
確かにリビングは日当たりがいいため暑い。キッチンも熱が篭るから暑い。
けれどあまりエアコンの効きすぎた室内で過ごすのは体にもよくないし、なによりヒル魔の設定温度では冷えすぎる。
食事が終わった今、冷えはじわじわとまもりを襲ってきている。
片づけをして食後のコーヒーで一息ついているのだが、寒い。
まもりは先ほど淹れたコーヒーのカップを手のひらでくるんで暖を取りながら口を開いた。
「限度があるでしょう? 私にはこの温度じゃ寒すぎるの」
むき出しの二の腕をさする。半袖で過ごしているとすぐ冷えてきてしまう。
ヒル魔はピンと片眉を上げる。
「テメェは脂肪が多すぎて冷えんだろ」
「失礼ね! 私の体脂肪率は一般的です!」
「どうだか」
「大体、ヒル魔くんが気温を上げてくれないんだったら私が上を羽織るしかないのに」
まもりは恨めしげにヒル魔が先ほど彼女から取り上げたカーディガンを見る。
「夏に長袖着て目の前うろつかれちゃ糞暑苦しいんだよ」
「夏に黒着るヒル魔くんに言われたくないわよ」
返してよ、とまもりが手を出してもヒル魔は応じず自らのカップに口をつける。
「寒いの。風邪ひいちゃうわよ」
「ホー」
「他人事だと思って! もう、女の子の体に冷えは大敵なのよ!」
まもりは立ち上がり、自力でカーディガンを取り戻そうとして。
「あ」
二の腕を掴まれ、引き寄せられる。
「本当に冷えてんだな」
「言ったでしょ」
彼の大きな手のひらに二の腕を掴まれ、そのあたたかさに嘆息する。
「ほら、離して。ヒル魔くんは暑いでしょ」
ヒル魔はその声ににやりと口角を上げる。
そうして、強引に自らの腕の中にまもりを招きいれた。
「ちょっと!」
ぎゅう、と抱きしめられてまもりは声を上げたが、その体から伝わる熱はまもりの冷えた肌に心地よい。
「冷えてて丁度いい抱き枕だな」
さすが脂肪たっぷり、と笑われまもりは真っ赤になってもがく。
「さっきから失礼よ! んもう、離して! 部屋に戻るから!」
リビングで向かい合ってコーヒーなんて飲んでるから冷えるのだ。
コーヒーは体を冷やすのだし、ますます悪循環。
けれどヒル魔は笑うだけで腕を離さない。
「男に比べたら女はどんなに細っこくったって脂肪過多だろ」
「仕方ないじゃない、そういう風に出来てるんだもの」
むくれるまもりが突き出した唇に、ヒル魔は己のそれをちょいと触れ合わせる。
「昔、ローマ帝国時代の睡眠時に使ってた冷房ってなんだか知ってるか? 姉崎」
「ローマ?」
唐突な話題にまもりは瞳を瞬かせる。
「水浴び・・・とか、氷はないわよね。木陰で涼むとか、そういうことしか浮かばないけど」
何? と小首を傾げるまもりを、ヒル魔はひょいと抱え上げて歩き出す。
「ちょっと!?」
「その当時は、女を抱きしめて寝たんだとよ」
脂肪は冷てぇからな、と言われてまもりは目を瞠る。
「ええ!?」
驚きもがくまもりを片腕で難なくおさえて、ヒル魔はリビングの照明と冷房を落とし、自らの部屋に彼女を連れ込む。
ヒル魔の部屋も既に冷やされていて、まもりはぶるりと背を振るわせた。
「冷えすぎてるわよ」
「これくらいで丁度いいんだよ」
「風邪引いちゃうわ」
ヒル魔はにやりと笑って冷房の温度をやや上げると、まもりをベッドに縫いとめる。
「そうならないようにしっかり抱きついてろよ、糞抱き枕」
「違うってば!」
「おー冷てぇ」
まもりの抗議はことごとく受け流される。
「・・・もう!」
こうなれば彼が暑がろうと嫌がろうと離れてやるものか、と考えを切り替え、暖を取るべくぎゅうっとヒル魔にしがみついたのだった。


***
ここ二日ほどはさほど暑すぎずエアコンのお世話にはならずに済んでます。
古代ローマでは貴族の男が奴隷の女性を抱きしめて冷房代わりにしたとどっかで読んだんですよね。
はた迷惑だなと思った覚えがあります(笑)
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