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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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Long Long ago(上)

(ヒルまも一家)
※『The Joker』の護の所在について



+ + + + + + + + + +
葉柱芽衣。
彼女は葉柱ルイとメグの間に生まれた一人娘だ。
そのために小さい頃から蝶よ花よと育てられた、箱入り娘。
黒目がちの大きな瞳に、白い肌に、桃色の唇。
長い黒髪はくせ毛混じりの猫っ毛。
それを高く二つに結い、レースとリボンとフリルに包まれた甘ったるい格好。
かわいい格好が好きで、かわいがられるのも好きで。
この世の中の、『かわいい』という言葉が全て自分の物だと信じて疑わなかった幼い頃。
メイは『彼』と出会った。

彼女は両親と連れ立ってやって来た公園で、唐突に現れた見知らぬ男性に見下ろされていた。
「ホー。それが糞カメレオンの娘か」
低い声に驚き固まるメイの前に父親が立ちはだかる。
「カッ! ヒル魔、近寄るんじゃねぇ!」
メイを庇って前に立つ父親の影からそっと見上げれば、友人らしき男性はにやりと笑う。
その恐ろしい形相にメイは涙を浮かべて父の影に隠れた。
「怯えさせるんじゃねぇ!」
「何もしてねぇだろうが」
「テメェが近くにいるだけで問題だ」
「テメェのツラ棚に上げて何抜かすか」
仲がいいのか悪いのか、イマイチ判断のつきかねる会話を続ける父親たちから離れたいと母親の姿を捜すが、生憎と見あたらない。
きょろきょろと首を巡らせれば、離れたベンチに母親ともう一人、女性の姿が見える。
「ママー」
ててっとそちらに向かって走り出す。
「メイ。パパは?」
「パパ、こわい人とおはなししてた」
母に抱き上げられたメイが指さす先に顔を突き合わせる男二人の姿。
「うちの人が何か言ったのかしら。ごめんなさいね」
母の隣にいた女性が申し訳なさそうに苦笑して頭を下げる。
「いいのさ。どうせくだらない事言ってるんだろうさ」
素っ気ない物言いをして、母はメイを抱え直して膝に座らせる。
「メイちゃん、随分大きくなったわね」
「そうだね。ほら、メイ。いくつになったんだい?」
「5さい!」
ぱ、と手を開いて見せると女性はふわんと笑み崩れた。
「かわいいわね~」
す、と頬を撫でられてメイもにっこりと笑った。
その女性の腕の中にも子供の姿。
メイより小さいその子は、ふいに身じろぎして女性の腕から顔を上げた。
「おや、護もお目覚めかい?」
「そうね」
「まもる?」
メイが母親の呼んだ名を鸚鵡返しにすると、子供がくるりとこちらを向いた。
ぱっちりとした黒目、癖のある黒い髪の毛、ぷっくりとあどけない頬。
その子がじっとメイの顔を見た後、眠そうに瞬きする。
「ああ、まだ眠いかい?」
女性の胸に顔を埋めるそのあどけない姿は随分と可愛らしくて。
「まもるちゃん?」
「そう、護っていうの。男の子よ。メイちゃんより三つ年下よ」
「ヒル魔にはあんまり似てないね」
「そうなのよ。上の子は似てるんだけどね」
優しく頭を撫でられるその顔は無垢で、いとけないという表現がぴったりだ。
「メイちゃん、仲良くしてね」
「うん! メイ、仲良くする!」
護に手を伸ばすと、彼もにっこりと笑う。
その笑顔に引き込まれて、メイは護にキスをしたのだった。

・・・というのが、丁度十年前か。
幼い時分の事なのに随分明確に覚えているのは、よほどあの護の姿がかわいかったからだろう。
カワイイ物が大好きな自分のことだから。
自室のドアノブを握ったまま、メイは硬直していた。
「メイちゃん? どうしたの?」
掛けられた声にようやく我に返る。
自室の扉を閉めながら、メイは大きなため息をついた。
笑顔で彼女を迎え入れたのは先ほどの記憶では幼子だった護だ。
現在は彼も十二才。まだまだ少年ではあるが、メイとさほど身長も変わらなくなってきた。
メイはこのところの身体測定でも身長が伸びていない。
護に抜かれるのはもう時間の問題だ。
メイは鞄を下ろし、腕を組んで護を見下ろす。
幼い頃から変わらない二つに結った髪がふわりと揺れた。
「護、ここは私の部屋よ」
「そうだね」
護は部屋のほぼ中央にある丸いラグマットの上で座って本を読んでいた。
そのままの格好で首だけメイに向けている。
「どうやって入ったの?」
「玄関から」
けろりと答える彼に、メイは眉間に皺を盛大に刻んだ。
「~~~うら若い女性の部屋に勝手に入るんじゃないわよ、このバカ!!」
ずかずかと近寄り、護の襟首を掴む。
「さっさと出て行きなさい!」
「ええ? せっかく遊びに来たのに」
遊んでくれないの? と小首を傾げる護にメイはキリキリと眉をつり上げる。
「私は帰ってきたばかりで、これから着替えて宿題しなきゃいけないの! ピアノの練習もあるし!」
よりにもよって明日当たるの、数学なのよ! とメイは不機嫌も露わに続ける。
メイは正直あまり勉強が得意ではない。特に数学は鬼門だ。
現在は短大まで全てエスカレーター式の私立女子校に通えているので一応進学の心配はしなくていい。
けれど、あまり成績が悪すぎるとさすがに進学に支障が出るのだ。
追い出そうとするメイに、護がぱっと顔をほころばせる。
「数学? それなら僕が教えてあげるよ」
「はっ? アンタ、中学生の数学よ、数学! 小学生の算数とは訳が違うのよ!」
「大丈夫だよ、どっちも数字だもん。見せて」
「どういう理屈よ!」
追い出そうとするのに一向に怯まない護に、ならばやって見せろと教科書を渡す。
「そのしおりが挟んであるところよ」
「ふーん・・・。あ、メイちゃん何か書く物貸して。あと紙」
護は傍らのローテーブルに教科書を置いた。
「鞄にルーズリーフとペンケースが入ってるわよ」
「じゃあ借りるね」
教科書を開いて早速問題を読む護に、どうせ出来るはずないわ、とメイは彼を放っておいて制服のリボンに手を掛けた。

<続>
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