旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
氷室丸子は、目の前に差し出された代物を無表情に見下ろした。
差し出す男は円子令司。
「これは何」
「似合うと思って」
「そう」
お互い本当に言いたいことは違うのだが、それを判っていてなおそういう会話しかしない。
傍目から見れば成立しないが、本人たちはしっかり通じている。
もっとも、それを口にした途端出てくるのは『だって俺マリアのこと愛しちゃってるから』というふざけた回答だ。
「重いから持ちたくないわ」
「オッケー。家に送らせておくよ」
言うが早いか、どこぞの誰かが花束を持って去っていく。
きっとマルコの息が掛かった誰かだろうが、その存在が誰であろうと二人には関係ない。
「相変わらずね」
「これが俺、っちゅう話」
肩をすくめる彼に、氷室の視線は冷たい。それをものともせず、マルコは愛しい女の手を取った。
「さあてデートと参りましょうか、マリア?」
呆れた顔の氷室は、それでも手をふりほどくことはなかった。
話題のデートスポットは先日オープンしたばかりの、海沿いのショッピングモール。
誰もが楽しげに笑いさざめき、時折子供の泣き声わめき声が混じるのがまた微笑ましい。
が、この二人はそんなのが聞こえているのかと思いたくなるくらい独自の道を行っていた。
「ねえ、マリアはこの中だったら何がいい?」
「似合わないわ」
「そんなことないでしょ、ほら」
差し出される洋服は可愛らしい花柄のワンピース。
見る分にはかわいい、手にとってもかわいい、ただし氷室が着るとなると話は別だ。
「似合いそうな子なら沢山居るでしょ」
「マリアに似合うって言ってるのに」
「随分な節穴だわ」
「対マリアだけにはね」
嫌味もさらりと流し流され、二人は険悪なんだか仲がいいんだか判らない状態で店を渡り歩く。
その都度何かを買っているマルコなのに、荷物は増えない。
おそらく纏めて誰かが送るのだろう。・・・届いても開けないわよ、と内心でだけ氷室は呟く。
「マリア、そろそろお茶しない?」
指し示されたのは洒落たカフェ。彼は言うが早いかさっさと店に向かい、海を望む窓際席に座った。
キラキラと冬の日差しを浴びる海面。吹き付ける海風は冷たいけれど、窓越しから眺めるそれは嫌じゃない。
「マリアはカフェモカでいい?」
「ええ」
好みが知れているのはもうとっくの昔から。店員にカフェモカと冬でも変わらず自分用にコーラを注文する。
「綺麗なところでしょ、ここ」
「そうね」
「マリアと来たら楽しいかと思って」
「そんなことを言うのは貴男くらいよ」
ちらりと視線をやれば、マルコは肩をすくめる。
「惚れた女と一緒に遊びに来て、楽しくない野郎がいるかっちゅう話だよ」
肩をすくめる仕草に、氷室は淡々としたまま口を開いた。
「相変わらずね」
「ん?」
微笑を絶やさない軽薄な男、というマルコの前でカップを置く。
「貴男が本気だっていうことくらい、目を見れば判るわ」
伊達に側にいたわけじゃない、という言外の言葉に、マルコは僅かに目を見開く。
「そんな風にしているから私もそういう対応をするのよ。・・・たまには真面目にしたらどう?」
ご馳走様、そう言って立ち上がろうとする氷室の手を、マルコの腕が捉える。
力を熱望し、そのために手段を選ばず、色々と切り捨てて結局は勝てなかったことに肩を落とした男。
その力を破壊以外に向けられなかった男が、傷つけることなく氷室の腕を優しい力で押し止める。
「あー・・・」
少し困ったような、照れたような。
普段から飄々と表情を崩さないマルコにしては珍しく言いよどむと、とりあえず座って、と氷室を席に戻す。
「マリアの言い分ももっとも、だ・よ・ね~」
軽い口調とは裏腹に一度ため息をつくと、マルコは笑みを消した。
その顔に氷室は内心たじろぐ。
表情には出さないけど。
「俺、欲しいものがあったら手段は選ばないんだ」
「知ってるわ」
「でも怖がられちゃ本末転倒かな、っちゅう話だよ」
じっと見つめる瞳がらしくもなく不安を滲ませていて、氷室は呆れたようにため息をつく。
そうして普段は滅多に見せない、柔らかい笑みを一つ。
「そんな浅い関係なら、とっくに離れてるわ」
「か―――――――!!」
思わず体勢を崩すマルコに、氷室は意味もなく空のカップをいじる。
無表情なままのその頬がほんのりと赤いのに、マルコはもう何も言えない。
しばらくの沈黙の後、こちらもほんのりと頬を染めてマルコは苦笑する。
「俺、やっぱりマリアには叶わない気がする・・・っちゅう話」
それに氷室は答えない。
代わりに体勢を崩したときからテーブルに投げ出されたままの右手に、そっと指を触れさせる。
この手がどれだけ努力してきたか、知ってるから。
あれを間近で見ていて、本気じゃないでしょう、なんて言えないから。
「・・・好きだよ」
「ええ」
冬の晴れた日は穏やかに、二人のことをあたたかく照らしていた。
***
昂様リクエスト『マルコ×丸子』でした。氷室先輩どう表記するか悩みました(笑)マルコの口調を何度も読み返してそれらしく仕上げたつもりですが・・・どうでしょう? きっと二人でデートに行くとマルコはマリアのためなら見境無く色々な物を購入してしまいそうな気がします。それを諫められてもめげないマルコ。実はマリアはカワイイ物が好きで部屋がファンシーで、それをマルコも判っているとよりよろしいと思うのであります!
リクエストありがとうございましたー!!
昂様のみお持ち帰り可。
リクエスト内容(作品と合っているかどうか確認のために置きます)以下反転して下さい。
「付き合ってるマルコ×丸子。デートに薔薇の花束を持ってきたマルコに盛大に呆れる丸子。一通りデートを終え喫茶店に入り、丸子はいつも本気にしてくれないとちゃかすマルコに、本気なのは目を見れば分かるが表現がおかしい、たまには真面目な顔でもしたらと丸子は返す。マルコはなるほどと一転して真面目な顔で口説き始める。丸子は嘆息してそれに乗っかり笑顔でこちらも口説き返す。最後はお互い参りましたと笑う話」意外とこの二人は書きやすく楽しかったです♪
差し出す男は円子令司。
「これは何」
「似合うと思って」
「そう」
お互い本当に言いたいことは違うのだが、それを判っていてなおそういう会話しかしない。
傍目から見れば成立しないが、本人たちはしっかり通じている。
もっとも、それを口にした途端出てくるのは『だって俺マリアのこと愛しちゃってるから』というふざけた回答だ。
「重いから持ちたくないわ」
「オッケー。家に送らせておくよ」
言うが早いか、どこぞの誰かが花束を持って去っていく。
きっとマルコの息が掛かった誰かだろうが、その存在が誰であろうと二人には関係ない。
「相変わらずね」
「これが俺、っちゅう話」
肩をすくめる彼に、氷室の視線は冷たい。それをものともせず、マルコは愛しい女の手を取った。
「さあてデートと参りましょうか、マリア?」
呆れた顔の氷室は、それでも手をふりほどくことはなかった。
話題のデートスポットは先日オープンしたばかりの、海沿いのショッピングモール。
誰もが楽しげに笑いさざめき、時折子供の泣き声わめき声が混じるのがまた微笑ましい。
が、この二人はそんなのが聞こえているのかと思いたくなるくらい独自の道を行っていた。
「ねえ、マリアはこの中だったら何がいい?」
「似合わないわ」
「そんなことないでしょ、ほら」
差し出される洋服は可愛らしい花柄のワンピース。
見る分にはかわいい、手にとってもかわいい、ただし氷室が着るとなると話は別だ。
「似合いそうな子なら沢山居るでしょ」
「マリアに似合うって言ってるのに」
「随分な節穴だわ」
「対マリアだけにはね」
嫌味もさらりと流し流され、二人は険悪なんだか仲がいいんだか判らない状態で店を渡り歩く。
その都度何かを買っているマルコなのに、荷物は増えない。
おそらく纏めて誰かが送るのだろう。・・・届いても開けないわよ、と内心でだけ氷室は呟く。
「マリア、そろそろお茶しない?」
指し示されたのは洒落たカフェ。彼は言うが早いかさっさと店に向かい、海を望む窓際席に座った。
キラキラと冬の日差しを浴びる海面。吹き付ける海風は冷たいけれど、窓越しから眺めるそれは嫌じゃない。
「マリアはカフェモカでいい?」
「ええ」
好みが知れているのはもうとっくの昔から。店員にカフェモカと冬でも変わらず自分用にコーラを注文する。
「綺麗なところでしょ、ここ」
「そうね」
「マリアと来たら楽しいかと思って」
「そんなことを言うのは貴男くらいよ」
ちらりと視線をやれば、マルコは肩をすくめる。
「惚れた女と一緒に遊びに来て、楽しくない野郎がいるかっちゅう話だよ」
肩をすくめる仕草に、氷室は淡々としたまま口を開いた。
「相変わらずね」
「ん?」
微笑を絶やさない軽薄な男、というマルコの前でカップを置く。
「貴男が本気だっていうことくらい、目を見れば判るわ」
伊達に側にいたわけじゃない、という言外の言葉に、マルコは僅かに目を見開く。
「そんな風にしているから私もそういう対応をするのよ。・・・たまには真面目にしたらどう?」
ご馳走様、そう言って立ち上がろうとする氷室の手を、マルコの腕が捉える。
力を熱望し、そのために手段を選ばず、色々と切り捨てて結局は勝てなかったことに肩を落とした男。
その力を破壊以外に向けられなかった男が、傷つけることなく氷室の腕を優しい力で押し止める。
「あー・・・」
少し困ったような、照れたような。
普段から飄々と表情を崩さないマルコにしては珍しく言いよどむと、とりあえず座って、と氷室を席に戻す。
「マリアの言い分ももっとも、だ・よ・ね~」
軽い口調とは裏腹に一度ため息をつくと、マルコは笑みを消した。
その顔に氷室は内心たじろぐ。
表情には出さないけど。
「俺、欲しいものがあったら手段は選ばないんだ」
「知ってるわ」
「でも怖がられちゃ本末転倒かな、っちゅう話だよ」
じっと見つめる瞳がらしくもなく不安を滲ませていて、氷室は呆れたようにため息をつく。
そうして普段は滅多に見せない、柔らかい笑みを一つ。
「そんな浅い関係なら、とっくに離れてるわ」
「か―――――――!!」
思わず体勢を崩すマルコに、氷室は意味もなく空のカップをいじる。
無表情なままのその頬がほんのりと赤いのに、マルコはもう何も言えない。
しばらくの沈黙の後、こちらもほんのりと頬を染めてマルコは苦笑する。
「俺、やっぱりマリアには叶わない気がする・・・っちゅう話」
それに氷室は答えない。
代わりに体勢を崩したときからテーブルに投げ出されたままの右手に、そっと指を触れさせる。
この手がどれだけ努力してきたか、知ってるから。
あれを間近で見ていて、本気じゃないでしょう、なんて言えないから。
「・・・好きだよ」
「ええ」
冬の晴れた日は穏やかに、二人のことをあたたかく照らしていた。
***
昂様リクエスト『マルコ×丸子』でした。氷室先輩どう表記するか悩みました(笑)マルコの口調を何度も読み返してそれらしく仕上げたつもりですが・・・どうでしょう? きっと二人でデートに行くとマルコはマリアのためなら見境無く色々な物を購入してしまいそうな気がします。それを諫められてもめげないマルコ。実はマリアはカワイイ物が好きで部屋がファンシーで、それをマルコも判っているとよりよろしいと思うのであります!
リクエストありがとうございましたー!!
昂様のみお持ち帰り可。
リクエスト内容(作品と合っているかどうか確認のために置きます)以下反転して下さい。
「付き合ってるマルコ×丸子。デートに薔薇の花束を持ってきたマルコに盛大に呆れる丸子。一通りデートを終え喫茶店に入り、丸子はいつも本気にしてくれないとちゃかすマルコに、本気なのは目を見れば分かるが表現がおかしい、たまには真面目な顔でもしたらと丸子は返す。マルコはなるほどと一転して真面目な顔で口説き始める。丸子は嘆息してそれに乗っかり笑顔でこちらも口説き返す。最後はお互い参りましたと笑う話」意外とこの二人は書きやすく楽しかったです♪
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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