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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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酒の肴

(ヒルまも一家)

※30000HIT御礼企画作品

+ + + + + + + + + +
まもりが第四子を妊娠したという話を聞きつけて、かつての泥門デビルバッツメンバーがヒル魔宅へと大挙して押し寄せたのはとある週の土曜日の夜だった。
「この日ならテスト期間で翌日はアメフト部も休みだし、みんなも遊びに来られるでしょう?」
というまもりの提案からだったのだ。
勿論一も二もなく賛同した小早川瀬那・鈴音夫妻を始めとして、全員がどうにか都合を付けて集まった。

みっちりと練習をこなして帰宅した妖介とアヤは玄関をくぐった途端漂ってきた匂いに顔を見合わせる。
今回は雑炊や甘いものの匂いではなく、酒の匂いがする。
普段と違う匂いがするときは要注意だ。ろくなことにならない。
リビングに続く扉を開くと、そこには既にできあがった父親の旧友がずらっと揃っていた。
持ち込んだらしい大量の酒瓶につまみ。中にはまもりの手作りもあったのだろうが、既に残っていない。
「・・・なにこの惨状」
思わず呟いた妖介に気づいた面々が声を掛ける。
「おー、ヒル魔ジュニアだー!」
「おかえり~」
「こっちに来て飲めよー!」
「いや未成年ですから! っていうか人の家で何やってるんですかあなた達!」
一応年上だし父親とそう年の変わらない人たちなので、妖介は見かけによらず丁寧な口調で喋る。
「いーやー! やっぱりヒル魔と同じ顔で同じ声なのにその喋り方は怖ェー!!」
「ヒル魔だったら絶対そんな口の利き方しねぇー!!」
だが逆に怖がられていて、妖介は微妙な顔になる。
「・・・すみませんが、うちの母は」
アヤを背後に庇いながら、母親の所在を尋ねればキッチンだという。
「母さん?」
「あ、おかえりなさい二人とも。お腹空いたでしょ?」
にこにこと笑うまもりの手には今作られたらしい大皿料理。
これはこの中に混ざって食べろ、ということなのだろうか。
どうする、と目で問えば、アヤはちらりとリビングの隅の方を見た。
そこに座って一人黙々とグラスを傾けているのはムサシだ。
アヤはそちらに行きたがってる。妖介はため息をついた。
「とりあえず着替えてからまた来るよ」
「判ったわ」
二人が着替えて再びリビングに顔を出すと、二人のための席が誂えられていた。
すなわち、車座の中心に。それをあっさりとアヤは無視してムサシの隣にちょこんと座る。
妖介は苦笑して大人しく車座の中心へと腰を下ろした。
「それにしても随分大きくなったな、ヒル魔ジュニア」
「ドーモ」
「髪の毛立てないの?」
「試合の時は立てますよ」
興味津々で尋ねられる事に妖介は食事をしながらごく普通に答える。
「ポジションはLBだっけ?」
「そうです」
「WRとかでもよかったんじゃないの?」
「守備がやりたかったんですよ」
「へー」
腹減らしの高校生男児の食欲はかくや、という風情で妖介はぺろりと山盛りの米を平らげておかわりを所望する。ムサシの隣で食事を摂っていたアヤも同じ年の女の子とは比べものにならないくらい食べているが、男女の差は大きい。
「そういえば護は?」
「今日はウチに来てるよ。美佳と一緒に勉強するってさ」
にこにこと笑うセナに妖介は上手く逃げたな、と内心思う。
要領のいい弟のこと、この事態を知れば逃げるのは必至だ。
「アヤちゃんがQBだよね?」
「そうです」
アヤがあまり喋らないのは仲間内でも知れている。
だから皆聞きたい事は妖介に尋ねることにしているのだ。
ムサシの隣であれば笑顔のアヤも見られるし、途端に不機嫌になるヒル魔も見られるので皆アヤには適度な距離を置いている。
「でも背番号は妖介くんが1なんだよね」
「あ、そうなんだ?」
「はい。アヤは11がいいって言うので」
「へえ・・・」
普段は表情が乏しいアヤは、なまじ綺麗な顔をしているだけに不機嫌になると途端に人を近づけないような雰囲気を醸し出す。逆に今の彼女は誰が見ても癒やされるような穏やかな顔をしていた。
「ムサシャンと本当にくっつけば面白いのにね」
「ハ? そうするとヒル魔がもれなく義父だぞ?」
「ハァアア?! いくらアヤが可愛くったってそりゃ嫌だぜェ」
「ハァ、それ以前にそんな年の差のガキとくっつけるかよ」
わいわいと騒ぐ面子を余所に、妖介はさっさと食事を終えた。
食器を下げに行くと冷蔵庫に向かってまもりがまたなにやら思案している。
「何やってるの、母さん」
「うん、もうちょっと何か出した方がいいかなって。ほらみんな飲んでるけどおつまみに丁度いいのがもう残ってないみたいだし」
「なら俺が何か作るよ。母さんは―――」
そこまで言って、玄関を開く音。この時間では間違いない、ヒル魔だ。
嗅ぎ慣れない匂いに察して舌打ちしていることだろう。
「父さんを抑えてて」
「・・・そうね」
神妙な顔をしてまもりはキッチンを後にする。
酒の進み具合から見てそろそろサッパリしたものが食べたいだろう、ということで即席漬けを作りつつ妖介はリビングからの音に耳を澄ます。
「こ・の・糞暇人どもが!! 家主の居ない間に随分な格好だナァ?!」
「えーいいじゃん妖兄~。せっかくみんな揃ったのにさー」
「ちょ、鈴音!」
「もーヒル魔くんてば、私が呼んだのよ。また子供が出来たって聞いてみんな心配してくれたんだから」
「喜ぶべき事であって心配する事じゃねぇだろうが!」
「アハーハー! そうだよ二人が仲睦まじい証拠じゃないか!」
「煩ェ糞バカ!」
瀧まで混じって痴話げんかに移行しそうなヒル魔とまもりから離れて、声を落として喋るギャラリーたち。
「それにしたって四人は多いんじゃねェ?」
「しかも上との年の差も結構あるだろ?」
「ムキャー! まもりさんはまだ若い!!」
「そうだけど。んー、でもねえ」
「いくら出来ただけ産ませるって言ったって―――」
そこで皆ははたと会話を止める。目の前には仁王立ちの悪魔の姿。
「人の家の家族計画に何かご不満デモ?」
にたりと笑うその目が全く笑っていない。思わず竦んでしまう。
そこに妖介ができあがった即席漬けを持ってリビングに戻って来た。
「何恥ずかしい事言ってるの父さん」
「ナニガ」
「母さんが倒れそうだよ」
即席漬けを皆の前に置きながら妖介が言うのに視線を向けると、確かにまもりが真っ赤になっている。
「~~~何をみんなに言ってるのー!!」
出来ただけ産ませるなんて! どれだけ作るつもりだったの?! とこちらが聞いても居ない事をまもりはヒル魔に問う。
にやりと笑ってヒル魔は口を開いた。
「アメフトチームができるくらいは作るつもりだったんだがナァ」
「・・・!?」
無理無理、と首を振るまもりにヒル魔はニヤニヤと笑うだけだ。
「結婚したのが二十才なんだから毎年産めばもう達成出来てたはずなんだがナァ」
だからアヤと妖介は年子だったのだ。
しかしそんな不穏な企みを察したまもりの抵抗によってその目論見は崩れる。
「イヤー!! 絶対イヤー!!」
「という、糞嫁の抵抗によって俺の計画は断念されたわけだ」
それを聞いて皆は乾いた笑いを浮かべる。あり得そうだとも、あり得ないとも。
「糞嫁はなかなか油断しなかったんで、これだけ次との間が開いた」
「はあ、成程・・・」
思わず間抜けな相槌を打ったセナにまもりは鋭く叫ぶ。
「成程じゃないわよ!」
ひゃっと首をすくめたセナに皆は更に苦笑を深める。
「ともかくそろそろ高齢出産のリスクが上がってくるから次を、と思ったわけだ」
「イヤー! 何詳細に説明してるの?!」
「・・・俺たちの前でもあんまり説明しないで欲しいよ・・・」
妖介が呆れたようにため息をつく。
両親の仲がいいのはいいが、生々しすぎる。けれどヒル魔は更に言い放つのだ。
「俺がその気になれば今からでもアメフトチームは可能だぜ?」
「それはやめて」
思わずアヤでさえ突っ込んでしまうヒル魔の台詞に、妖介もまもりもがっくりと頭を落とし。
皆はもうすっかり呆れて乾いた笑いを浮かべるのがやっとだった。

「それにしてもアヤちゃん可愛いですよね~」
「なんで試合の時にあんなに怖いキャラクターにしちゃったんですか?」
結局なし崩しに再び酒宴になってしまったのが些か不満なようだが、ヒル魔もその席に混ざっていた。
話題はヒル魔が何の仕事をしているか未だ判明していないので、自然と子供達の話になる。
アヤと妖介は普段、髪は染めていても立てたりはしていない。
ところが試合となれば話は別、ということで二人とも髪型を変えるのだ。
妖介は髪を逆立て、アヤは髪を解いて部分的に立て、ついでに化粧もする。
それもヒル魔に似せるという怖い雰囲気のキツイやつを。
「アメフトは相手をビビらせてなんぼだろ」
秋大会の開会式、春の大会ではマネージャーだとばかり思われていた金髪美少女が選手として堂々と並んでいるのを見たときのギャラリーの反応は凄まじかった。よく似た面差しの二人がにやりと笑っていたから恐怖は倍増。直線で構成された髪型、鋭い目つき、アヤに至っては何よりもその特徴的な耳。
「普段は隠してるんですよね、耳」
「小さい頃は気にしないでいたんですけど、変な連中に追いかけ回されたりして大変だったんです」
妖介が補足する。ちなみに彼の手には烏龍茶。未成年だから、と固辞している。
アヤはムサシの隣を譲らず、上機嫌でムサシと共に日本酒を煽っていた。
「糞変態どもが湧いて仕方なかったから隠すようになった」
「ヒル魔くんの耳なら怖いっていうだけの印象だったんだけどね、アヤだと妖精さんじゃないかって」
まもりの手には水。妊婦にカフェインは禁物です。
「そういう意味じゃ護くんは完全にまもり姉ちゃん似ですよね」
「そうよね~」
「・・・」
セナの台詞にまもりは賛同し、ヒル魔と妖介は沈黙する。
あれほどヒル魔に似ている子もいないだろう、と家族内でもまもり以外は思っているのだが外面は最高なので誰もが騙されているのだろう。
「護ってのは何のポジション希望なんだ?」
「アイツは主務希望だと」
「やー? そうなの? 美佳がアヤちゃんのボール捕ってたからWRかなって言ってたのに」
「ハァ、随分と短絡的だな」
「やっぱパス捕れるって重要でしょ」
わいわいと騒ぐ面々を見ながらヒル魔はビールを煽っている。
酒は嫌いでも好きでもないが、ムサシの隣で笑顔のアヤを見せられて飲まずにはいられないわけだ。
やっぱりヒル魔の娘、何年経っても諦めやしない。

まもりとヒル魔が結婚すると聞いた当初、皆祝福したが、よもやまさかここまでごく普通に幸せそうな家庭を作るとは誰も思っていなかった。
口では散々文句を言いながら、まもりは愛おしそうに腹を撫でるところを何度も見せたし、ヒル魔はさりげなくまもりのことを庇うし。
妖介もアヤも護も両親をないがしろにするようなことはなく、しっかりと前を向いて生きている。
まさに理想的な家庭と言えるだろう。・・・ヒル魔の仕事が相変わらず判明してない事を除けば。
「あれだな、悪魔も家庭を持つと得体が知れると思ったんだけどよ」
「ああ、全然訳がわからねぇよ。もう二十年くらいの付き合いになるんだぜ?」
「げっ、そんなになるか・・・」
「なんにせよ、幸せならいいよね」
達観したような雪光の声に、皆は顔を見合わせると、違いないと苦笑したのだった。

***
冬緒様リクエスト『デビルバッツメンバーから見たヒルまも家族』でした。人が多すぎて収拾がつかなく・・・!
とりあえずみんなはアヤの恋心を知っていました。秋大会の模様も書きたいもんだと思っていたのでつい余計な描写を・・・ああでも楽しかったです! 日参されていらっしゃるとの事で、これからも楽しんで頂けるようにがんばりますw
リクエストありがとうございましたー!!

冬緒様のみお持ち帰り可。
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