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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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悪魔の囁き(7)



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「いらっしゃいませ!」
ショーケースの向こうにやって来た人影に、まもりは明るく声を掛ける。
今まで一度も働いたことがないんです、という彼女に、雇用側は当初使い物になるのかと心配していた。
いかにも大事にされていた風情の奥様が何を好きこのんでパートなどに来るのか。
単なるお遊びのつもりだろう、長続きしないだろう。
そんな穿った考えの社員や同僚達の予想に反して、まもりはくるくるとよく働いた。
明るく気だての良いまもりはあっという間に店に馴染んだ。
彼女がいるだけで周囲が華やぐのだ。
美人だし、それを鼻に掛けることもなく、面倒見も良くてまさに良妻賢母を絵に描いたような人物で。
本当に働いたことがないのか、と再三尋ねられてもまもりはそうですとしか言えない。
まさに『かゆいところに手が届く』というのがまもりに対する評価だった。
最近はいっそ正社員にならないか、と打診があったくらいだ。
それはさすがに無理です、とは断ったけれど。
仕事ぶりが認められたという事実はますますまもりのやる気に火を付けた。
そうして、彼女は日々楽しそうに仕事をこなすに至っている。
「すみません、これ二つ下さい」
「はい、こちらですね。保冷剤はおつけしますか?」
「お願いします」
丁寧な所作でシュークリームを包み、差し出す。
受け取った客に頭を下げ、まもりは一息ついた。
店内に人影はない。そろそろ閉店時刻に近づいている。
店内にはまもりとパティシエが一人いるきりだ。
今日はこのまま終わるかしら、そうしたらこの余ったシュークリームはまた貰えるかしら。
そんなことを考えていたまもりの前に、再び人影が立つ。
「いらっしゃ―――――――――」
そしてそのまままもりは固まった。
白昼夢かと思った。
目の前に立っているのは、二年間は帰ってこないと言っていたはずの、ヒル魔だったのだから。
相変わらずの黒ずくめで、毒ガスでも嗅がされたのではないか、というくらい厳しい顔つきで。
「糞甘臭ェ」
「・・・そ」
それはそうでしょうここは雁屋です大体あなた二年間は帰ってこないって言ってたのにいきなり帰ってくるなんて夕飯どうしよう護か妖介が作ってくれているかしら小夏ちゃんが遊びに来てれば一緒にご飯食べようかしら誘ってみようあかりは今日何が食べたいって言ってたかしら――――――――
まもりの心中を察したヒル魔がピンと片眉を上げた。
「現実逃避中大変申し訳アリマセンガ早々に準備をお願いシマス」
「え」
ヒル魔の手がまもりの腕を掴み、強引に外に引きずり出される。
「ッ!?」
「帰るぞ」
「ま、まだ仕事中なのに!」
「我が家の一大事件が勃発したんだとよ」
「ヒル魔くんが帰ってきた以上のことが?!」
「以上のことが」
「何が!? なんで!?」
「煩ェ、百聞は一見にしかず、だ」
暴れるまもりを軽々と肩に担ぎ、ヒル魔は厨房から騒ぎを聞きつけ出てきたパティシエに視線を向ける。
「おいそこの糞ヒゲクマ」
「お、俺!? っていうか、アンタ誰だ?!」
「俺はこいつの夫だ」
それにパティシエは目を丸くした。
穏やかなまもりの人柄から察するに、その夫もきっと穏やかで柔和な男性だと思われたのに。
全くもって予想外。未だエプロン姿のまもりを担ぎ上げたまま悪魔のような男が平然と口を開く。
「コイツは連れ返る」
「や、ちょっと!? ヒル魔くん、下ろし・・・」
悲鳴混じりのその声に、ヒル魔がぎろりとまもりを睨め付けた。
「煩ェ黙れこの場で一発ヤられるか大人しく連れ去られるかどっちだどっちを選ぶんだ三秒で答えろ」
句読点もなく流れるように迫られ、その本気度を悟ったまもりは間髪入れず答える。
「帰ります!」
「よし」
そのまま人一人担いでるとは思えない足取りで出て行く彼に為す術なく、糞ヒゲクマと言われたパティシエは呆然とその姿を見送ってしまったのだった。


<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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