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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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Long Long ago(下)



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近隣の評判も名高い真っ白な制服は冬服がブレザー、夏服がセーラー服。
幼稚舎から慣れ親しんだ制服は、高校のものが一番かわいい。
来年にはソレを着られるのだと楽しみにしつつ、ジャケットを脱いでハンガーに掛け、ブラウスも脱ぐ。
お気に入りのピンクのルームウェアに着替えようと手を伸ばそうとして。
そこでようやく、メイは視線に気が付いた。
「・・・」
振り返れば、そこには満面の笑みでメイの姿を見ている護の姿。
「・・・何、見てるの!」
「え? メイちゃんの着替え」
「っ!! 何言ってるのよ!」
さらっと答える護にメイは真っ赤になって手にしていたウェアを腹立たしげに投げつけた。
それを難なく避けながら、護の視線がメイの上半身に向く。
「メイちゃんってスタイルいいよね」
「なっ?! どこ見てるの!」
「全体的にだけど、あえて言うなら・・・胸?」
年の割には大きな胸がゆさりと揺れ、存在を主張している。
「エッチ!!」
途端に胸を隠して叫ぶメイに、護は苦笑しながら手にしていたウェアを渡す。
「いや、ほんと。中学生とは思えないくらいだよね」
「言わないでよ!」
気にしてるんだから、とメイは呟きつつウェアを着る。
同級生にも羨ましがられるが、胸が大きいからと言っていいことはない。
ブラジャーは色気のない物になるし、胸のせいでワンサイズ大きな服を着なければならないこともしばしばだ。
胸に重りがあるようで運動も苦手だし、誰も彼もが胸ばかり見るようで気に入らない。
照れ隠しにメイは声を上げる。
「そ、それよりも数学! 解けたの?」
「うん」
「あ、そう。やっぱり無理でしょうけど・・・ってええ?!」
驚き視線を向けると、護はぴらりとルーズリーフを見せた。
そこには色々書き込んであり、きちんと順を追って解いた形跡がある。
「判りやすく説明するから、メイちゃんも座ってよ」
「え、・・・うん」
メイは護に手招きされ、向き合うように腰を下ろすが。
「違うよ、こっち」
「え?」
「隣に来て。説明するのに向きが逆だと教えづらいから」
ここ、と指し示されてメイは大人しくその隣に座った。
「じゃあこの問題だけど」
メイの目の前で教科書が開かれる。
「この法則を使って解答するんだよ。でも勿論少しアレンジしてあるから―――」
護はペンを片手に図を描き、説明する。
それは小学生とは思えない程明瞭な説明で、数学が苦手なメイにも理解しやすかった。
「へえ・・・なかなかやるじゃない」
感心したように呟けば、護が至近距離でにっこり笑う。
「そう? じゃあ、何かご褒美くれる?」
「はっ? なんで私が護にご褒美あげるのよ?」
「えー、だって僕小学生だけどメイちゃんの宿題解いたし、教えたんだよ?」
「・・・」
そう言われると弱い。
「一体、何が欲しいのよ」
メイがつん、とそっぽを向いて言うと、護は口角を上げ、くい、と彼女の腕を引いた。
「え」
バランスを崩したメイが護の方を向いたと同時に。
触れたのは柔らかい感触。
見開いた瞳では捉えきれなかったそれが、護の顔だったのだと彼が離れてから理解する。
「・・・な、・・・・な、なな・・・ななな?!」
「ゴチソウサマ」
にっこりと笑う護に、メイは真っ赤になってうろたえる。
今、彼は一体何をしたのだろうか。
考えたくはないが、もしかして、今のは。
「キ・・・キス・・・」
「したよ」
「~~~したよ、って!!!」
メイはぶわっと涙を浮かべる。
「ふぁ、ファーストキスだったのに! な、んで! 護が・・・っ!」
しかも不意打ちみたいに、と言うメイに、護は笑みを浮かべたまま小首を傾げる。
「嫌だった?」
「嫌に決まってるでしょー!!」
なんで小学生のあんたに、と喚くメイに護は笑みを深める。
「やだなあ」
「ソレはこっちの台詞よ!」
「そうじゃないよ。メイちゃん、忘れちゃったの?」
する、と頬を撫でる手にメイはびくりと身体を引こうとしたが、意外に強い力で引き留められて目を見開く。
「とっくの昔にファーストキスなんてしてるのに、忘れちゃったの?」
「昔・・・?」
「そう。十年前」
「じゅ・・・」
メイが絶句する。それは、あの、幼い時分のことで。
あんなのはほんの戯れ、で。
固まるメイの隙を縫って、護が再び唇を奪う。
「ッキャー!!」
掠めるようなそれに、メイは金切り声を上げて護の腕に爪を立てる。
ガリ、と音を立てたそれに護は眸を細めただけだ。
「や、やめてよ!」
解けない腕にメイがうわずった声を上げると。
「そうだね。今日はこれくらいにしておくよ」
先ほどまでの拘束が嘘のようにあっさりと護は手を放す。
「じゃあね。ご褒美ありがとう」
彼はしなやかに立ち上がると、さっさと室内から出て行った。
扉の隙間から、もう帰るのかと問う母親の声と、応じる護の声が聞こえる。
メイはのろのろと立ち上がり頭を振ると、扉を閉める。
そしてアップライトのピアノに近づき、蓋を開いて鍵盤に指を置いた。


護は外からメイの部屋を見上げる。
姿は見えないが、きっと全てを忘れるかのように勢いよくピアノを弾いているだろうと想像する。
その演奏は外には聞こえない。完全防音の部屋なのだ。
「色々と都合がいいよ」
誰に聞かせるでもなく、呟く。
その時彼女に引っかかれた傷がぴりっと痛んだ。
まるでその発言を諫めるようなそれにも、護はうっとりと微笑むだけ。
そしてもう一度メイの部屋を見上げてから踵を返し、帰路に就いたのだった。

***
メイちゃんがやっと書けたーw腹黒護が急に書きたくなって書いてみました。やだなあこんな小学生。
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