旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
日々の練習は勝ち進むに連れて苛烈を極めていく。
気ばかりが急いて、走り続けても足が前に行かないような錯覚に苛まれる。
けれど不安を消すのもまた練習だけなのだ。
そして今日も散々に練習を繰り返す。
だが。
「今日はここまでだ! アップ始めろー!」
「はぁあああ?! 早くねぇ?!」
「ハ? もう、終わりか?」
部の中で練習量に常に不満を漏らす(とはいえ、練習はきっちりやるけれど)三兄弟の二男三男でさえ思わず声を上げる程に本日の練習は早くに終わった。
「ここのところ、練習疲れが溜まってきてるだろ。今日は早めに終わらせて、家でゆっくり寝て明日は朝からみっちりだ!」
どぶろくの言葉にも皆なんとなく顔を見合わせるだけだ。
次の試合も近いのにこんな感じで大丈夫なのか、という雰囲気。
その様子を見ていたヒル魔が口を開いた。
「ホー? お前らそんなに練習がしたいのか?」
「え?! あの・・・」
「そ、そんなには・・・ああでも・・・」
「ハァ、落ち着かねぇんだよ」
「フゴ!」
わいわいと騒ぐ一年生に、ヒル魔はにたりと笑う。
「じゃあ走るぞ!」
それに皆は逆にほっとしたように笑みを零した。やはり練習し足りないと誰もが思っていたのだ。
ヒル魔もそれを汲んだのだろう、そう思って。
「ちょっとヒル魔くん?! 疲労が溜まると怪我の元なのよ?!」
だから早めに上がるって言ったじゃない! と騒ぐまもりにヒル魔はぴっと指を閃かせる。
「・・・判ったわ」
まもりはそれに頷いて部室へと戻っていく。さてどんな言葉で彼女を抑えたのだろう。
首を傾げる部員達に、ヒル魔はいつもの場所ではなく、とある場所へのコースを指示した。
背後に流れていく町並みを見て、セナとモン太は互いに顔を見合わせる。これは、もしかして。
併走する自転車には大きな荷物が積まれているが、そう重いものではなさそうだ。
「ヤー、やっぱりあそこに向かってるよね!」
「あそこ?」
首を傾げる雪光に、隣をインラインスケートで併走していた鈴音が指で指し示したのは銭湯。
『ヘルシー健康センター』とある。
「前に僕たち入った事あるんです」
「温泉なんですって」
「へえ」
補足説明をするセナとモン太に雪光は、だからマネージャーもこの突発マラソンに納得したのか、と理解する。
この温泉の効能書きを読むと疲労回復とあった。まさにうってつけといえよう。
「温泉なの? わー、いいねえ!」
最後尾を走っていた栗田がやっと追いついて感想を漏らしたところで、全員浮かれ気分でまもりが持ってきてくれたタオルを受け取って温泉へと入っていった。
前回セナとモン太が訪れた時は巨深高校のメンバーがいて広いはずなのに狭さを感じた銭湯だが、今回は他の客の姿もなく静かなものだった。
思わず皆で背後の悪魔もといヒル魔を伺うが、彼が特に脅したわけではないようだ。
番台に座るおばちゃんなどは見慣れない高校生たちを歓迎するように笑っていたし。
「ここには初めて来るな」
「そうなんですか?」
「ああ。仕事が終わって銭湯に行く事があっても温泉はないな」
ムサシとセナが喋りながら入った先にも他の客の姿はない。
「やっぱ温泉って匂いするなぁ」
「ハ、銭湯なんて久しぶりだ」
「・・・ってトガ、テメェジャンプ持って入るなよ」
こういうところには来ないのではないかと思われていたヒル魔もやってきた。
湯船の前でセナに何かを持ちかけているモン太を一瞥する。
「糞サル、泳ぐなよ」
「なっ、そっ、し、しないっす!」
「滅茶苦茶泳ぐ気だったなアイツ」
ムサシが耳を掻きながら突っ込む。
「僕が入ったらお湯が全部流れちゃうかなあ」
「源泉掛け流しってあったから無くなるってことはないと思うよ」
栗田が湯船に入る前に心配しているのを雪光がフォローし、皆して身体を洗い、湯船に身体を沈める。
「は~~」
「気持ちいい~~」
間延びした声を上げながら温泉に浸かる面々をムサシが眺める。
「やっぱり疲れが溜まってんだな」
「あれだけ練習してりゃな」
ふと壁の向こうから華やいだ声が聞こえてきた。
きゃあきゃあという声はまもりと鈴音の二人のもの。
普段から様々な雑用に追われるマネージャーとその手伝いで奔走するチアの二人にはいい気晴らしになったことだろう。
その声で興奮するモン太をからかう三兄弟、いつもの通り足を上げて回ろうとして石けんを踏んで転ぶ瀧、そこに慌てて駆け寄るセナと雪光、湯船に浸かる栗田の隣には小結、そこから少し離れてヒル魔とムサシ。
ヒル魔も湯船のへりに頭を預け、天を仰ぐ。
結局のところこんな所に行くといわない限り自主練習を始めてしまいそうな面子の筆頭がヒル魔だったから、その様子にムサシは安堵の吐息を付いて、静かに笑った。
そして皆は銭湯で疲れを癒し、思いがけぬゆっくりとした一時を過ごした。
行きとは違い、帰りはゆっくりとした足取りで学校へと向かう。
湯上がりに加え温泉の効能もあって心地よいだるさを感じたまま、まもりは隣にいる男を見上げた。
「ヒル魔くんも温泉入るんだね」
「ア? 風呂だろ」
「なんか想像出来ないのよね、湯船に浸かるヒル魔くんって」
まもりはくすくすと笑う。
「なんだか常にシャワーな感じ」
「まあそれもあながち間違いじゃねぇな」
ふわりと互いの身体から匂う独特の香り。
常にミントの匂いがつきまとうこの男から別の匂いなんて珍しい、とまもりは目を細める。
だがそれは隣にいるヒル魔とて同じ事。
いつもこいつは砂糖で出来てるんじゃないか、とありえない想像をさせる程に甘ったるいまもりの身体から匂うのが嗅ぎ慣れない香りだというだけで妙に落ち着かない気分になる。
「いいね、銭湯。ウチの学校の側にもあればいいのに」
「建てるか?」
ぱ、と出される手帳にまもりは苦笑して手を振る。
「いやいやいやいや。ヒル魔くんが言うとシャレにならないからやめて」
「シャレにならないのは承知だろ」
「そんな、開き直られても」
交わされる会話はそれでも険が無く柔らかくて。
段々と寒くなってくるこの時期、日が落ちてしまえば湯上がりの身体には風が冷たい。
温泉の効能でさほど湯冷めはしないけれど、吹き抜けた風にまもりはひゃっと声を上げて首をすくめる。
「色気のねぇ声」
「色気って!」
眉を寄せるまもりは、話しながらさりげなく立ち位置を変えたヒル魔に首を傾げる。
と、もう一度吹いた風はまもりを直撃せず前髪を巻き上げただけ。
どうやらヒル魔は壁になってくれたらしい。
「・・・ありがとう」
「ケッ」
判りやすいような判りにくいような優しさで隣を歩くヒル魔に、まもりはにっこりと微笑んだ。
一方その後ろを歩いている鈴音とセナはそれこそ肩が触れそうな程近づいて歩いていた。
「妖兄、お風呂に入っても髪の毛逆立ったまんまなの?」
「いや洗ってる時はさすがに降りてたよ。乾かしてたら立ってたけど」
「どういう髪の毛してるんだろ。・・・セナもそれ、くせ毛だよね?」
セナの髪も特徴的な形をしている。ふと鈴音が手を伸ばして触れた。
「あ、意外に柔らか・・・」
「・・・っ」
かーっ、と音がしそうなほどの勢いで赤面したセナに、鈴音もつられて真っ赤になる。
「う、うん、見た目は結構硬い毛質だと思われてるけど、割と柔らかいんだよね」
「そ、そう・・・なんだ。私はちょっと硬いんだよ」
「へえ?」
思わずセナが鈴音の髪に触れそうになって、はたと気づいて手を止める。
さすがにこちらから触るのはどうだろう、躊躇われて固まるセナに鈴音は小首を傾げる。
「触っていいよ」
ほら、と手を取って触らされて、またセナは赤くなる。触れた髪はさらりとしてちょっとだけ硬かった。
けれどずっと触っていたくなるような感触に、セナは苦心しながら手を下ろす。けれど。
「鈴音、寒い?」
「え?」
「手、冷えてるから」
「あ・・・」
先ほどセナの手を掴んだ指先は赤くなっている。湯上がりといえど末端はまた冷えてしまったのだろう。
セナはそれこそなけなしの勇気を振り絞って、自分から鈴音の手を捕らえた。
「あっためてあげる」
「・・・ありがと」
再び赤くなった二人はぎくしゃくと手を繋いで歩いた。
「・・・あいつら信号機か」
「交互に赤くなってかわいいわね」
「オヤ余裕の発言ですね糞マネ」
「余裕って言ったって・・・」
自転車を押しながら歩くまもりの手はふさがっているから、手を繋ぐことは出来ない。
その前に、ヒル魔が手を繋ぐなんて甘ったるいことをしたら、空から槍どころか銃弾が降り注ぐだろう。
「ヒル魔くんはそんなことしないでしょ?」
「ホー?」
笑うまもりに、ヒル魔は手を伸ばす。
指先がまもりの顎を捕らえた、と思った次の瞬間には触れるだけのキスが唇を掠めた。
「ッ!!」
「俺の隣にいるからには、そんな余裕ぶっこく暇ねぇんだぜ」
ケケケ、と笑われてまもりは真っ赤になった。
・・・そしてそんな四人のいちゃつきっぷりを帰り道の間中、延々と見せられた他の部員達は、いくら疲れが溜まろうとも今後一切あの四人とは一緒に銭湯に来ないようにしよう、と固く誓った、らしい。
***
HARU様リクエスト『ヒルまも・セナ鈴ベースで、泥門デビルバッツメンバーで巨深高校近くの銭湯に行って、ワイワイ。帰り道でこっそりヒルまも&セナ鈴がイチャイチャ(死語ですね…)している、というお話』でした。
こっそりどころかばっちり目撃されていてすみません。当人達(もちろんヒル魔は除く)はばれていないと思っているようなのでご勘弁を(笑)。楽しく書けました♪セナ鈴はほのぼのしてていいのう。
リクエストありがとうございましたー!!
HARU様のみお持ち帰り可。
気ばかりが急いて、走り続けても足が前に行かないような錯覚に苛まれる。
けれど不安を消すのもまた練習だけなのだ。
そして今日も散々に練習を繰り返す。
だが。
「今日はここまでだ! アップ始めろー!」
「はぁあああ?! 早くねぇ?!」
「ハ? もう、終わりか?」
部の中で練習量に常に不満を漏らす(とはいえ、練習はきっちりやるけれど)三兄弟の二男三男でさえ思わず声を上げる程に本日の練習は早くに終わった。
「ここのところ、練習疲れが溜まってきてるだろ。今日は早めに終わらせて、家でゆっくり寝て明日は朝からみっちりだ!」
どぶろくの言葉にも皆なんとなく顔を見合わせるだけだ。
次の試合も近いのにこんな感じで大丈夫なのか、という雰囲気。
その様子を見ていたヒル魔が口を開いた。
「ホー? お前らそんなに練習がしたいのか?」
「え?! あの・・・」
「そ、そんなには・・・ああでも・・・」
「ハァ、落ち着かねぇんだよ」
「フゴ!」
わいわいと騒ぐ一年生に、ヒル魔はにたりと笑う。
「じゃあ走るぞ!」
それに皆は逆にほっとしたように笑みを零した。やはり練習し足りないと誰もが思っていたのだ。
ヒル魔もそれを汲んだのだろう、そう思って。
「ちょっとヒル魔くん?! 疲労が溜まると怪我の元なのよ?!」
だから早めに上がるって言ったじゃない! と騒ぐまもりにヒル魔はぴっと指を閃かせる。
「・・・判ったわ」
まもりはそれに頷いて部室へと戻っていく。さてどんな言葉で彼女を抑えたのだろう。
首を傾げる部員達に、ヒル魔はいつもの場所ではなく、とある場所へのコースを指示した。
背後に流れていく町並みを見て、セナとモン太は互いに顔を見合わせる。これは、もしかして。
併走する自転車には大きな荷物が積まれているが、そう重いものではなさそうだ。
「ヤー、やっぱりあそこに向かってるよね!」
「あそこ?」
首を傾げる雪光に、隣をインラインスケートで併走していた鈴音が指で指し示したのは銭湯。
『ヘルシー健康センター』とある。
「前に僕たち入った事あるんです」
「温泉なんですって」
「へえ」
補足説明をするセナとモン太に雪光は、だからマネージャーもこの突発マラソンに納得したのか、と理解する。
この温泉の効能書きを読むと疲労回復とあった。まさにうってつけといえよう。
「温泉なの? わー、いいねえ!」
最後尾を走っていた栗田がやっと追いついて感想を漏らしたところで、全員浮かれ気分でまもりが持ってきてくれたタオルを受け取って温泉へと入っていった。
前回セナとモン太が訪れた時は巨深高校のメンバーがいて広いはずなのに狭さを感じた銭湯だが、今回は他の客の姿もなく静かなものだった。
思わず皆で背後の悪魔もといヒル魔を伺うが、彼が特に脅したわけではないようだ。
番台に座るおばちゃんなどは見慣れない高校生たちを歓迎するように笑っていたし。
「ここには初めて来るな」
「そうなんですか?」
「ああ。仕事が終わって銭湯に行く事があっても温泉はないな」
ムサシとセナが喋りながら入った先にも他の客の姿はない。
「やっぱ温泉って匂いするなぁ」
「ハ、銭湯なんて久しぶりだ」
「・・・ってトガ、テメェジャンプ持って入るなよ」
こういうところには来ないのではないかと思われていたヒル魔もやってきた。
湯船の前でセナに何かを持ちかけているモン太を一瞥する。
「糞サル、泳ぐなよ」
「なっ、そっ、し、しないっす!」
「滅茶苦茶泳ぐ気だったなアイツ」
ムサシが耳を掻きながら突っ込む。
「僕が入ったらお湯が全部流れちゃうかなあ」
「源泉掛け流しってあったから無くなるってことはないと思うよ」
栗田が湯船に入る前に心配しているのを雪光がフォローし、皆して身体を洗い、湯船に身体を沈める。
「は~~」
「気持ちいい~~」
間延びした声を上げながら温泉に浸かる面々をムサシが眺める。
「やっぱり疲れが溜まってんだな」
「あれだけ練習してりゃな」
ふと壁の向こうから華やいだ声が聞こえてきた。
きゃあきゃあという声はまもりと鈴音の二人のもの。
普段から様々な雑用に追われるマネージャーとその手伝いで奔走するチアの二人にはいい気晴らしになったことだろう。
その声で興奮するモン太をからかう三兄弟、いつもの通り足を上げて回ろうとして石けんを踏んで転ぶ瀧、そこに慌てて駆け寄るセナと雪光、湯船に浸かる栗田の隣には小結、そこから少し離れてヒル魔とムサシ。
ヒル魔も湯船のへりに頭を預け、天を仰ぐ。
結局のところこんな所に行くといわない限り自主練習を始めてしまいそうな面子の筆頭がヒル魔だったから、その様子にムサシは安堵の吐息を付いて、静かに笑った。
そして皆は銭湯で疲れを癒し、思いがけぬゆっくりとした一時を過ごした。
行きとは違い、帰りはゆっくりとした足取りで学校へと向かう。
湯上がりに加え温泉の効能もあって心地よいだるさを感じたまま、まもりは隣にいる男を見上げた。
「ヒル魔くんも温泉入るんだね」
「ア? 風呂だろ」
「なんか想像出来ないのよね、湯船に浸かるヒル魔くんって」
まもりはくすくすと笑う。
「なんだか常にシャワーな感じ」
「まあそれもあながち間違いじゃねぇな」
ふわりと互いの身体から匂う独特の香り。
常にミントの匂いがつきまとうこの男から別の匂いなんて珍しい、とまもりは目を細める。
だがそれは隣にいるヒル魔とて同じ事。
いつもこいつは砂糖で出来てるんじゃないか、とありえない想像をさせる程に甘ったるいまもりの身体から匂うのが嗅ぎ慣れない香りだというだけで妙に落ち着かない気分になる。
「いいね、銭湯。ウチの学校の側にもあればいいのに」
「建てるか?」
ぱ、と出される手帳にまもりは苦笑して手を振る。
「いやいやいやいや。ヒル魔くんが言うとシャレにならないからやめて」
「シャレにならないのは承知だろ」
「そんな、開き直られても」
交わされる会話はそれでも険が無く柔らかくて。
段々と寒くなってくるこの時期、日が落ちてしまえば湯上がりの身体には風が冷たい。
温泉の効能でさほど湯冷めはしないけれど、吹き抜けた風にまもりはひゃっと声を上げて首をすくめる。
「色気のねぇ声」
「色気って!」
眉を寄せるまもりは、話しながらさりげなく立ち位置を変えたヒル魔に首を傾げる。
と、もう一度吹いた風はまもりを直撃せず前髪を巻き上げただけ。
どうやらヒル魔は壁になってくれたらしい。
「・・・ありがとう」
「ケッ」
判りやすいような判りにくいような優しさで隣を歩くヒル魔に、まもりはにっこりと微笑んだ。
一方その後ろを歩いている鈴音とセナはそれこそ肩が触れそうな程近づいて歩いていた。
「妖兄、お風呂に入っても髪の毛逆立ったまんまなの?」
「いや洗ってる時はさすがに降りてたよ。乾かしてたら立ってたけど」
「どういう髪の毛してるんだろ。・・・セナもそれ、くせ毛だよね?」
セナの髪も特徴的な形をしている。ふと鈴音が手を伸ばして触れた。
「あ、意外に柔らか・・・」
「・・・っ」
かーっ、と音がしそうなほどの勢いで赤面したセナに、鈴音もつられて真っ赤になる。
「う、うん、見た目は結構硬い毛質だと思われてるけど、割と柔らかいんだよね」
「そ、そう・・・なんだ。私はちょっと硬いんだよ」
「へえ?」
思わずセナが鈴音の髪に触れそうになって、はたと気づいて手を止める。
さすがにこちらから触るのはどうだろう、躊躇われて固まるセナに鈴音は小首を傾げる。
「触っていいよ」
ほら、と手を取って触らされて、またセナは赤くなる。触れた髪はさらりとしてちょっとだけ硬かった。
けれどずっと触っていたくなるような感触に、セナは苦心しながら手を下ろす。けれど。
「鈴音、寒い?」
「え?」
「手、冷えてるから」
「あ・・・」
先ほどセナの手を掴んだ指先は赤くなっている。湯上がりといえど末端はまた冷えてしまったのだろう。
セナはそれこそなけなしの勇気を振り絞って、自分から鈴音の手を捕らえた。
「あっためてあげる」
「・・・ありがと」
再び赤くなった二人はぎくしゃくと手を繋いで歩いた。
「・・・あいつら信号機か」
「交互に赤くなってかわいいわね」
「オヤ余裕の発言ですね糞マネ」
「余裕って言ったって・・・」
自転車を押しながら歩くまもりの手はふさがっているから、手を繋ぐことは出来ない。
その前に、ヒル魔が手を繋ぐなんて甘ったるいことをしたら、空から槍どころか銃弾が降り注ぐだろう。
「ヒル魔くんはそんなことしないでしょ?」
「ホー?」
笑うまもりに、ヒル魔は手を伸ばす。
指先がまもりの顎を捕らえた、と思った次の瞬間には触れるだけのキスが唇を掠めた。
「ッ!!」
「俺の隣にいるからには、そんな余裕ぶっこく暇ねぇんだぜ」
ケケケ、と笑われてまもりは真っ赤になった。
・・・そしてそんな四人のいちゃつきっぷりを帰り道の間中、延々と見せられた他の部員達は、いくら疲れが溜まろうとも今後一切あの四人とは一緒に銭湯に来ないようにしよう、と固く誓った、らしい。
***
HARU様リクエスト『ヒルまも・セナ鈴ベースで、泥門デビルバッツメンバーで巨深高校近くの銭湯に行って、ワイワイ。帰り道でこっそりヒルまも&セナ鈴がイチャイチャ(死語ですね…)している、というお話』でした。
こっそりどころかばっちり目撃されていてすみません。当人達(もちろんヒル魔は除く)はばれていないと思っているようなのでご勘弁を(笑)。楽しく書けました♪セナ鈴はほのぼのしてていいのう。
リクエストありがとうございましたー!!
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鳥(とり)
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性別:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
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