旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
セナはビールを片手にひな壇の上に上がる。
「陸、おめでとう」
「サンキュ、セナ」
かなり酒を飲まされて赤い顔をしながらも、陸は嬉しげに笑う。
隣ではその妻となった女性が同じように顔を赤らめてぺこりと頭を下げた。
まさかこんなに早く結婚するなんて、とか先輩を差し置いて、というやっかみ半分祝福半分の声はあちらこちらから響いている。
「どれくらい付き合ってたんだっけ?」
「実質二年かな」
「そんなに短かったっけ?」
「その前から四人で旅行に行ったりしてたから長く感じるんじゃないか?」
「そっか」
この新郎新婦二人とは鈴音も含め、四人で行動することが多かった。
セナと陸は共にアメフト選手として活躍していたため、たまのオフに顔を合わせやすかった。
しみじみした気分になったが、セナは次の人に場所を譲った。
何しろ相手は今日の主役だ、あまり長いこと側には居られない。
席に戻ると皆大分酒が回っているようだった。
平然としているのはヒル魔くらいで、後はみなほどよくへべれけている。
悪魔は酒にも強いのか、といううめきにもフンと鼻で笑うだけだ。
隣でまもりは早々にギブアップし、今はオレンジジュースを飲んでいる。
「こういう風に見ると、みんなお酒にはあんまり強くないんだね」
「そうみたいだね」
「オラァア! セナ、飲んでるかぁ?!」
「ハ、一人で逃げるなよ」
がっしと両脇から伸びてきたのは黒木・戸叶の二人の腕で。
あの頃よりはずっと強くなったとはいえ、セナの腕っ節はこの二人には敵わない。
「さあ、飲め!」
「ひぃいい」
十文字に酒を注がれ、セナは嫌な汗を掻きながらグラスに口を付ける。
ちらりと視線を向けた先では、陸も同じような状況で酒を飲まされ続けていた。
ほぼ野放し状態だった披露宴は堅苦しさもなく終了し、皆ほろ酔い加減で家路に就く。
セナと鈴音は駅に向かって歩いていた。裏通りのせいか、周囲にはあまり人影がない。
「花嫁さん、綺麗だったね~!」
少々のアルコールと雰囲気に酔った鈴音ははしゃぎながら歩いている。
「陸っくんとかきっどんとか、西部の特定の人とは飲んだことあったじゃない? でもその他の人たちとこんなに話せて、すっごく楽しかった!」
「うん、楽しかったね」
まるでボールのようにぴょんぴょん跳ねてどこかへ行ってしまいそうな鈴音の手をセナが取る。
「またこんな機会があったらいいね!」
「そうだね」
誰とでもうち解ける鈴音はこういった集まりが非常に好きで、その輪の中心にいる姿はとても似合っている。
「鈴音」
「んー?」
変わらず跳ねるような足取りの鈴音に、セナは静かに口を開いた。
「こうやってみんなで騒ぐのもいいけど」
「けど?」
「あの二人みたいに、僕たちも二人で毎日過ごせたらいいなって思ったよ」
「―――――ッ!!」
鈴音の足がぴた、と止まった。
ただでさえ丸く大きな目が見開かれて、このままじゃ落ちてしまいそうだ、とセナはそんな心配をしてしまう。
「それって・・・」
「陸には先越されちゃったし、勢いって思われるのも嫌なんだけど・・・できればこの先もずっと一緒がいいな」
苦笑しながらもセナは真っ直ぐに鈴音の目を見る。
以前は同じくらいの高さにあった視線は、大分低くなった。
それが遠くなったようで嫌だと以前鈴音には言われたけれど、セナにとっては嬉しい距離の変化だった。
背が伸びた分だけ、鈴音を守れるような気がして。
今はセナの手にある小さな柔らかい彼女のそれを、照れることなく掴めるようになって。
もちろん今、返事待ちのセナが緊張しているのはきっと鈴音にはばれている。手は繋いだままだし。
鈴音はほんの少し黙って、それからこれ以上ない程に嬉しそうな顔をしてセナに抱きついた。
いつかは受け止めることも出来なかった身体を、揺らぐことなく抱き留めて。
「・・・嬉しい」
くぐもった小さい声がセナの胸元から聞こえる。
セナもその身体を抱きしめることで答えた。
と。
そんな甘い空気を一蹴する騒々しい一団に二人はあっという間に取り囲まれた。
「ハァアアア! おっめでとー!!!」
「ハァ、大丈夫だと思ってても見てて怖ェな!」
「フゴ!!」
「チクショー! セナの裏切り者―!!」
「アハーハー! マイシスターをよろしく、マイブラザー!」
「ハ、瀧の弟になんのか、セナ」
「そう聞くと祝っていいのか微妙だな・・・とにかくおめでとうさん!」
一部祝ってないような台詞だが、見れば黒木・戸叶・十文字に小結、モン太、瀧、そしてなぜだか新郎の陸までいる。
「って、ええ?! り、陸、奥さんほっぽり出して何やってんの?!」
「やー!? 陸っくん新婚早々それはまずいよちょっと!!」
「大丈夫だ、後から来るって」
「「呼んだのー?!」」
「オラオラこのままじゃ近所迷惑だ! さっさとどっか店に行くぞ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らがそのままの勢いで流れ、徹夜の飲み会開催が決定した頃。
「どうなったかねぇ、諸兄らの後輩」
こちらは居酒屋とはほど遠い喫茶店。
そこでコーヒーを傾けるキッドに、ヒル魔はぴんと片眉を上げただけで特に口に出さなかった。
「みんななら大丈夫よ。もう子供じゃないんだし」
「煩ェ糞嫁、テメェそんなもん喰いながら喋るな」
「そんなもんとは何よ! ケーキよ、ケーキ!!」
「あー糞甘臭ェ」
コースとしては結構な量の食事が出ていたはずなのに、まもりはそれら全てを平らげた上で今そのケーキだ。しかも二つ目。
あの状況を見た後ならヒル魔でなくてもげんなりしそうな光景ではある。
しかも天然発言は今も健在か、とキッドも苦笑する。
ちなみに隣では鉄馬もまもりと共にケーキを食べていたりする。
「セナくんは今日決めるつもりでいたんだろ」
「あー、だからセナくんテンション低かったんだ!」
「高いも低いもあんまり接点ないだろ、井芹」
「だって友達の結婚式って言ったらさあ、こう飲ませて飲ませて飲ませて洗いざらい吐かせるもんでしょ?」
波多と井芹の会話を横で聞きつつ、ムサシと雪光もセナのことを思い返す。
試合となると肝が据わるのか、一気に闘争心むき出しになるヤツだけれど、普段の生活は腰の低い彼。
けれどアメフトに携わるうちに彼も強く逞しくなった。
「・・・大分セナくんも成長しましたよねえ」
「そうだな。今日はヒィヒィ言ってたが」
「どうなったかな」
ここの面子は保護者の如く一つ年下の奴らの事ばかり考えている。
それを見て、ヒル魔はケ、と小さく吐き捨てるように言った。
「どうせ奴らはまた飲んで騒いでるんだろ」
心配なんてするだけ無駄だ、という台詞はもっともで。
後輩たち程ではないが、賑やかな喫茶店の一角にて。
ヒル魔夫婦の会話。
「次はセナと鈴音ちゃんか。御祝儀弾まないとね」
「なんだ、一応わかってんだな」
***
昂様リクエスト『未来セナ鈴』でした! つい先日先輩が結婚し、その席に招かれたので、ネタにしようとじっくり見てきましたがまるっきり生かせませんでした! だってリクエストがセナ鈴のお式じゃないし(笑)そういやヒルまもの二人はもうこの時は子持ち(ヒルまも一家設定)です。お式には邪魔なのでまもパパママに預けてあります。この二人の結婚式は想像できてないのでまだ書いてないですね。楽しく書けました!
リクエストありがとうございましたー!!
昂様のみお持ち帰り可。
リクエスト内容(作品と合っているかどうか確認のために置きます)以下反転して下さい。
「未来セナ鈴。陸の結婚式に西部と泥門メンバーが出席。セナが陸にしみじみとおめでとうと言ったり、西部泥門皆で大いに騒いだ帰り、セナが鈴音にプロポーズ。こうやって皆で騒ぐのも好きだけど、鈴音と二人で毎日過ごせたらもっと好きだなみたいな、さりげないけど通じる言葉で。鈴音の返事の後、隠れてた陸含む西部泥門の一年生達がおめでとうと出てきて大騒ぎ。西部泥門の二年生達は店でうまくいったかな、今頃一年生達が騒いでるだろと話している」 キャラが偏っていてすみません(苦笑)ちなみに最初のヤジは牛島と仁科です。
「陸、おめでとう」
「サンキュ、セナ」
かなり酒を飲まされて赤い顔をしながらも、陸は嬉しげに笑う。
隣ではその妻となった女性が同じように顔を赤らめてぺこりと頭を下げた。
まさかこんなに早く結婚するなんて、とか先輩を差し置いて、というやっかみ半分祝福半分の声はあちらこちらから響いている。
「どれくらい付き合ってたんだっけ?」
「実質二年かな」
「そんなに短かったっけ?」
「その前から四人で旅行に行ったりしてたから長く感じるんじゃないか?」
「そっか」
この新郎新婦二人とは鈴音も含め、四人で行動することが多かった。
セナと陸は共にアメフト選手として活躍していたため、たまのオフに顔を合わせやすかった。
しみじみした気分になったが、セナは次の人に場所を譲った。
何しろ相手は今日の主役だ、あまり長いこと側には居られない。
席に戻ると皆大分酒が回っているようだった。
平然としているのはヒル魔くらいで、後はみなほどよくへべれけている。
悪魔は酒にも強いのか、といううめきにもフンと鼻で笑うだけだ。
隣でまもりは早々にギブアップし、今はオレンジジュースを飲んでいる。
「こういう風に見ると、みんなお酒にはあんまり強くないんだね」
「そうみたいだね」
「オラァア! セナ、飲んでるかぁ?!」
「ハ、一人で逃げるなよ」
がっしと両脇から伸びてきたのは黒木・戸叶の二人の腕で。
あの頃よりはずっと強くなったとはいえ、セナの腕っ節はこの二人には敵わない。
「さあ、飲め!」
「ひぃいい」
十文字に酒を注がれ、セナは嫌な汗を掻きながらグラスに口を付ける。
ちらりと視線を向けた先では、陸も同じような状況で酒を飲まされ続けていた。
ほぼ野放し状態だった披露宴は堅苦しさもなく終了し、皆ほろ酔い加減で家路に就く。
セナと鈴音は駅に向かって歩いていた。裏通りのせいか、周囲にはあまり人影がない。
「花嫁さん、綺麗だったね~!」
少々のアルコールと雰囲気に酔った鈴音ははしゃぎながら歩いている。
「陸っくんとかきっどんとか、西部の特定の人とは飲んだことあったじゃない? でもその他の人たちとこんなに話せて、すっごく楽しかった!」
「うん、楽しかったね」
まるでボールのようにぴょんぴょん跳ねてどこかへ行ってしまいそうな鈴音の手をセナが取る。
「またこんな機会があったらいいね!」
「そうだね」
誰とでもうち解ける鈴音はこういった集まりが非常に好きで、その輪の中心にいる姿はとても似合っている。
「鈴音」
「んー?」
変わらず跳ねるような足取りの鈴音に、セナは静かに口を開いた。
「こうやってみんなで騒ぐのもいいけど」
「けど?」
「あの二人みたいに、僕たちも二人で毎日過ごせたらいいなって思ったよ」
「―――――ッ!!」
鈴音の足がぴた、と止まった。
ただでさえ丸く大きな目が見開かれて、このままじゃ落ちてしまいそうだ、とセナはそんな心配をしてしまう。
「それって・・・」
「陸には先越されちゃったし、勢いって思われるのも嫌なんだけど・・・できればこの先もずっと一緒がいいな」
苦笑しながらもセナは真っ直ぐに鈴音の目を見る。
以前は同じくらいの高さにあった視線は、大分低くなった。
それが遠くなったようで嫌だと以前鈴音には言われたけれど、セナにとっては嬉しい距離の変化だった。
背が伸びた分だけ、鈴音を守れるような気がして。
今はセナの手にある小さな柔らかい彼女のそれを、照れることなく掴めるようになって。
もちろん今、返事待ちのセナが緊張しているのはきっと鈴音にはばれている。手は繋いだままだし。
鈴音はほんの少し黙って、それからこれ以上ない程に嬉しそうな顔をしてセナに抱きついた。
いつかは受け止めることも出来なかった身体を、揺らぐことなく抱き留めて。
「・・・嬉しい」
くぐもった小さい声がセナの胸元から聞こえる。
セナもその身体を抱きしめることで答えた。
と。
そんな甘い空気を一蹴する騒々しい一団に二人はあっという間に取り囲まれた。
「ハァアアア! おっめでとー!!!」
「ハァ、大丈夫だと思ってても見てて怖ェな!」
「フゴ!!」
「チクショー! セナの裏切り者―!!」
「アハーハー! マイシスターをよろしく、マイブラザー!」
「ハ、瀧の弟になんのか、セナ」
「そう聞くと祝っていいのか微妙だな・・・とにかくおめでとうさん!」
一部祝ってないような台詞だが、見れば黒木・戸叶・十文字に小結、モン太、瀧、そしてなぜだか新郎の陸までいる。
「って、ええ?! り、陸、奥さんほっぽり出して何やってんの?!」
「やー!? 陸っくん新婚早々それはまずいよちょっと!!」
「大丈夫だ、後から来るって」
「「呼んだのー?!」」
「オラオラこのままじゃ近所迷惑だ! さっさとどっか店に行くぞ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らがそのままの勢いで流れ、徹夜の飲み会開催が決定した頃。
「どうなったかねぇ、諸兄らの後輩」
こちらは居酒屋とはほど遠い喫茶店。
そこでコーヒーを傾けるキッドに、ヒル魔はぴんと片眉を上げただけで特に口に出さなかった。
「みんななら大丈夫よ。もう子供じゃないんだし」
「煩ェ糞嫁、テメェそんなもん喰いながら喋るな」
「そんなもんとは何よ! ケーキよ、ケーキ!!」
「あー糞甘臭ェ」
コースとしては結構な量の食事が出ていたはずなのに、まもりはそれら全てを平らげた上で今そのケーキだ。しかも二つ目。
あの状況を見た後ならヒル魔でなくてもげんなりしそうな光景ではある。
しかも天然発言は今も健在か、とキッドも苦笑する。
ちなみに隣では鉄馬もまもりと共にケーキを食べていたりする。
「セナくんは今日決めるつもりでいたんだろ」
「あー、だからセナくんテンション低かったんだ!」
「高いも低いもあんまり接点ないだろ、井芹」
「だって友達の結婚式って言ったらさあ、こう飲ませて飲ませて飲ませて洗いざらい吐かせるもんでしょ?」
波多と井芹の会話を横で聞きつつ、ムサシと雪光もセナのことを思い返す。
試合となると肝が据わるのか、一気に闘争心むき出しになるヤツだけれど、普段の生活は腰の低い彼。
けれどアメフトに携わるうちに彼も強く逞しくなった。
「・・・大分セナくんも成長しましたよねえ」
「そうだな。今日はヒィヒィ言ってたが」
「どうなったかな」
ここの面子は保護者の如く一つ年下の奴らの事ばかり考えている。
それを見て、ヒル魔はケ、と小さく吐き捨てるように言った。
「どうせ奴らはまた飲んで騒いでるんだろ」
心配なんてするだけ無駄だ、という台詞はもっともで。
後輩たち程ではないが、賑やかな喫茶店の一角にて。
ヒル魔夫婦の会話。
「次はセナと鈴音ちゃんか。御祝儀弾まないとね」
「なんだ、一応わかってんだな」
***
昂様リクエスト『未来セナ鈴』でした! つい先日先輩が結婚し、その席に招かれたので、ネタにしようとじっくり見てきましたがまるっきり生かせませんでした! だってリクエストがセナ鈴のお式じゃないし(笑)そういやヒルまもの二人はもうこの時は子持ち(ヒルまも一家設定)です。お式には邪魔なのでまもパパママに預けてあります。この二人の結婚式は想像できてないのでまだ書いてないですね。楽しく書けました!
リクエストありがとうございましたー!!
昂様のみお持ち帰り可。
リクエスト内容(作品と合っているかどうか確認のために置きます)以下反転して下さい。
「未来セナ鈴。陸の結婚式に西部と泥門メンバーが出席。セナが陸にしみじみとおめでとうと言ったり、西部泥門皆で大いに騒いだ帰り、セナが鈴音にプロポーズ。こうやって皆で騒ぐのも好きだけど、鈴音と二人で毎日過ごせたらもっと好きだなみたいな、さりげないけど通じる言葉で。鈴音の返事の後、隠れてた陸含む西部泥門の一年生達がおめでとうと出てきて大騒ぎ。西部泥門の二年生達は店でうまくいったかな、今頃一年生達が騒いでるだろと話している」 キャラが偏っていてすみません(苦笑)ちなみに最初のヤジは牛島と仁科です。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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