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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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誰よりも側に

(キッド×比奈)
※15000HITお礼企画作品。

+ + + + + + + + + +

彼女に、なんて。
そんな大それた事は思わないんだけど。

「・・・比奈?」
「ッ」
びく、と箸を持つ手が震えた。
「ぼーっとしちゃって。大丈夫?」
「なにが?」
「チアとマネと両方やるなんて、やっぱきついでしょ?」
目の前にはクラスの友人。今は昼休みで、お弁当を食べているところ。
大して食べ進まず止まってしまったので不審がられたようだ。
「うーん、確かにきついけど、でも好きでやってることだし」
にっこりと笑う。嘘ではない。好き、というのが掛かるのがどこかはあえて言わないけど、
「すごいよね~」
「うん、私には出来ない」
口々に褒められて、私はそんなことないよ、といいながらお弁当を食べ進める。
「ふーん、そうやってポイント稼ぐんだぁ」
「男受けしそうよね~、さすがミス西部サマ」
背後からこれ見よがしな嫌味が聞こえてきた。それを聞きとがめた友人が顔を顰め、立ち上がろうとするのを止める。
「比奈!」
小声で名を呼ばれ、私は肩をすくめる。
どうやったって、女の子だけの集団でこういったことが起こるのはしょうがないことだ。
万人に受け入れられたいと思う博愛精神で臨んでいる両立ではないし、それが目的じゃない。
あからさまに無視されて、彼女たちは苛立ったようだった。
「お高くとまっちゃってぇ」
「自分は何でも出来るとか思っちゃう人ですかぁ」
「ちょっと・・・」
たまりかねた友人が立ち上がろうとしたけれど。
「相内くん」
落ち着いた声が私を呼ぶ。
「キッドくん」
「ごめんね、突然。・・・取り込み中?」
ぽやん、と笑う彼の顔に、私は内心引きつりつつも笑顔を見せる。
友達に断って立ち上がり、近寄ろうとするが彼はそれを制して近づいてきた。
これは何か企んでる、そんな顔だ。
「ううん、大丈夫よ。何?」
「部活のメニューなんだけど、ここがね」
歩きながらキッドくんの足がすっと動き、そしてこちらに嫌味を言っていた女の子の座っている椅子の脚に・・・。
「きゃぁあ!?」
「うっわ、どうしたの!?」
派手に音を立てて、キッドくんの後ろで女の子が転んでいる。キッドくんはちらりと彼女たちを一瞥しただけだ。
「危ないねぇ」
あまりにさりげなく素早い仕草だったので、きっと誰も気づいていないだろう。
やっぱりそういうことをするのだ、と私はちらりと彼を見上げる。
いつものちょっと困ったように見える笑みが少し綻んでいる。
背後で転んだ子たちが騒いでいるので、彼との会話は他の人には聞き取れない。
「相内くんがどれだけ努力してるか、みんな判ってるよ」
そんなことは知ってるわ、と私はため息をついてみせる。
「言わせたい人には言わせればいいの。それくらい判ってるでしょ?」
「そうだねぇ、知ってるね」
にこにこと笑って彼は続ける。そして突如声のトーンが一気に下がった。
「でも、それとこれとは別だね」
口実でしかなかった練習メニュー用紙を私に渡して、キッドくんは教室を出て行った。


色々と謎が多くてアメフトの技術もあって頭も良くて、完璧みたいに見えたキッドくん。
そんな彼の存在を知って、もっと彼を見ていたくてチアとマネを両方やって。
こんな風に子供じみたことをするところまで見られるようになって。
更に彼女になりたい、なんて言ったら贅沢かしら。


「やっぱすごいよね、比奈って」
「うん、彼氏のためでもあそこまで頑張るのって私は出来ない」
「キッドくんもなんだかんだで比奈のこと大事にしてるしね」
「そうだよね~羨ましい」

実は、知らぬは比奈ばかりだった、というのが判明するのはまだ少し先のお話。

***
まずは手慣らし程度の長さで申し訳ないですが、キッド×比奈でした。どうにもどっかにキッド=大人、比奈=自己中、というのが頭にあったので、じゃあその逆を行こうか、と自分に挑戦してみた次第です。
書いていて、オコサマキッドは楽しかったし、優しい比奈は不思議な感じでした(笑)

アイシー缶ののりちこさんのみお持ち帰り可。

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