旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
それは寒い寒い日のことだった。
一人の少女が目を覚ました。
「・・・おとう、さん?」
身を寄せていた樹木のうろから顔を出す。
しんしんと降り続く雪はまだ止みそうにない。
「おかあさん?」
年の頃は10にも満たない少女は、のろのろとうろからはい出す。
「セナ?」
身を覆う上着にあっという間に雪が降り積もる。
「さむい・・・」
呟きながら、ゆっくりと雪の中を少女は歩いていく。
周囲の木々は高く、歩いても歩いても様相はちっとも変わらない。
どうやら森の中らしい、としか少女には判らなかった。
目的地もないまま、少女は足を進めた。その時、白一色だった視界に黒いものが見えた。
「・・・?」
上を見上げる。と、そこにはとても背の高い男がいた。着ている物は真っ黒で、少女からは真っ黒な足しか見えない。
先ほどの黒はこれだったのだ、と少女は納得する。
「ガキ、どこから来た」
「・・・・・・知らない。気が付いたら、ここにいた」
背が高くて、見上げても全然顔が見えない。と、男がしゃがんだ。
「なんだ、面白い色の目ェしてやがんな」
その男はとても人らしくなかった。
髪の毛は金色に輝いていたし、逆立っていた。
双眸は鋭く、口も耳まで裂けている。
少女はその姿を見ても悲鳴を上げることもなく、まじまじと見つめて恐る恐る口を開く。
「もしかして、あなたは、おきつねさま?」
「んぁ?」
「このお山にはおきつねさまがいるっておかあさんが言ってた」
「ほう」
「困ったことが起きたらおきつねさまが助けてくれるって言ってた」
「・・・ほーう」
「おきつねさまなの?」
男は視線を合わせたまま、何事か思案しているようだった。
「・・・だとしたら、どうする?」
「お願いがあるの」
男はにやりと笑った。
きっとこの子供は家に帰りたいと言うだろう。
この秋は記録的な凶作だった。近隣の村の人々は自分たちの食う分にも事欠いているのに、年貢は変わらず取り立てられて生活は極貧だ。
口減らしのために親が子供を殺すのはよくある話だ。自分たちの手で殺せなかったときには山に捨てる。運が良ければ生き残るが、凶作だったのは山も同じことで、ほぼ全ての子供たちは餓えた獣のエサと成り果てる。
そんな中でこの子供が戻ってもきっと親は喜ばず、今度こそその手で子供を殺すだろう。
「聞いてやろうか」
「本当? じゃあね」
そんな茶番を目の前で見てやろうか―――そう思った彼の思惑は次の言葉で外れた。
「村のみんなにね、沢山食べ物をあげてください」
「・・・は?」
「みんな食べるものがないの。お父さんもお母さんもセナも、みんなおなかがすいてるの。冬が終わるまでの分でいいから、お願いします」
「その見返りは?」
「みかえり?」
「あー、その願いを叶えるならそれなりのものを寄こせっつーんだ」
「・・・・・・この服、とか」
「そんなガキの服もらってもなあ」
「うー・・・・・・」
でも他にあげられるようなものがないよ、と少女は困ったように言う。興味をそそられて、男は更に続けた。
「なら、お前を喰わせて貰おうか」
「わたしを食べるの?」
「おー。喰わせてくれたら村に食い物をやろう」
少女は聡い子のようだった。女なら花街に売る方がいい。金になるし、殺さなくて済む。それなのにこの場にいるというのは、おそらく殺すには惜しい才のある子だったのだろう。だが親も貧困に耐えかねて、運が良ければ生き残るか伝説の狐に出会うかするだろうと一縷の望みを託して山へ捨てたのだろう。
「・・・みんなを、助けたいの」
「お前は死んでもいいのか」
わざと冷たく言いはなっても、少女の目は揺らがなかった。
少女は美しかった。あと10年も育てば、絶世の美女になるだろう。
「いいわ」
言葉に迷いはない。でもほんの少し怖くて、少女は瞳を閉じた。
「よし、名前くらいは聞いておこう」
「私の名前は、まもり」
その次の瞬間、強い風が二人を襲った。
目を開くと、そこに雪はなかった。
空気は穏やかで、春のよう。
目の前には立派な建物。隣には大きな木がある。見れば桜のようで、はらはらと花びらが散っていた。
「・・・ここ、は?」
「ここは俺の屋敷だ、ガキ」
先ほどの男の顔が隣にある。
驚いて身体を離そうとするが、いわゆる抱っこの状態であったため、がっちりと身体を拘束されて動けなかった。
「ここも、さっきのお山なの?」
「いーや」
屋敷に入ると、恐ろしい顔をした犬が出迎えた。顔は怖いが、大人しい。
まもりは男の腕に収まったまま、室内へと運ばれる。
まさかちゃんと料理されて食べられるとは思わなかった。そのまま丸かじりされると思ってたのに。
今更ながら食べられてもいいと言ってしまったことに後悔する。
恐怖に目を開けていられなくなって、まもりはぎゅっと目を閉じる。
「・・・おい、ガキ。目ぇあけろ」
わしゃわしゃっと髪の毛を混ぜられて、まもりは驚いて目を開く。
にやにやと笑う男がすいと指で指し示したのは。
「みずがめ?」
「見てみろ」
水面は鏡のようになめらかで、まもりが顔を近づけても波紋が立たない。
と、その水面が不意に映像を映し出した。
「お父さん、お母さん・・・セナ!」
見えたのは家族の姿、そして何より大事な弟の姿。
「お前の望み通りだ」
家の前には大量の穀物や野菜が積み上げられている。その前で両親は手を取り合って喜んでいたが、セナは誰かを捜すようにきょろきょろしている。
「セナ・・・」
「セナ、っつーのはあのチビか」
「そう。私の弟なの。カワイイのよ」
「ほー」
ふいに水面が波立ち、映像が途切れる。まもりの涙が、水面を揺らしたのだ。
「・・・・・・ありがとう、おきつねさま。これでみんな助かるね」
床にそっと下ろされて、まもりは手をぎゅっと握りしめて俯いた。
怖いけれど、約束は守らなきゃいけない。
おきつねさまはみんなを助けてくれた。
なら、私も食べられなきゃ。
じっとその時を待つまもりを見つめる男は、ふうっとため息をつくとぽんとその頭に手を置いた。
「ひゃ!」
「あいにくと俺は、人を食べる趣味はないんでな。その代わり小間使いとしてしばらく働いて貰おうか」
「たべないの? お腹、すかないの?」
驚くまもりに、男はにやにやと笑った。
「俺の主食は霞なんで、空腹とは無縁だな」
「かすみ・・・?」
霞を食べ、不思議な術を使う存在。まもりも知っているが、あまりに目の前の男とは結びつかない。
「それじゃまるで…仙人様じゃない」
仙人様と言えば、長いおひげに杖を突いた、優しそうなおじいさん。
そんな風に教えられたけれど。
「それ以外になった覚えはねぇな」
「え?」
「ついでに言えば俺は狐じゃねぇ」
「ええ?」
至極楽しそうに、男は名乗った。
「俺の名前はヒル魔。お前ら人間の言うところの仙人だ」
「・・・・・・えぇええええぇええ?!」
まもりは遠慮なしに悲鳴を上げる。その声にヒル魔は片耳を塞いだ。
「煩ぇな! そんなでけぇ声出さなくても聞こえるんだよ!」
「だ、だって、さっき私を食べるって・・・」
「そりゃー試しただけだ」
けろりと言われて、まもりはぱちぱちと何度か瞬きをして…。
「ふ、ふぇ・・・・・・ええ・・・」
「げ」
「う・・・わぁぁぁああああああん!!!」
「だーっ!! 煩ぇえ!!」
「こわかっ・・・・・・怖かった・・・・・・ぁあ!! うわぁあああ!!」
堰を切ったようにまもりは号泣する。先ほどまでとても子供とは思えないほどにしゃんとしていたのに、緊張の糸が切れた途端にこれだ。
だが、やっと見られた年相応の反応。
ヒル魔が顰めっ面をしつつもそっとまもりを抱き上げる。
先ほどのように抱っこすると、まもりはしゃくり上げながらヒル魔に抱きついた。
「ご・・・っ、ごめ・・・・・・っ、なさっ・・・」
泣くことがヒル魔の機嫌を損ねるのだとちゃんと理解しているらしいまもりをあやすようにぽんぽんと背中を叩く。
暫くすると、やっとまもりも落ち着いたらしく、泣きやんだ。
「ケケケ、おもしれー顔してるぜ」
「そ、そんなことないもん!」
濡れた頬を指先で拭い、ヒル魔はまもりを抱きかかえたまま庭へと降りる。
「ここは、どこなの?」
「ここは天空の楼閣。お前たちの世界とはちょっと違うところにある」
「そう・・・なんだ・・・」
切り立った崖の上にある平地、そこに建つ楼閣。周囲は雲の海に囲まれ、下を見ることは叶わない。
空は薄く霞がかった青。桜が無数に植わっており、はらはらと花びらを散らし続けている。
天国があるとするなら、きっとこんなところなのだろう。
地面へ下ろされ、まもりは周囲を飽きることなく歩き回った。
暫くすると、ヒル魔が声を掛けてきた。
「さて、ガキ」
「まもりです、仙人様」
見上げると、不機嫌そうにヒル魔は顔を歪めた。
「ケッ、そんな呼び方却下だ。普通に話せ」
「じゃあ私もまもりって呼んで下さい、ヒル魔さま」
適応の早いまもりに、ヒル魔はにやりと笑ってみせる。
「まもり、俺は使える奴は嫌いじゃねぇ」
来い、とまもりを連れて行った先には恐ろしいくらい汚れた部屋。
「お前の仕事はさしあたってこの部屋の掃除だ。じゃねぇと、今夜の寝床はねぇぞ」
「はい!」
そうして、破天荒な仙人と青い目の小間使いの物語がここから始まったのでした。
***
元ネタの少女漫画があるんですが、判った人は素敵です。
本当はヒル魔を妖怪にするつもりだったのに、書いてたらいつの間にか仙人に・・・。
一人の少女が目を覚ました。
「・・・おとう、さん?」
身を寄せていた樹木のうろから顔を出す。
しんしんと降り続く雪はまだ止みそうにない。
「おかあさん?」
年の頃は10にも満たない少女は、のろのろとうろからはい出す。
「セナ?」
身を覆う上着にあっという間に雪が降り積もる。
「さむい・・・」
呟きながら、ゆっくりと雪の中を少女は歩いていく。
周囲の木々は高く、歩いても歩いても様相はちっとも変わらない。
どうやら森の中らしい、としか少女には判らなかった。
目的地もないまま、少女は足を進めた。その時、白一色だった視界に黒いものが見えた。
「・・・?」
上を見上げる。と、そこにはとても背の高い男がいた。着ている物は真っ黒で、少女からは真っ黒な足しか見えない。
先ほどの黒はこれだったのだ、と少女は納得する。
「ガキ、どこから来た」
「・・・・・・知らない。気が付いたら、ここにいた」
背が高くて、見上げても全然顔が見えない。と、男がしゃがんだ。
「なんだ、面白い色の目ェしてやがんな」
その男はとても人らしくなかった。
髪の毛は金色に輝いていたし、逆立っていた。
双眸は鋭く、口も耳まで裂けている。
少女はその姿を見ても悲鳴を上げることもなく、まじまじと見つめて恐る恐る口を開く。
「もしかして、あなたは、おきつねさま?」
「んぁ?」
「このお山にはおきつねさまがいるっておかあさんが言ってた」
「ほう」
「困ったことが起きたらおきつねさまが助けてくれるって言ってた」
「・・・ほーう」
「おきつねさまなの?」
男は視線を合わせたまま、何事か思案しているようだった。
「・・・だとしたら、どうする?」
「お願いがあるの」
男はにやりと笑った。
きっとこの子供は家に帰りたいと言うだろう。
この秋は記録的な凶作だった。近隣の村の人々は自分たちの食う分にも事欠いているのに、年貢は変わらず取り立てられて生活は極貧だ。
口減らしのために親が子供を殺すのはよくある話だ。自分たちの手で殺せなかったときには山に捨てる。運が良ければ生き残るが、凶作だったのは山も同じことで、ほぼ全ての子供たちは餓えた獣のエサと成り果てる。
そんな中でこの子供が戻ってもきっと親は喜ばず、今度こそその手で子供を殺すだろう。
「聞いてやろうか」
「本当? じゃあね」
そんな茶番を目の前で見てやろうか―――そう思った彼の思惑は次の言葉で外れた。
「村のみんなにね、沢山食べ物をあげてください」
「・・・は?」
「みんな食べるものがないの。お父さんもお母さんもセナも、みんなおなかがすいてるの。冬が終わるまでの分でいいから、お願いします」
「その見返りは?」
「みかえり?」
「あー、その願いを叶えるならそれなりのものを寄こせっつーんだ」
「・・・・・・この服、とか」
「そんなガキの服もらってもなあ」
「うー・・・・・・」
でも他にあげられるようなものがないよ、と少女は困ったように言う。興味をそそられて、男は更に続けた。
「なら、お前を喰わせて貰おうか」
「わたしを食べるの?」
「おー。喰わせてくれたら村に食い物をやろう」
少女は聡い子のようだった。女なら花街に売る方がいい。金になるし、殺さなくて済む。それなのにこの場にいるというのは、おそらく殺すには惜しい才のある子だったのだろう。だが親も貧困に耐えかねて、運が良ければ生き残るか伝説の狐に出会うかするだろうと一縷の望みを託して山へ捨てたのだろう。
「・・・みんなを、助けたいの」
「お前は死んでもいいのか」
わざと冷たく言いはなっても、少女の目は揺らがなかった。
少女は美しかった。あと10年も育てば、絶世の美女になるだろう。
「いいわ」
言葉に迷いはない。でもほんの少し怖くて、少女は瞳を閉じた。
「よし、名前くらいは聞いておこう」
「私の名前は、まもり」
その次の瞬間、強い風が二人を襲った。
目を開くと、そこに雪はなかった。
空気は穏やかで、春のよう。
目の前には立派な建物。隣には大きな木がある。見れば桜のようで、はらはらと花びらが散っていた。
「・・・ここ、は?」
「ここは俺の屋敷だ、ガキ」
先ほどの男の顔が隣にある。
驚いて身体を離そうとするが、いわゆる抱っこの状態であったため、がっちりと身体を拘束されて動けなかった。
「ここも、さっきのお山なの?」
「いーや」
屋敷に入ると、恐ろしい顔をした犬が出迎えた。顔は怖いが、大人しい。
まもりは男の腕に収まったまま、室内へと運ばれる。
まさかちゃんと料理されて食べられるとは思わなかった。そのまま丸かじりされると思ってたのに。
今更ながら食べられてもいいと言ってしまったことに後悔する。
恐怖に目を開けていられなくなって、まもりはぎゅっと目を閉じる。
「・・・おい、ガキ。目ぇあけろ」
わしゃわしゃっと髪の毛を混ぜられて、まもりは驚いて目を開く。
にやにやと笑う男がすいと指で指し示したのは。
「みずがめ?」
「見てみろ」
水面は鏡のようになめらかで、まもりが顔を近づけても波紋が立たない。
と、その水面が不意に映像を映し出した。
「お父さん、お母さん・・・セナ!」
見えたのは家族の姿、そして何より大事な弟の姿。
「お前の望み通りだ」
家の前には大量の穀物や野菜が積み上げられている。その前で両親は手を取り合って喜んでいたが、セナは誰かを捜すようにきょろきょろしている。
「セナ・・・」
「セナ、っつーのはあのチビか」
「そう。私の弟なの。カワイイのよ」
「ほー」
ふいに水面が波立ち、映像が途切れる。まもりの涙が、水面を揺らしたのだ。
「・・・・・・ありがとう、おきつねさま。これでみんな助かるね」
床にそっと下ろされて、まもりは手をぎゅっと握りしめて俯いた。
怖いけれど、約束は守らなきゃいけない。
おきつねさまはみんなを助けてくれた。
なら、私も食べられなきゃ。
じっとその時を待つまもりを見つめる男は、ふうっとため息をつくとぽんとその頭に手を置いた。
「ひゃ!」
「あいにくと俺は、人を食べる趣味はないんでな。その代わり小間使いとしてしばらく働いて貰おうか」
「たべないの? お腹、すかないの?」
驚くまもりに、男はにやにやと笑った。
「俺の主食は霞なんで、空腹とは無縁だな」
「かすみ・・・?」
霞を食べ、不思議な術を使う存在。まもりも知っているが、あまりに目の前の男とは結びつかない。
「それじゃまるで…仙人様じゃない」
仙人様と言えば、長いおひげに杖を突いた、優しそうなおじいさん。
そんな風に教えられたけれど。
「それ以外になった覚えはねぇな」
「え?」
「ついでに言えば俺は狐じゃねぇ」
「ええ?」
至極楽しそうに、男は名乗った。
「俺の名前はヒル魔。お前ら人間の言うところの仙人だ」
「・・・・・・えぇええええぇええ?!」
まもりは遠慮なしに悲鳴を上げる。その声にヒル魔は片耳を塞いだ。
「煩ぇな! そんなでけぇ声出さなくても聞こえるんだよ!」
「だ、だって、さっき私を食べるって・・・」
「そりゃー試しただけだ」
けろりと言われて、まもりはぱちぱちと何度か瞬きをして…。
「ふ、ふぇ・・・・・・ええ・・・」
「げ」
「う・・・わぁぁぁああああああん!!!」
「だーっ!! 煩ぇえ!!」
「こわかっ・・・・・・怖かった・・・・・・ぁあ!! うわぁあああ!!」
堰を切ったようにまもりは号泣する。先ほどまでとても子供とは思えないほどにしゃんとしていたのに、緊張の糸が切れた途端にこれだ。
だが、やっと見られた年相応の反応。
ヒル魔が顰めっ面をしつつもそっとまもりを抱き上げる。
先ほどのように抱っこすると、まもりはしゃくり上げながらヒル魔に抱きついた。
「ご・・・っ、ごめ・・・・・・っ、なさっ・・・」
泣くことがヒル魔の機嫌を損ねるのだとちゃんと理解しているらしいまもりをあやすようにぽんぽんと背中を叩く。
暫くすると、やっとまもりも落ち着いたらしく、泣きやんだ。
「ケケケ、おもしれー顔してるぜ」
「そ、そんなことないもん!」
濡れた頬を指先で拭い、ヒル魔はまもりを抱きかかえたまま庭へと降りる。
「ここは、どこなの?」
「ここは天空の楼閣。お前たちの世界とはちょっと違うところにある」
「そう・・・なんだ・・・」
切り立った崖の上にある平地、そこに建つ楼閣。周囲は雲の海に囲まれ、下を見ることは叶わない。
空は薄く霞がかった青。桜が無数に植わっており、はらはらと花びらを散らし続けている。
天国があるとするなら、きっとこんなところなのだろう。
地面へ下ろされ、まもりは周囲を飽きることなく歩き回った。
暫くすると、ヒル魔が声を掛けてきた。
「さて、ガキ」
「まもりです、仙人様」
見上げると、不機嫌そうにヒル魔は顔を歪めた。
「ケッ、そんな呼び方却下だ。普通に話せ」
「じゃあ私もまもりって呼んで下さい、ヒル魔さま」
適応の早いまもりに、ヒル魔はにやりと笑ってみせる。
「まもり、俺は使える奴は嫌いじゃねぇ」
来い、とまもりを連れて行った先には恐ろしいくらい汚れた部屋。
「お前の仕事はさしあたってこの部屋の掃除だ。じゃねぇと、今夜の寝床はねぇぞ」
「はい!」
そうして、破天荒な仙人と青い目の小間使いの物語がここから始まったのでした。
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本当はヒル魔を妖怪にするつもりだったのに、書いてたらいつの間にか仙人に・・・。
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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