旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
運転席でハンドルを握り、蜃気楼が揺れる道の先を見つめる。
ひび割れたアスファルトをまっすぐ、まっすぐ。
他人が見たらバカだろうと一笑に付すだろう手段で、私たちは進んでいく。
後衛のみんなは道の先を悪魔と共に走り抜け、前衛のみんなは私たちとトラックと共に一歩ずつ進んでいく。
セナは荷台でみんなの給水係をしてくれているけど、日に日に疲れてきている。
やっぱり暑いからかしら。
私と一緒に運転席にいた方がいいんじゃないかしら。
そんな風に思っているけど、セナは僕だけ楽は出来ないよ、と笑っている。
やっぱり男の子だからかしら。私なら炎天下に荷台にいるだけでも辛いわ。
夜、なんだか眠れなくてぼんやりと窓の外を見ていたら、小さな声が聞こえた。
「糞チビ」
ここからは姿が見えないけど、この声に口調、ヒル魔くんだ。やだ、膝の腫れも酷いのに寝てないのかしら。
「やる。使え」
「え? ヒル魔さんの分は・・・」
セナの声。
「俺は貰った。テメェ今日の分貰い損なっただろ」
「あはは・・・」
私、何が渡し忘れたのかしら?
セナが困ってる・・・?
外に出ようとして、寄りかかっている鈴音ちゃんのことを思い出す。
下手に動くと起きてしまうかも知れない。鈴音ちゃんもなんだかんだで炎天下を後衛のみんなと進んでいるのだ。
せっかく眠っているのに、起こすのも可哀想だ。それにこちらも段々眠くなってきていて…。
明日になったら謝って、それで聞いてみよう。
「え? 昨日?」
「そう。何か渡し忘れたかと思って」
セナの目が泳ぐ。それが嘘を付こうとするときの顔だって、私はすぐ判った。
返事を待たずに口を開こうとしたら、横からにゅっと腕が伸びてきた。
「きゃあ!!」
「ね、姉ちゃん!」
「糞マネ、コーヒー淹れろ」
やっぱりヒル魔くんで、寝起きなんて感じさせない顔で私の髪をかき乱す。
「何するの、もう!」
「ケケケ、さっさとしろよ」
踵を返すヒル魔くんの後ろを、セナが追いかける。
「あ、ヒル魔さん、ちょっと聞きたいことが…」
私の質問に答える前に、セナは行ってしまった。
蜃気楼の見える道の先。
私は今日もハンドルを握り、運転席に座っている。
後衛のみんなは道の先を悪魔と共に走り抜け、前衛のみんなは私たちとトラックと共に一歩ずつ進んでいく。
セナは荷台でみんなの給水係をしてくれているけど、日に日に疲れてきている。
「蜃気楼が見えるくらいの寒暖の差があるんだから、荷台にいるだけで疲れるのも当然よね」
ヒル魔くんの膝を冷やしながら、そう言ってみる。
いつもこうやって夜、二人きりでヒル魔くんの膝を冷やしていても、会話はほとんどない。
大体、私が一人で話すだけ。ヒル魔くんも疲れて会話する元気がないんだろう。そう思ってたから、会話がないのも平気だった。
「どれが蜃気楼だか」
「え?」
「蜃は俺かもな」
「なに…?」
珍しく呟かれた言葉があまりに抽象的で、聞き返したけど返事はない。
立ち上がって荷台に向かう背中はこれ以上の言葉をくれそうにはなくて、私はただその背中を見送るしかなかった。
蜃(=大ハマグリ)が気を吐いて楼閣を描くと考えられた、というのが蜃気楼の言葉の語源だと知ったのは、それから随分と後のことだった。
***
お題はこちらからお借りしました。
BLUE TEARS[http://tearsb.aikotoba.jp/]
天候に纏わる5つのお題
語源は改めて辞書を引いて知りました。
やっぱりまだくっついてない二人の話。
ひび割れたアスファルトをまっすぐ、まっすぐ。
他人が見たらバカだろうと一笑に付すだろう手段で、私たちは進んでいく。
後衛のみんなは道の先を悪魔と共に走り抜け、前衛のみんなは私たちとトラックと共に一歩ずつ進んでいく。
セナは荷台でみんなの給水係をしてくれているけど、日に日に疲れてきている。
やっぱり暑いからかしら。
私と一緒に運転席にいた方がいいんじゃないかしら。
そんな風に思っているけど、セナは僕だけ楽は出来ないよ、と笑っている。
やっぱり男の子だからかしら。私なら炎天下に荷台にいるだけでも辛いわ。
夜、なんだか眠れなくてぼんやりと窓の外を見ていたら、小さな声が聞こえた。
「糞チビ」
ここからは姿が見えないけど、この声に口調、ヒル魔くんだ。やだ、膝の腫れも酷いのに寝てないのかしら。
「やる。使え」
「え? ヒル魔さんの分は・・・」
セナの声。
「俺は貰った。テメェ今日の分貰い損なっただろ」
「あはは・・・」
私、何が渡し忘れたのかしら?
セナが困ってる・・・?
外に出ようとして、寄りかかっている鈴音ちゃんのことを思い出す。
下手に動くと起きてしまうかも知れない。鈴音ちゃんもなんだかんだで炎天下を後衛のみんなと進んでいるのだ。
せっかく眠っているのに、起こすのも可哀想だ。それにこちらも段々眠くなってきていて…。
明日になったら謝って、それで聞いてみよう。
「え? 昨日?」
「そう。何か渡し忘れたかと思って」
セナの目が泳ぐ。それが嘘を付こうとするときの顔だって、私はすぐ判った。
返事を待たずに口を開こうとしたら、横からにゅっと腕が伸びてきた。
「きゃあ!!」
「ね、姉ちゃん!」
「糞マネ、コーヒー淹れろ」
やっぱりヒル魔くんで、寝起きなんて感じさせない顔で私の髪をかき乱す。
「何するの、もう!」
「ケケケ、さっさとしろよ」
踵を返すヒル魔くんの後ろを、セナが追いかける。
「あ、ヒル魔さん、ちょっと聞きたいことが…」
私の質問に答える前に、セナは行ってしまった。
蜃気楼の見える道の先。
私は今日もハンドルを握り、運転席に座っている。
後衛のみんなは道の先を悪魔と共に走り抜け、前衛のみんなは私たちとトラックと共に一歩ずつ進んでいく。
セナは荷台でみんなの給水係をしてくれているけど、日に日に疲れてきている。
「蜃気楼が見えるくらいの寒暖の差があるんだから、荷台にいるだけで疲れるのも当然よね」
ヒル魔くんの膝を冷やしながら、そう言ってみる。
いつもこうやって夜、二人きりでヒル魔くんの膝を冷やしていても、会話はほとんどない。
大体、私が一人で話すだけ。ヒル魔くんも疲れて会話する元気がないんだろう。そう思ってたから、会話がないのも平気だった。
「どれが蜃気楼だか」
「え?」
「蜃は俺かもな」
「なに…?」
珍しく呟かれた言葉があまりに抽象的で、聞き返したけど返事はない。
立ち上がって荷台に向かう背中はこれ以上の言葉をくれそうにはなくて、私はただその背中を見送るしかなかった。
蜃(=大ハマグリ)が気を吐いて楼閣を描くと考えられた、というのが蜃気楼の言葉の語源だと知ったのは、それから随分と後のことだった。
***
お題はこちらからお借りしました。
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天候に纏わる5つのお題
語源は改めて辞書を引いて知りました。
やっぱりまだくっついてない二人の話。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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